退職金の節税にふるさと納税が向かない理由!節税が期待できるケース

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節税対策として多く利用される「ふるさと納税」が退職金の節税に活用できるかどうかについて疑問に思った人も多いのではないでしょうか。結論から言うと節税効果は低いですが、節税できるケースもゼロではありません。本記事では、退職金の節税方法について、ふるさと納税がどれくらい節税できるのかについてわかりやすく解説します。

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  • 【この記事を読んでわかること】
  • ふるさと納税による節税効果は所得税のみ
  • 退職金を年金で受け取る場合は節税効果になることもある
  • 国内に住所がない・源泉徴収義務者でない場合は節税できる可能性がある
  • ふるさと納税で節税するには確定申告が必要

ふるさと納税による節税効果は所得税のみ

ふるさと納税を活用して退職金の控除を受ける場合は、「所得税」のみが控除対象になるケースが多いです。本記事では、なぜ退職金にかかるふるさと納税の控除が所得税のみになってしまうのかを解説します。

退職金はもともと税制優遇の高い制度

退職金は以下のように計算します。

(退職金(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1 2 = 退職所得

退職所得控除額は、勤続年数が長ければ長いほど控除額が大きくなる仕組みをしています。

勤続年数(=A)退職所得控除額
20年以下40万円 × A
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (A − 20年)

上記計算式を見てわかるように、退職金は元々大きな優遇措置があるため、ふるさと納税のような節税措置を受ける必要のない別の所得として考えられています。

所得税のみが控除対象になる理由

一般的な所得税の計算方法は、所得金額の合計から所得控除(配偶者控除・扶養控除など)を差し引いた「課税所得金額」に応じて所得税を算出します。ふるさと納税により納めた金額は確定申告を行うことにより「所得控除」の対象となり、合計所得金額から差し引くことができます。

しかし、退職金はほかの所得と切り離して考える「分離課税」を採用しており、退職金を受け取る際に税金を控除します。つまり、退職金は確定申告するケースがほとんどなく、ふるさと納税分の所得控除を受けるのが難しいというのが実態です。

住民税は控除対象にならない理由

ふるさと納税の寄附による住民税の税額控除は、来年支払う住民税に適用されます。一方、退職金から算出される住民税額は、退職金を支給する際に天引きされます。所得税と同様に、退職金をもらうケースでは、ふるさと納税の適用条件に該当せず、住民税の税額控除が受けられません。一定の条件下で節税効果が期待できるケースもありますが、レアケースであると同時に、ふるさと納税の恩恵を受けられない場合もあります。

退職金を確定給付企業年金制度(年金)で受け取る場合は節税効果になる場合がある

退職金の節税にふるさと納税が向かない理由!節税が期待できるケース

退職金は一時金で受け取る方法以外にも年金として受け取ることで、「公的年金控除」の対象となります。毎年、年金として受け取る金額が公的年金控除額を下回れば税金が一切かかりません。

公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下
年金を受け取る人の年齢(a)公的年金等の収入金額の合計額(b)公的年金等に係る雑所得の金額
65歳未満60万円以下0円
60万円超から130万円未満収入金額の合計額−60万円
130万円超から410万円未満収入金額の合計額×0.75−27.5万円
410万円超から770万円未満収入金額の合計額×0.85−68.5万円
770万円超から1,000万円未満収入金額の合計額×0.95−145.5万円
1,000万円以上収入金額の合計額−195.5万円
65歳以上110万円以下0円
110万円超から330万円未満収入金額の合計額−110万円
330万円超から410万円未満収入金額の合計額×0.75−27.5万円
410万円超から770万円未満収入金額の合計額×0.85−68.5万円
770万円超から1,000万円未満収入金額の合計額×0.95−145.5万円
1,000万円以上収入金額の合計額−195.5万円

出典:国税庁HP 公的年金等に係る雑所得の速算表(令和2年分以後)

上図を見てわかるように65歳未満は年間60万円以下、65歳以上は110万円以下の年金を受け取る場合には税金が一切かかりません。ただし、公的年金などの中には、「公的年金」及び「企業年金」なども対象になります。

毎年、医療費控除が多い人やふるさと納税の恩恵をうけたい人、年金受給額が少ない人は、「一時金」で受け取るよりも節税効果が高くなることもあります。退職金を年金で受け取る場合は、ご自身の退職後に公的年金や企業年金がどれくらい受け取れるかを計算してから選択しましょう。

退職金でふるさと納税が活用できるケース

退職金の節税にふるさと納税が向かない理由!節税が期待できるケース

稀なケースですが、退職金でふるさと納税が活用できる2つのケースがあります。

  • 国内に住所がなかった場合
  • 源泉徴収義務者でない場合

それぞれ解説します。

国内に住所がなかった場合

退職金を受け取る年に国内に住所がないケースでは、退職金を支給する際に住民税を差し引かなくても良いとされています。言い換えると、所得に応じて算出された住民税を翌年度に支払います。

