SIerはオワコン?生き残るSIerとオワコン企業からの脱却法

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現在、多くの日本企業のシステム開発・保守はSIerなしには成り立ちません。IT業界に欠かせないSIerですが、「オワコン」「やばい」などのネガティブな声があることも事実です。

本記事では、SIerが「オワコン」と言われる理由と考察・生き残るSIer・オワコンSIerからの脱却方法を解説します。

SIerで働こうとしている、これからキャリアアップしようとしているのに「オワコン」「やばい」と言われていると不安になりますよね。実際はどうなのかと悩んでしまう人もいるかもしれません。SIerでのキャリアアップや転職も視野に入れて、弊社エイジレスへ相談してみませんか?

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  • 【この記事を読んでわかること】
  • SIerがオワコンと言われるおもな理由は、受託開発ビジネスの先行き不透明感と多重下請け構造の弊害
  • 実際にオワコンになるかは個々の企業次第
  • SIerが生き残るためにはビジネスモデルの変革や、受託開発で独自の強みを磨くことがカギ
  • 所属するSIerがオワコン企業と感じたら、転職エージェントを活用して転職を

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この記事の監修者

じょう(フリーランス)

大学卒業後、富士通グループ会社(現富士通Japan株式会社)に入社
13年勤務し、おもにプロジェクトマネージャー・ITコンサルタントとして企画支援〜構築〜運用まで幅広く対応
現在はフリーランスとして執筆業・マーケティング業に従事
保有資格:ITストラテジスト応用情報技術者Fujitsu Certified Professional Cloud、等

SIerのビジネスモデルと多重下請け構造

SIerがオワコンなのか否かを考察する前に、まずはSIerがどのような企業なのかを理解しておきましょう。

SIerは、IT業界で「システムインテグレーター」の略称として使われる用語です。システムインテグレーターとは、ユーザー企業のシステム開発全般を請け負う企業を指します。

SIerを理解するために、そのビジネスモデルと大きな特徴である多重下請け構造を見ていきましょう。

SIerのビジネスモデル

SIerは、ユーザー企業の要求にもとづいて、情報システムの要件定義・設計・開発・保守・運用を一貫して請け負うシステム開発の専門企業です。

その業務は、プロジェクトの特性やクライアントの要望に応じて、客先に常駐するケースとSIerの自社に持ち帰り開発するケースがあります。SIerのおもな収益源は、こうしたプロジェクトの受託開発や導入後の保守・運用サポートです。中には、コンサルティングや自社の製品・サービス開発を手掛ける企業もあります。

中でも大手のSIerは、さまざまな業界のクライアントに対応するため、多様な技術領域のエンジニアを抱えています。一方、中小のSIerは事業範囲を絞り、特定の領域に強みを持つ企業が大半です。

近年のSIer業界は、従来の受託開発だけでなくクラウド・AI・IoTなど最新技術の導入支援を求められることも増えており、技術の進化とともにビジネスモデルも変化しています。技術やビジネスの変化に対応できず、従来の方法だけに固執しているSIerは競争力を失っていくでしょう。

SIer業界の多重下請け構造

SIer業界を理解するうえで避けて通れないのが、「多重下請け構造」です。

大手SIerがクライアント企業から開発を受託(元請け)し、実際の開発を中小のSIerやフリーランスエンジニアへと下請けに出す構造を指します。これを何度も繰り返し、4次請け・5次請けまで商流が深くなるケースも珍しくありません。

この構造には、大手SIerがプロジェクト全体のマネジメントや品質保証を担当し、専門的な技術を持つ中小SIerが実際の開発を行う役割分担の意味があります。一方、下請けの階層が深くなるほど、コミュニケーションロスや品質にバラつきが出る点などがリスクです。

監修者のコメント
多重下請け構造は、SIerとして働く環境でよく話題になります。
おもな問題は、「中抜きコストがかさむこと」と「責任の所在があいまいになること」の2点です。
広く認識されている問題なのに解決が難しいのは、元請けがプロジェクトを受注し、下請けが開発するという形態がIT業界全体の構造として確立されているからです。
現実的にすぐに解決できる問題ではないので、ITエンジニアは自身が希望する働きかたを具体的に考え、自律的にキャリアを築くことが重要です。

SIerがオワコンと言われる6つの理由

SIerがオワコンであるという意見には、SIer業界全体の先行き不透明感からくるマクロな視点と、SIerで働くエンジニアの過酷さ・つらさというミクロな視点の2つがあります。

