嘱託社員と正社員・パートの違い|働き方で変化する給与や勤務条件
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定年が近づくにつれて、今後の働き方について考え始める人は多いのではないでしょうか。 今まで正社員で働いてきた人であれば、働き方が変化することで給与や勤務条件が変更になる点は不安要素です。 嘱託社員と正社員やパートではそれぞれどのような違いがあるのか、メリットやデメリットも併せて解説していきます。
- 【この記事を読んでわかること】
- 嘱託社員と正社員やパートはさまざまな点が異なる
- 嘱託は今までのスキルを活かしたり専門性の高い仕事ができたりする
- パートは挑戦したかった職種にもチャレンジしやすい
- 企業も非正規社員を求める傾向がある
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嘱託とは会社から業務を依頼される働き方
嘱託社員とは、会社から業務を依頼される働き方や、定年後に引き続き再雇用される働き方です。 「嘱託社員」は法律で定められた雇用形態ではなく、1つの「働き方」として存在します。
「嘱託」の意味は頼んで任せる、あるいは頼まれた人といった意味です。そのため嘱託社員は専門性の高い業務や即戦力になる人材として、会社側が依頼したり、新たに迎え入れたりするケースが増えています。
嘱託社員とはどのような働き方なのか、詳しくみていきましょう。
雇用期間
嘱託社員の雇用期間は1年契約の有期雇用契約が多く、更新した場合はその後も継続して勤める働き方が一般的です。また契約内容にかかわらず、契約が更新されたあと通算5年を超えると、無期労働契約に転換できる「無期転換ルール」に申請できます。
無期労働契約は自動的に転換できるわけではなく、申請が必要となるため注意しましょう。
参考:厚生労働省「無期転換ルールの継続雇用の高齢者に関する特例」
給与と賞与
嘱託社員の給与は一般的に正社員と比較して、2〜3割減の給与になる場合が多いです。しかし専門性の高い業務内容の場合には、給与が高額になることや、一定の期間で一括報酬の給与が受け取れる場合もあります。
また、嘱託社員は勤め先の勤務条件によりますが、ボーナスと退職金がもらえます。ただし、会社の方針に委ねられています。 一般的に嘱託社員にとって不当な扱いにならない程度で、会社側が調整するのは問題がないとされているため、ボーナスや退職金、その他の手当てなどの報酬は、会社側が支払う義務はありません。
給与やボーナスなどの条件は就業前にしっかりと確認しておくとよいでしょう。
社会保険
社会保険は病気や失業、老後などのリスクに備えるための保険です。 嘱託社員の場合、勤務時間や勤務日数も会社によって加入できる社会保険が異なるため、ご自身の労働契約に当てはめて確認しましょう。
労災保険
労災保険とは、勤務中や通勤時のケガや病気に対して保険給付金が受け取れる保険です。 労災保険は嘱託社員も例外なく加入できます。
雇用保険
雇用保険とは病気やケガ、失業などで働けなくなってしまったときに備える保険です。 雇用保険は31日以上の勤続と週20時間以上の労働が条件となります。 条件に該当しなければ雇用保険には加入できません。
健康保険と厚生年金
健康保険組合(健康保険協会)は、家族を扶養に入れられる健康保険です。 厚生年金は将来の年金を国民年金よりも多く準備できる制度で、保険料は企業と折半となります。 加入条件は以下のとおりです。
- 従業員100名以上の企業で雇用期間が2ヶ月を超えて見込まれること
- 月収8万8000円以上
- 所定労働時間が20時間以上
上記の条件、または正社員の3/4以上の労働時間をこなし、2ヶ月以上の勤続が見込まれている嘱託社員も加入が認められています。 また、健康保険は75歳までの加入となり、75歳以上は条件にかかわらず後期高齢者医療制度に移行します。
上記の条件に該当せず加入できない勤務条件の場合には、一般的に国民健康保険と国民年金となり、保険料が全額自己負担です。 年金に関しては、将来受け取る年金にも影響があるため、就業前に確認しておきましょう。
嘱託社員のメリットとデメリット