そもそも、ふるさと納税の寄附による住民税の税額控除は、来年支払う住民税に適用されるため、このケースでは、退職金を受け取る年にふるさと納税を行うことにより、来年支払う住民税が控除されます。

とはいえ、国内に住所のない非居住者に退職金を支払うケースは、ほとんどないことに加えて、所得税法上の非居住者の要件が複雑であることから判定が難しいです。居住者・非居住者の判定は国税庁のホームページまたは所轄の税務署にご相談ください。

参考:No.2012 居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)

源泉徴収義務者でない場合

源泉徴収義務者は、会社や個人が、人を雇って給与を支払ったり、士業などに報酬を支払ったりする場合に、所得税をあらかじめ天引きする必要があります。この天引きした源泉徴収税は、翌月の10日までに支払います。このように、所得税を差し引いて国に納める義務のある者を源泉徴収義務者といいます。

ただし、常時2人以下(家事使用人)に給与を支払っている事業者は、退職金の源泉徴収義務(税金の天引き)がありません。よって、退職金にかかる税金も通常の所得と同じ扱いになり、ふるさと納税の控除を受けることができます。

ふるさと納税で節税するためには確定申告が必要

退職金の節税にふるさと納税が向かない理由!節税が期待できるケース

ふるさと納税による所得控除を受けるためには「確定申告」が必要です。本章では、確定申告期限や必要書類、注意点を解説します。

所得税の還付を受けるケース

ふるさと納税の控除を受ける方法は2つあります。1つ目は、ワンストップ特例制度を利用して住民税の税額控除のみを受ける方法で、2つ目は、確定申告により所得控除と住民税の税額控除を受ける方法です。

「国内に住所がなかった場合」と「事業者が源泉徴収義務者でない場合」の両方で確定申告が必要です。
また、ふるさと納税で退職金にかかる税金を控除しない場合であっても、医療費控除や1年目の住宅ローン控除を受ける際は、確定申告が必要になるので覚えておきましょう。

ワンストップ特例制度を利用していないことが前提

ワンストップ特例制度は、確定申告をしなくてもふるさと納税の控除が受けられる仕組みです。1年間で5自治体まで利用でき、ふるさと納税による返礼品を注文する際に利用の有無を問われます。ただし、退職金にかかる税金の控除を受けるためには、確定申告が必要になるため、ワンストップ特例制度は利用しません。

確定申告を必要としない人にとっては、確定申告の手間を省ける便利な制度ですが、確定申告を行うとワンストップ特例制度が無効になります。ふるさと納税を利用する際に、ワンストップ特例制度を利用するかどうかは、各ふるさと納税サイトの説明を一読してから利用してみましょう。

確定申告期限・必要書類・提出方法

所得税の確定申告期限は、確定申告する年の翌年2月16日〜3月15日が申告期限と定められています。

確定申告に必要な書類は以下のとおりです。

・確定申告書類(AまたはB)
・本人確認書類(免許証など)
・口座情報のわかるもの(還付がある場合)
・所得証明書類(源泉徴収票など)
・控除証明書(生命保険料控除証明書など)

各種必要書類を申告期限内に所轄税務署へ提出することにより確定申告手続きが完了します。
また、ふるさと納税などの控除証明書の提出もれがある場合は、「更生の請求」により5年以内に限り還付が受けられます。

ふるさと納税の節税効果はシミュレーションで確認できる

ふるさと納税は確定申告する年度(1月1日〜12月31日)に寄付した分を翌年度の税金から控除される制度です。たとえば、令和5年に支払う税金の控除を受ける場合は、令和4年度中に寄付しなければ、税金の控除が受けられません。

とはいえ、自分の収入は12月31日で確定するため、ふるさと納税の上限金額を計算するのは、専門家でも困難です。ふるさと納税の控除上限を算出する際は、各ふるさと納税サイトの上限シミュレーションを利用しましょう。

去年の収入を元にシミュレーションを行い、上限金額を算出してから、今年度の収入と比べて寄付していく方法がおすすめです。

ふるさと納税による退職金の節税効果は低い

退職金の節税にふるさと納税が向かない理由!節税が期待できるケース

ここまで退職金にかかるふるさと納税の節税を解説してきましたが、控除できるのは「所得税のみ」であることがお分かりいただけたと思います。そして、ふるさと納税の控除割合は所得税より住民税が大きいことから、ふるさと納税による退職金の節税効果は低いです。

そもそも退職金は、勤続年数に応じて増加する「退職所得控除」に加えて、「1/2」の税金にできることから、税制の優遇が大きい所得でもあり、節税できる方法もほとんどありません。どちらかといえば、「一時金」で受け取るか「年金」で受け取るかなど、ご自身の状況に合った退職金の受け取り方を考え、多く手元に残る方法を試算してみましょう。

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執筆者
エイジレスメディア編集部
エイジレス社会の専門誌として、すべての人が何歳でも豊かな暮らしを紡げるよう有益な情報を発信していきます。主に、エイジレスなビジョンを体現している人物や組織へのインタビュー記事を執筆しています。