それぞれ3つの理由を解説していきます。

  • SIer業界全体の将来性に起因する3つの理由
  • SIerで働くエンジニアがオワコンと感じる3つの理由

SIer業界全体の将来性に起因する3つの理由

まずは、SIer業界全体のビジネス課題や先行き不透明感に起因するオワコン説の理由を見ていきましょう。

  • ウォーターフォール開発が現代のビジネス環境に合っていない
  • 「人月商売」はクライアントへのビジネス貢献に乏しい
  • DXの実現であらゆる企業がデジタル企業化する

ウォーターフォール開発が現代のビジネス環境に合っていない

SIerはオワコンであるとする理由の1つに、ウォーターフォール開発の限界が挙げられています。

ウォーターフォール開発とは、まず要件や仕様を確定させ、それにもとづいて工程を順に進めていく方法論です。SIerビジネスは、最初にクライアントと全体の要件と設計を固め、以降の開発を一括で請け負う形を主流として拡大してきました。

しかし、柔軟性に欠けるこの手法は、近年のデジタル化やグローバル化による変化の激しいビジネス環境に合わなくなっています。時間をかけたウォーターフォール開発が終わるころには、すでに市場のニーズが変化していることも少なくありません。こうした背景から、変化に柔軟に対応するアジャイル開発が注目を集めています。

従来のウォータフォール開発に固執するSIerは、時代から取り残されオワコンとなっていくことが懸念されます。

「人月商売」はクライアントへのビジネス貢献に乏しい

IT業界では、SIerのビジネスモデルを指して「人月商売」と呼ばれることがあります。

システム開発のコストを人数と期間を掛け合わせた人月で見積もり、それを基準に収益を上げる方法です。SIerは請負でシステム開発を受託しますが、実のところはエンジニアの労働力を提供している形になっています。

このような人月商売では、見積もり段階で予定人月を稼ぎ、開発段階では慣れた手法でいかに人月の実績を抑えるかが重視されがちです。その結果、新しい技術・手法の採用や、真のビジネス価値の提供が二の次になりやすい傾向にあります。

労働集約型の人月商売から脱却できずクライアントに付加価値を提供できないSIerは、クラウド・AI・ノーコード開発など新しい技術の台頭によって、その存在価値を脅かされる危険性が高まるでしょう。

DXの実現であらゆる企業がデジタル企業化する

近年、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に力を入れ、ビジネスの枠組みや企業文化の変革に取り組んでいます。

経済産業省のDXレポートによると、DXが実現した企業はデジタル技術やデータを活用し、市場の変化に迅速に対応した新たなビジネス展開が可能です。DXが進んだ場合、あらゆるユーザー企業がみずからデジタル化できる人材を育成・活用し、デジタル企業になるとされています。

こうした未来が実現すると、現在のようなSIerにシステム開発を一手に委ねるスタイルは衰退してくことが予想されるでしょう。時代の流れに応じてビジネスモデルに転換できないSIerは、業界から取り残されるリスクが高まります。

以上、マクロ視点でSIerオワコン説を見てきました。続いては、個々のエンジニアの視点でSIerオワコン説を解説します。

SIerで働くエンジニアがオワコンと感じる3つの理由

実際にSIerで働くエンジニアの視点で見た場合、労働環境・待遇・自身の成長可能性・やりがいなどが低い場合、オワコンであると感じるでしょう。現場エンジニアの目線から、SIerがオワコンと言われる理由を解説します。

  • 下流のSIerほど待遇や労働環境が悪くなる
  • 新しい技術や開発手法が身に付かずスキルアップできない
  • 要件や設計どおり開発する仕事でモチベーション低下

下流のSIerほど待遇や労働環境が悪くなる

SIer業界は、先に述べた多重下請け構造により、元請けから下流にいくほど待遇や労働環境が悪くなる問題があります。

1つのプロジェクトが元請けの大手・中堅SIerから、下流の小規模なSIerへと流れていき、ときには4次請け・5次請けも珍しくありません。あいだに入る企業が多いほど、各企業の儲けとなる中間マージンが多く抜かれ、下流のエンジニアの待遇が悪化していくことは明らかです。

また、あいだに入る企業が多くなれば情報伝達の遅れやコミュニケーションロスも大きくなります。そのしわ寄せを受けるのは、下流で開発を担うエンジニアです。

このように、SIer業界の多重下請け構造が待遇や労働環境の悪化を招く要因の1つとなっています。

新しい技術や開発手法が身に付かずスキルアップできない

新しい技術や手法を身につけてスキルアップを図りたいエンジニアにとっては、SIerは魅力的に映らないかもしれません。

SIerはクライアントの要求に応える形での開発や、既存システムの改善などが中心となり、新しい技術や手法の採用が少ないためです。また、元請けの大手SIerでは、マネジメントやクライアント対応がおもな業務になることも少なくありません。

