公務員の定年は?定年延長と延長後の制度についてわかりやすく解説

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国家公務員法と地方公務員法の改正により、2023年4月から公務員の定年が段階的に引き上げられることになりました。現在の60歳から2年ごとに1歳ずつ定年を引き上げ、31年度以降は65歳定年制となります。この記事では、定年延長の背景、延長後に導入される制度、退職金など公務員の定年について解説します。

  • 【この記事を読んでわかること】
  • 国家公務員の定年は国家公務員法により現在原則60歳。ただし、2023年度以降2031年度までの間で、国家公務員の定年は段階的に65歳まで引き上げられることが決まっている。
  • 定年の引上げにともない、国家公務員には「役職定年」「定年前再任用短時間勤務制」が導入される
  • 現状の定年後の措置である「再任用制度」が暫定措置として移行期間中も運用される
  • 60歳以降の国家公務員の給与水準は、原則として60歳に達した時点の7割となる
  • 地方公務員にも国家公務員と同様の措置(定年の引き上げ、役職定年、定年前再任用短時間勤務制、60歳を超える場合の給与水準等)が導入される事が決まっている。

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公務員の定年制度

公務員の定年は?定年延長と延長後の制度についてわかりやすく解説

国家公務員法と地方公務員法の改正により、2023年4月から国家・地方公務員の定年が、現在の60歳から段階的に引き上げられることになりました。

2年ごとに1歳ずつ定年を引き上げ、2023年度と24年度は60歳定年を61歳定年に、25年度から26年度は62歳に、というように段階的に延長。31年度以降は原則として65歳定年制となります。

本記事では最初に、先に法整備が進んだ国家公務員について説明し、次に原則として国家公務員に準ずる方針となった地方公務員について説明します。

国家公務員の定年制度

公務員の定年は?定年延長と延長後の制度についてわかりやすく解説

2022年現在、国家公務員の定年は原則60歳として、国家公務員法(第81条2)および人事院規則(11-8)に定められています。

特別に定めのない限り、具体的には「60歳に達した日以後における最初の3月31日」が定年退職日です。また、一部例外として別の定年年齢が定められている職もあります。

公務員の定年は段階的に65歳まで引き上げに

2021(令和3)年6月、人事院が国会・内閣に対して行った意見の申出に基づいて「国家公務員法等の一部を改正する法律」が成立しました。

この法改正により、2023(令和5)年4月1日以降、国家公務員の定年が段階的に65歳まで(※)延長されることが決まりました。

※ただし、職務と責任の特殊性や後任の配置に困難を要する医師などは、66〜70歳のあいだで人事院規則により別途定年を定めることになっています。

参考:国家公務員法等の一部を改正する法律の概要(令和3年法律第61号)|内閣府

公務員の定年段階的引き上げ 簡易早見表

段階的引き上げは下記のように、2年に一度、1歳のペースで進みます。 令和5年度に最初の引き上げがあるため、1963年4月2日以降が誕生日となる方から影響を受けます。

定年年齢
(以下の年齢に達した日以後にける最初の3月 31日が退職日
〜令和4年度
(2022年度まで)
60歳
令和5・6年度
(2023・24年度)
61歳
令和7・8年度
(2025・26年度)
62歳
令和9・10年度
(2027・28年度)
63歳
令和11・12年度
(2029・30年度)
64歳
令和13年度〜(2031年度以降)65歳

