退職金の手取りはいくら?税金の計算方法をわかりやすく解説
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退職が近づくと、退職金の手取りが気になる人もいるでしょう。退職金は給与や賞与と違い、一生に何度も受け取るものではありません。また、老後の生活設計に大きな影響を及ぼします。そのため、税の負担が軽減される仕組みになっています。この記事では、退職金にかかる税金の計算方法を詳しく解説します。
- 【この記事を読んでわかること】
- 退職一時金には支給額から退職所得控除を引いた残りの1/2に対して税金がかかる
- 退職金の手取りは給与や賞与に比べて多くなる
- 退職金を一時金で受け取ったほうが分割で受け取るより税負担が少ない
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退職金にかかる税金の種類と計算方法
最初に退職金の課税の基本について解説します。
退職金にかかる所得の種類
退職金を一時金で受け取る場合、税法上「退職所得」に分類されます。退職所得は、給与や賞与などの「給与所得」とは異なるやり方で計算します。一括受取の退職金は老後のための大事な資金と考えられ、手取りが多くなるように考えられているからです。
退職金の税金は源泉徴収されるため、確定申告の必要はありません。ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を退職日までに勤務先に提出しないと、20.42%の税率で源泉徴収されてしまいます。本来の税額より多く納付した場合は、確定申告で還付を受けなければなりません。
所得税の計算方法
所得税の計算の流れから見ていきましょう。最初に課税対象となる金額(課税所得額)を求めます。
- 課税所得額=(退職金の支給額-退職所得控除額)×1/2
- 所得税額=課税所得額×所得税率-控除額
- 復興特別所得税額(2037年まで)=所得税額×2.1%
短期間で退職するケースでは上記と別の方法で計算します。
役員勤続年数5年以下の役員
役員等勤続年数が5年以下の法人の役員が退職金を受け取る場合の課税所得額は、以下のように求めます。
- 課税所得額=退職金の支給額-退職所得控除額
勤続年数5年以下の役員以外の従業員
従業員として勤続年数が5年以下の人が退職金を受け取る場合の課税所得額は、以下のように求めます。
- 退職金の支給額-退職所得控除額」が300万円以下の場合
課税所得額=(退職金の支給額-退職所得控除額)×1/2 - 「退職金の支給額-退職所得控除額」が300万円超の場合
課税所得額=150万円+(退職金の支給額-(300万円+退職所得控除額)
住民税の計算方法
退職金にかかる住民税の課税所得額は、所得税で求めた金額をそのまま使えます。住民税には所得割と均等割がありますが、退職所得に均等割は課税されません。住民税の所得割の税率は一律10%(都道府県民税4%・市区町村税6%)です。
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退職金の受け取り方で異なる所得の種類
退職金は一括で受け取る以外に、企業年金のように分割(年金形式で)で受け取る方法があります。受け取り方によって、課税方法が異なります。
一時金での受け取り
退職金を一時金で受け取る場合は退職所得に該当し、ほかの所得とは別に所得税・住民税を計算します(分離課税)。
勤続年数で変わる退職所得控除
退職所得控除とは、課税所得額の計算で実際の支給額から差し引ける一定の金額のことです。勤続年数によって計算式が異なります。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数(計算結果が80万円未満なら80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
参考:国税庁「退職金と税」
「勤続年数」は1年未満の端数がある場合、1年に切り上げます。たとえば、5年1ヶ月であれば勤続年数6年と見なされます。
分割(年金形式)での受け取り
分割(年金形式)で受け取る退職金は「公的年金等にかかる雑所得」に該当し、ほかの所得と合算して所得税・住民税を計算します(総合課税)。雑所得は収入金額から必要経費を引いて求めますが、「公的年金等にかかる雑所得」の場合は、収入金額から公的年金等控除額を引いて計算します。
どちらの受け取り方が有利か
一時金の受取と分割の受取がどちらも選べる場合、どちらが有利でしょうか。
企業年金などの退職金を年金形式で受け取ると年金原資を運用しながら取り崩していくため、一般的にトータルで受け取れる金額は一時金よりも多くなります。しかし、受取時に公的年金などと合算して税額が計算されるので、所得税・住民税が高くなりがちです。