こうした環境では、自社開発のWeb系企業やスタートアップなど技術の柔軟性が高い企業で働くエンジニアに比べて、スキルアップの機会は限られます。その結果、SIerではエンジニアとしての市場価値向上が難しく、オワコンと考える人も多いでしょう。

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要件や設計どおり開発する仕事でモチベーション低下

先に述べたとおり、SIer業界は多重下請け構造です。下流にいくほど、上からの指示どおりのものを開発するだけの仕事となり、思い描いていたキャリアとの違いにモチベーションが低下するエンジニアも少なくありません。

多くのプロジェクトでSIerが果たす役割は、クライアントが出した要件の具現化です。その過程で、最上流に位置する一部のSIerを除いては、独自のアイデアや技術的な提案をする余地はほぼありません。これが続くと、ただ指示どおりに作ることに疑問を感じ、技術者としての充実感を感じられなくなるエンジニアも多いでしょう。

こうしたSIerの労働集約的な働き方が、エンジニアのやりがいを削ぎ「オワコン」と思わせる一因と考えられます。

ここまで、SIerオワコン説の理由をマクロとミクロ双方の視点から見てきました。

【結論】オワコンになるかはSIer企業次第|生き残る企業の3つの特徴

現在のSIer業界はDX需要もあり、ビジネス面ではオワコンとは程遠い状況です。総務省が2021年に公表した調査によると、DXを進める企業の69.8%がSIerなどのITベンダーがいないとDXが回らないと回答していることからも、需要の高さがうかがえます。短期から中期の時間軸では、SIer業界がオワコンになることはないでしょう。

では、長期的な時間軸で見た、DX後のSIerはオワコンなのでしょうか?

結論は、ずばり企業次第です。DXではユーザー企業がデジタル企業化するとされており、SIerを取り巻く環境は大きく変わります。その環境変化にうまく適応できたSIerは、DX後のデジタル社会でも価値を発揮し続けるでしょう。一方で、従来のビジネスに固執して変革できないSIerは淘汰される可能性が高まります。

ここでは、将来も生き残るSIerの3つの特徴を考えていきましょう。

  • DX後を見越してビジネスモデルの変革を進めるSIer
  • 受託開発での生き残りをかけて強みを磨くSIer
  • エンジニアのスキルシフトを推進するSIer

DX後を見越してビジネスモデルの変革を進めるSIer

生き残るSIerの特徴の1つ目は、DX後を見越してビジネスモデルの変革を進める企業です。

オワコンの理由で解説したとおり、DXに成功したユーザー企業はみずからデジタル人材を抱え、システムを内製化する方向に進むでしょう。多くの企業が内製化を実現すると、システム開発を一括で請け負う従来型のSIerビジネスは衰退が予想されます。

しかし、SIerの仕事がなくなるわけではありません。ユーザー企業が内製化しても、すべてを自前でまかなえるケースはまれです。多くの場合、最新技術など高度な知見が必要な領域では、専門家の助けが必要となるでしょう。

資本力のある大手を中心としたSIerはこうしたニーズを捉え、ユーザー企業のデジタル人材とともにIT戦略を技術面から支える役割にシフトしていくと考えられます。

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受託開発での生き残りをかけて強みを磨くSIer

2つ目の生き残るSIerの特徴は、受託開発の道で強みを磨き、他社と差別化できる企業です。

DXが進んでも、すべての企業がシステム開発を内製できるわけではありません。自社でシステム開発のリソースを揃えられない、または戦略的に内製化しない企業も多いでしょう。こうした企業からSIerへの、従来型の受託開発のニーズは継続していくことが見込まれます。

ただし、受託開発に対する全体の需要は減少するため、SIerの淘汰が進むことは明らかです。そのような厳しい状況の中でも、需要の高い分野や技術に強みを持つSIerは、受託開発で生き残れる可能性が高まるでしょう。

それは、必ずしも最新技術の必要はありません。枯れた技術であっても、他社が撤退し需要があればビジネスチャンスです。中小のSIerであっても、市場のニーズを捉えて独自性を持った企業は生き残っていくでしょう。