嘱託社員は若年層から定年後の人まで、さまざまな年代が選択している働き方です。
嘱託社員のメリットとデメリットをみていきましょう。
嘱託社員のメリット
嘱託社員のメリットは、専門性の高い業務や今までのスキルを活かして仕事に就ける点です。 また嘱託社員は企業にとって即戦力になります。企業活動に貢献してもらえる経験豊富な従業員であり、貴重な人材といえるでしょう。 専門性が高い業務であれば、嘱託社員でも高収入が手に入る人もいます。
給与が正社員よりも低くなってしまう場合もありますが、正社員に比べると拘束時間が少なく、ご自身のライフスタイルに合わせて働けます。 ご自身で空いた時間の使い方が選択できる点も嘱託社員のメリットです。
嘱託社員のデメリット
嘱託社員のデメリットは多くの場合が契約期間がある点です。 契約期間ごとに更新があるため、将来性がなく不安定な働き方といえます。 また、契約期間満了による退職は自己都合退職となります。
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嘱託社員と正社員の違い
嘱託社員と正社員は同様に、勤務先と直接雇用である点に変わりはなく、法律上で明確な定義はありません。 では、嘱託社員と会社員ではどのような点が異なるのでしょうか。 詳しく解説していきます。
雇用期間
- 嘱託社員
有期雇用 - 正社員
無期雇用
嘱託社員と正社員の大きく異なる点として、雇用期間があります。 正社員であれば雇用期間に定めがない無期雇用ですが、嘱託社員は雇用期間に期限のある有期雇用となります。 嘱託社員の雇用期間は半年や1年など期限があり、その都度更新して就労するケースが多いです。
給料賞与
- 嘱託社員
月給や時給、一括報酬の場合もある - 正社員
月給
嘱託社員の給与は正社員と比較すると、勤務時間や仕事内容の違いによって、低くなる場合が多く、2021年の総務省統計局の労働力調査によると、嘱託社員と正社員では年収に100〜200万円単位の差があります。
またボーナスは嘱託社員や正社員など働き方にかかわらず、企業の業績や就業規則などによって変化するため、ボーナスの有無は勤務先で確認しましょう。
嘱託社員に「正社員と比較して不合理に低い賃金」を支払うことは労働契約法第20条で禁止されています。 しかし、責任の程度や業務内容の違いがもととなる賃金の差は合理的な賃金といえるため、手当の差やボーナスの差が出る場合があります。
参考:総務省統計局「労働力調査2021年(令和3年)平均」8ページ
労働条件
労働条件は大きく分けて3つあります。
それぞれ解説していきます。
有給休暇
有給休暇は業種や業態、嘱託やパートなどの労働者の区分なく、一定の要件を満たした全労働者に対して年次有給休暇を与えなければならないと法律で決まっています。 そのため、以下の要件を満たしていると労働者が平等に取得できます。
- 入社日から6か月経過していること
- 全労働日の8割以上出勤している
会社を退職せずに正社員から嘱託社員に変更になった場合は、継続雇用となるため、6ヶ月経過せずとも有給休暇の付与対象です。 また勤め先の労働規則によっては、入社後1ヶ月や入社時点で有給休暇が付与される場合もあります。
参考:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」
勤務時間
勤務時間は嘱託社員と正社員同様に、原則労働基準法第32条で「1日あたり8時間」および「1週間あたり40時間以内」が上限と決まっています。 ただし企業側が「36協定(サブロク協定)を結んでいる場合には残業の指示を出すことができ、この場合は原則、嘱託社員であっても残業に応じる必要があります。
休日
- 嘱託社員
嘱託社員の休日は、本人の希望や能力、経験などを考慮したのち、企業側の経営状況や職場の状況を総合的に勘案し、個別の嘱託契約によって決定します。
労働基準法第35条の規定では労働者に毎週1回、または4週間に4回以上の休日を与える必要があります。 - 正社員