▼『定年延長』について詳しく知りたい方はこちら

国家公務員の定年後の措置について

定年退職する国家公務員を定年退職日以降も勤務させる制度には「再任用制度」と「勤務延長制度」があります。

再任用制度

2013(平成25)年の法改正による公的年金の受給開始年齢引き上げに対応して、2014(平成26)年から導入された制度。

定年退職後、年金が満額支給されるまでの空白期間を埋める目的で設置された制度で「義務的再任用」とも表現されます。

定年の引き上げ完了後は本再任用制度は廃止となりますが、2030年度までは経過措置として現行制度を継続運用します。

<現行の再任用制度の概要>
対象者・定年退職および勤務延長後に退職した者
・定年退職以前に退職し、一定の条件を満たす者
任期任期:1年を超えない範囲で定める
更新:勤務実績を考慮し、一年を超えない範囲内で更新可
年齢の上限:65歳に達する日以後の最初の3月31日
勤務時間・休暇勤務時間:フルタイムまたは短時間勤務
休暇:定年前と同様
ただし、短時間勤務の年次休暇は勤務形態に応じて付与
給与月額給与:俸給表の職務の級に応じ固定額・昇給なし
手当:退職前と比べ手当によっては対象外となるものあり
人事評価:定年退職前の職員と同等とされ、人事評価の対象

参考:再任用を希望される皆様へ|内閣官房内閣人事局

勤務延長制度

勤務延長制度は、2031年度以降の定年引き上げ完了後もそのまま存続する制度です。

定年退職する職員について、その職務の特殊性または特別の事情によって公務に著しい支障が生じる場合、当該職員を定年退職の特例として一定期間引き続き勤務させることができます(国家公務員法第81条の3、人事院規則11-8)。

参考:政策 > 政策一覧 > 職員の給与・生涯設計 >職員の生涯設計>第1章 定年後を考える|人事院

国家公務員の定年引き上げの背景

国家公務員の定年引き上げは、2018(平成30)年8月の「人事院の意見の申し出」にその背景が説明されています。

遡れば、2008年の国家公務員制度改革基本法において「定年の65歳までの段階的引き上げを政府において検討する」旨が規定され、それ以降順次検討が進められてきた歴史があります。

人事院は、定年引き上げの背景・必要性を下記の4つに整理しています。

  • 少子高齢化の進展、若年労働力人口の減少に対応するため、高齢者の活用が急務。民間企業においては、再雇用高年齢者はフルタイム雇用が大多数である。
  • 現状の公務員義務的再雇用制度において、実務職の再雇用率は7割。そのうち8割が短時間勤務であり、既存制度では公務能率の低下・将来への不安から職員のモチベーションの低下が懸念される。
  • 質の高い行政サービスの維持には、60歳以上の職員の本格的活用が必要。定年引き上げにより、職員の年金受給までの不安の解消にもつながる。
  • 定年年齢の段階的引き上げとともに、それ以前からのフルタイム再任用拡大が急務。

参考:定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申し出|人事院

国家公務員の定年延長に伴う措置

公務員の定年は?定年延長と延長後の制度についてわかりやすく解説

国家公務員の定年引き上げに伴っては、以下の措置が導入されます。

国家公務員 役職定年制度の導入

組織の活力維持を目的に「役職定年制(管理監督職勤務上限年齢制)」が導入されることになります。

これは、管理監督職(指定職及び俸給の特別調整額適用官職等)の職員について、60歳になってから同年度中に、管理監督職から降ろす制度です(ただし、公務運営に著しい支障が生ずる場合の例外あり)。

国家公務員 定年前再任用短時間勤務制の導入

高齢期の多様な職業生活設計の支援を目的として「定年前再任用短時間勤務制」が導入されます。

これは、定年前であっても60歳以降に退職した職員を、本人の希望により、短時間勤務の官職に採用できる制度です。現行の再任用制度(任期1年以内、更新制)とは異なり、定年退職日相当日までのあいだの再任用制度となります。

定年前再任用は、希望者について次の①・②に基づいて選考し、実施されます。

① 能力評価及び業績評価、勤務実績
② 再任用後の職務遂行に必要とされる経験または資格の有無、そのほか必要な事項

国家公務員 定年延長後の給与水準は7割

定年延長後、60歳に達した国家公務員の給与は、当分のあいだ下記扱いとなります。

給与変更時期職員が60歳に達した日後の最初の4月1日以後
基準となる額その職員に適用される俸給表の職務の級及び号俸に応じた額※
支給額基準となる額に7割を乗じて得た額