エンジニアのスキルシフトを推進するSIer

生き残るSIerの特徴の3つ目は、エンジニアのスキルシフトを推進するSIerです。

ビジネスモデルの変革か、強みを磨いて受託開発で生き残るか、どちらにしても現場を担うのはエンジニアにほかなりません。SIer企業が生き残るためには、そこで働くエンジニアが、企業戦略に沿ってスキルを身につけていくことが重要です。

たとえば、新しい技術や開発手法でユーザー企業へのビジネス貢献を目指すなら、クラウド・DevOps・AI・アジャイル・UI/UXなどのスキルが求められます。

現在の受託開発ビジネスに注力するだけでなく、エンジニアがスキルシフトを図るための教育制度や実践経験の場を整えているSIerの将来は明るいでしょう。

以上で、SIerがオワコンか否かに関する解説を終わります。ここからは、もし所属するSIerがオワコンだと感じた場合の対処法を見ていきましょう。

所属するSIerがオワコンと感じたらやるべき3つのこと

現在働いているSIerが、待遇や労働環境が悪く将来性に乏しいオワコン企業であると感じているエンジニアもいるでしょう。そんなときは、オワコン企業と一緒に沈んでいくのではなく、有望な企業への転職がおすすめです。

オワコンSIerから脱却するためにやるべき3つのことを紹介します。

  • 転職の目的ややりたいことを明確にする
  • 開発経験やスキルを棚卸しする
  • IT業界に強い転職エージェントに相談する|エイジレスへ

転職の目的ややりたいことを明確にする

転職を考える際、肝心なことは「前向きな目的・理由」をはっきりと定めることです。

現在のSIer企業への不満や将来性への懸念による、単に辞めたいというモチベーションだけでは転職が成功する可能性は低いでしょう。転職活動では転職理由や志望動機が問われます。後ろ向きな理由だけでは、企業からの信頼を得ることは困難です。

前向きな目的・理由を定めるためには、「本来はどんな仕事がしたかったのか」「どのような企業なら実現できるか」「自分はどう貢献できるか」などを自己分析や企業研究で明らかにしましょう。

これにより、転職活動をとおしてのブレない軸ができ、書類作成や面談で一貫性を持った意欲のアピールにつながります。

開発経験やスキルを棚卸しする

転職の意向がはっきりしたら、次は自身のキャリアを棚卸ししましょう。これまで携わってきたプロジェクトや身につけたスキルを振り返り、リスト化します。

プロジェクトは単に案件名だけではなく、概要や規模・担当工程・役割・言語・環境・工夫した点などの詳細なリストアップが重要です。スキルは、扱える言語・環境や保有する資格、ソフトスキルなど網羅的に洗い出しましょう。

1度詳細なリストをまとめておけば、応募する企業の求める人材像やスキルに合わせて、履歴書・職務経歴書に記載する材料や面談でのエピソードをピックアップできます。企業にマッチする経験やスキルをアピールするための下準備として効果的です。

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まとめ/オワコンにならないSIerを見極めることが重要

本記事を通して、下記のことがわかりました。

  • SIerがオワコンと言われるおもな理由は、受託開発ビジネスの先行き不透明感と多重下請け構造の弊害
  • 実際にオワコンになるかは個々の企業次第
  • SIerが生き残るためにはビジネスモデルの変革や、受託開発で独自の強みを磨くことがカギ
  • 所属するSIerがオワコン企業と感じたら、転職エージェントを活用して転職を

従来より日本企業のシステム開発は、SIerに委託して「お任せ」するやり方が一般的です。そんな環境下で、SIer業界は拡大してきました。

現在はDX特需もあり、システム開発の需要は旺盛です。しかし、今後DXが進みユーザー企業がデジタル企業化すると、SIerへの外注は縮小していくことが見込まれます。

本記事では、生き残るSIer企業として下記の2つの例を挙げました。

  • ビジネスモデルを変革してユーザー企業のIT戦略のパートナーとなる企業
  • 独自の強みを磨いて受託開発を続けていく企業

SIerで働く現役エンジニアや、これからSIerを目指す転職希望者・就活生は、本記事を参考にオワコンにならないSIerを見極めることが重要です。

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執筆者
しーそー
大手証券系システム会社での20年間のシステムエンジニア(SE)歴を経て、2022年4月よりライターの道へ。前職では主に設計・要件定義などの上流工程やプロジェクトマネジメントを経験。職歴を活かしたIT・金融関係の記事や、趣味と実益を兼ねた資産運用・仮想通貨などが得意ジャンル。2児の父として子育てにも奮闘中