嘱託社員と同様に、労働基準法第35条の規定では労働者に毎週1回、または4週間に4回以上の休日を与える必要がありますが、正社員の平均的な年間休日日数は120日です。120日の内訳は土日祝日が休日、加えてお盆と年末年始の休日があると合計で120日前後となります。一般的には勤務先の年間カレンダーにしたがって休日日数が決まります。
社会保険
- 嘱託社員
労災保険は加入対象です。雇用保険や健康保険、厚生年金に関しては加入条件を満たしている嘱託社員であれば加入できます。
嘱託社員「社会保険」 - 正社員
正社員は一般的に加入条件を満たしているため、労災保険や雇用保険、健康保険、厚生年金などすべて加入対象です。
嘱託社員とパートの違い
パートは「パートタイマー」の略称です。 パートとともに「アルバイト」もよく耳にする人も多いのではないでしょうか。 パートとアルバイトはどちらもパートタイム労働者に区分されるため、法律上の違いはありません。
パートは時給計算による給料形態の雇用者をいいます。 パートは短時間勤務が多く、限られた業務を任されることが多いです。 嘱託社員と同じく短時間労働ではありますが、嘱託社員が今までの経験や専門性を発揮できる働き方に比べて、パートは未経験の職種でも挑戦しやすい働き方といえます。
雇用期間
- 嘱託社員
有期雇用 - パート
有期雇用
契約期間がある点は、嘱託社員とパートは同じです。 パートの契約期間は原則として3年が上限となり、その後更新され継続して勤めるか、退職するか選択できます。 また嘱託社員と同様、パートでも契約内容にかかわらず、契約が更新されたあと通算5年を超えると無期労働契約に転換できる「無期転換ルール」に申請できます。
給与賞与
- 嘱託社員
月給や時給、一括報酬の場合もある - パート
時給
嘱託社員やパートなどの非正規雇用は短時間勤務が多いため、給与は低い傾向にあります。 また、嘱託社員の場合は再雇用後に引き続き月給で給与がもらえる場合や、専門性の高い業務であれば一括報酬を受け取れる場合があります。 一方でパートは時給計算のみのため、働いた時間の分だけ給与がもらえる働き方です。
労働条件
有給休暇
有給休暇に関しては業種や業態、嘱託やパートなどの労働者の区分なく、一定の要件を満たした全労働者に対して年次有給休暇を与えなければならないと法律で決まっています。
勤務時間
勤務時間は嘱託社員と同様にパートも労働基準法で「1日あたり8時間」および「1週間あたり40時間以内」と定められています。 ただし企業側が「36協定(サブロク協定)を結んでいる場合には嘱託社員やパートであっても残業の指示を出すことが可能です。 この場合原則嘱託社員やパートであっても残業に応じる必要があります。
休日
- 嘱託社員
能力などに合わせて個別に嘱託契約を結ぶ際に休日も決まります。 - パート
シフト制であれば個別の休日、フルタイムであれば社内カレンダー通りの休日となります。
休日は、嘱託社員とパートはどちらも本人の希望や能力、経験などを考慮したのち、個別の話し合いによって決める場合や、フルタイムであれば社内カレンダー通りの休日になる場合も多いです。
労働基準法第35条の規定では労働者に毎週1回、または4週間に4回以上の休日を与える必要があります。
社会保険
社会保険は、嘱託社員とパートはどちらも労災保険は加入対象です。 雇用保険や健康保険、厚生年金に関しても、嘱託社員とパートはどちらも加入条件を満たしていると加入できます。
まとめ:嘱託社員は今までのスキルを活かした働き方ができる
嘱託とパートの働き方では給料が減少する場合が多いですが、勤務時間を調整できたり有給休暇があったりするため、正社員で勤務しているときよりも自分のペースで働けるようになります。
専門性や今までのスキルを活かして働きたい場合は嘱託で働く、反対に今まではやってこなかった職種にチャレンジしてみたい人はパートで働くという選択も良いかもしれません。
嘱託社員とパートといった非正規社員は企業側からも必要とされる存在であり、増加傾向にあります。
現在は多種多様な働き方があり、年代が上がっても自由に選択できる時代です。
理想の働き方が見つかると定年後のシニアライフも充実した日々になるのではないでしょうか。
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