一方、一時金受取ならば退職所得として税負担が軽減されます。一括で受け取って自分で運用して、資産の寿命を延ばすこともできるでしょう。ただし、浪費が心配な人は分割で受け取るほうが無難かもしれません。
どちらが有利かは一概にはいえませんが、個々の生活設計に合わせて選ぶとよいでしょう
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退職金(一時金)手取り額シミュレーション
退職金から所得税・住民税を引かれると、手取りはいくらになるのでしょうか。ここでは、勤続年数と退職金額別に3つのケースで試算してみます。
ケース1. 勤続年数3年(役員以外)、退職金500万円
最初は、勤続年数3年、退職金額500万円のケースです。短期退職なので一般の計算式とは異なる計算方法となります。
- 退職所得控除額:40万円×3年=120万円
- 課税所得額:150万円+(500万円-(300万円+120万円))=230万円
- 復興特別所得税(所得税額の2.1%):13万2,500円×2.1%=2,782円(1円未満切り捨て)
- 住民税の:230万円×10%=23万円
- 所得税・住民税の合計:13万2,500円+2,782円+23万円=36万5,282円
- 退職金の手取金額:500万円-36万5,282円=463万4,718円
課税所得額が230万円の場合、所得税の税率は10%、控除額は9万7,500円です
参考:国税庁「退職金と税」
所得税額:230万円×10%-9万7,500円=13万2,500円
次に、住民税を計算します。
所得税・住民税を合計し、退職金額から差し引いた残りが手取額となります。
勤続年数3年、退職金額500万円の手取り金額は約463万円です。このケースでは通常よりも多くの税金を引かれますが、それでも支給額の90%以上が手取りとなります。
ケース2.勤続年数20年、退職金1200万円
次に、勤続年数20年、退職金額1200万円のケースです。ケース1と同様に、所得税から計算します。
- 退職所得控除額:40万円×20年=800万円
- 課税所得額:(1200万円-800万円)×1/2=200万円
課税所得額が200万円の場合、所得税の税率は10%、控除額は9万7,500円です - 所得税額:200万円×10%-9万7,500円=10万2,500円
- 復興特別所得税:10万2,500円×2.1%=2,152円(1円未満切り捨て)
- 住民税の所得割:200万円×10%=20万円
- 所得税・住民税の合計:10万2,500円+2,152円+20万円=30万4,652円
- 退職金の手取金額:1,200万円-30万4,652円=1,169万5,348円
次に、住民税を計算します。
所得税・住民税を合計し、手取額を計算します。
勤続年数20年、退職金額1,200万円の手取り金額は約1,170万円となります。1,200万円の退職金のうち、課税される金額は200万円です。そのため、支給額のほとんどが手取りとなるわけです。
ケース3.勤続年数35年、退職金2500万円
最後に、勤続年数35年、退職金額2,500万円のケースです。まずは、所得税から計算します。
- 退職所得控除額:800万円+70万円×(35年-20年)=1,850万円
- 課税所得額:(2,500万円-1,850万円)×1/2=325万円
課税所得額が325万円の場合、所得税の税率は10%、控除額は9万7,500円です - 所得税額:325万円×10%-9万7,500円=22万7,500円
- 復興特別所得税:22万7,500円×2.1%=4,777円(1円未満切り捨て)
- 住民税の所得割:325万円×10%=32万5,000円
- 所得税・住民税の合計:22万7,500円+4,777円+32万5,000円=55万7,277円
- 退職金の手取金額:2,500万円-55万7,277円=2,444万2,723円
次に、住民税を計算します。
所得税・住民税を合計し、手取額を計算します。
勤続年数35年、退職金額2,500万円の手取り金額は約2,444万円となります。勤続20年超では退職所得控除も大きくなります。2,500万円の退職金の課税所得は325万円となり、引かれる税額もわずかとなるのです。
まとめ
退職金は老後の生活の資金源であるため、税負担を軽減するようになっています。また、老後の生活の大切な資金です。退職金の受取額がおおよそわかったら手取額を試算し、老後のライフプランを具体的に立ててみてはいかがでしょうか。
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