※役職定年により、降任、降給を伴う異動をした職員の場合は、異動前の俸給月額

国家公務員 定年延長による退職金への影響

定年延長後、60歳以降で定年前に退職した場合の措置

定年延長後、60歳に達した国家公務員で、延長された定年以前に退職した職員の退職金は、当分のあいだ「定年」を理由とする退職と同様に退職手当が算定されます。

これは、定年延長により、退職金受給に関して個人が不利を被ることがないように配慮されたためです。

定年延長による退職金受給額への影響

定年が延長になったこと、60歳以降の給与水準が引き下げられることによる、公務員の退職金受給額への影響は下記のとおりです。

退職金受給タイミング延長後の定年退職時に支給される
退職金の計算基礎となる
給与額について
役職定年後および60歳到達以降に給与水準が7割になった後の退職金の計算については、「ピーク時特例」が適用され、ベースダウン後と前に分けて算出される

参考:国家公務員の60歳以降の働き方について〜情報提供・意思確認制度に基づく情報提供パンフレット〜|人事院

国家公務員 年金受給開始までの選択肢

公務員などの年金制度は1〜3階の階層構造になっており、2015(平成27)年の被雇用者年金制度の一元化(※)以降、下記のようになっています。

※民間被雇用者が加入していた厚生年金と公務員・私学教員などが加入していた共済年金が、厚生年金に統一された法改正

公的年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)の受給開始時期の引き上げに対し、これまでは希望する者について65歳までの義務的再任用を行って対応してきました。

国家公務員の定年引き上げを定めた「国家公務員法等の一部を改正する法律」(2023年4月施行)によって、上記の「義務的再任用」のほかに、①定年年齢の引き上げ ②定年前再任用短時間勤務制 の選択肢が加わったことになります。

参考:3 退職等年金給付制度|人事院

地方公務員の定年については国家公務員に準ずる

公務員の定年は?定年延長と延長後の制度についてわかりやすく解説

地方公務員の定年延長は、国家公務員と同様の措置(定年の引き上げ、役職定年、定年前再任用短時間勤務制、60歳を超える場合の給与水準等)が決定されており、条例案なども総務省から展開済みです。

詳細は各自治体の条例改正を参照してください。

また、総務省から各自治体へは「2022年度中に翌年度60歳に達する職員に対し、定年延長についての情報提供と本人意思確認を行う」よう通知が出されています。

職員の方は、自治体からの案内に注意を払い、ご自身の定年および定年後のプランを検討されてください。

参考:地方公務員法の一部を改正する法律(令和3年法律第63号)の概要|総務省
総務省トップ > 政策 > 地方行財政 > 地方公務員制度等 > 高齢対策
地方公務員の定年引上げに向けた留意事項について(通知)|総務省
「地方公務員の雇用と年金の接続について(総務副大臣通知)」(平成25年3月29日)

まとめ

国家公務員の定年は2023年度以降2031年度までのあいだで、段階的に65歳まで引き上げられることが決まっています。定年の延長にともない、国家公務員には「役職定年制度」・「定年前再任用短時間勤務制度」など、組織の硬直化を避けつつ、多様な働き方ができるよう制度が導入されます。公的年金の支給開始年齢引き上げへの対応、および高年齢者の雇用確保義務が公務員の人事制度に法的に反映されたものとも考えられます。社会全体として高年齢者活用促進の動きは今後もますます高まるでしょう。

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執筆者
阿部雅子
人事/キャリアコンサルタント
人事担当として約12年強、採用から人事管理、退職までをサポート。業界はIT系スタートアップ/ブライダル/政府系研究機関等。国家資格キャリアコンサルタント。中小企業での各種雇用調整助成金の受給やコンプライアンスのための規程整備等の経験が豊富。