退職金の相場はいくら?企業規模や業種、勤続年数による違いも解説

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現在の公的年金の水準では多くの人が老後の生活をまかなうことは難しく、不足分を自力で準備する必要があります。そのため、会社員にとって退職金の受取額は、老後の生活設計に大きな影響を与えます。この記事では、企業の規模や業種勤続年数ごとの退職金の相場と、老後資金の備え方などについて解説します。

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企業規模(大企業・中小企業)による退職金の相場は?

資料

多くの企業で退職金は退職後1ヶ月程度で支払われています。退職金制度を採用している企業は全体の80%程度で、退職金額は減少傾向にあります。企業規模ごとの定年退職の場合の退職金相場について以下で解説します。

従業員1,000人以上の企業の退職金の平均額

従業員1,000人以上の企業の定年退職の退職金は次の通りです。中途入社等により勤続年数が短い場合には、最終学歴によって金額に差が生じています。

勤続年数 大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 高校卒(管理・事務・技術職) 高校卒(現業職)
平均 2,233万円 2,067万円 1,605万円
20~24年 1,711万円 676万円 600万円
25~29年 1,404万円 937万円 642万円
30~34年 2,034万円 1,152万円 876万円
35年以上 2,435万円 2,328万円 1,965万円

参考:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」より(以下同じ)

従業員300人以上1,000人未満の企業の退職金の平均額

従業員300人以上1,000人未満の企業の定年退職の退職金は次のとおりです。1,000人以上の企業に比べ、学歴別の平均値で500万円以上の差があります。

勤続年数 大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 高校卒(管理・事務・技術職) 高校卒(現業職)
平均 1,825万円 1,416万円 988万円
20~24年 1,073万円 520万円 360万円
25~29年 1,522万円 654万円 656万円
30~34年 1,650万円 960万円 857万円
35年以上 1,957万円 1,673万円 1,286万円

従業員100人以上300人未満の企業の退職金の平均額

従業員100人以上300人未満の企業の定年退職の退職金は、次の通りです。従業員300人以上1,000人未満の企業と比べ平均値は少額ですが、従業員数が1,000人以上の企業と300人以上の企業の差額に比べると、差が大きくないことがわかります。

勤続年数 大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 高校卒(管理・事務・技術職) 高校卒(現業職)
平均 1,605万円 1,318万円 770万円
20~24年 930万円 645万円 396万円
25~29年 1,188万円 709万円 567万円
30~34年 1,546万円 876万円 877万円
35年以上 1,785万円 1,572万円 1,111万円

従業員30人以上100人未満の企業の退職金の平均額

従業員30人以上100人未満の企業の定年退職の退職金はデータ数が少ないため、平均額のみ紹介します。学歴による退職金額の差が大きいことがわかります。

大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 高校卒(管理・事務・技術職) 高校卒(現業職)
1,407万円 887万円 618万円

業種や企業規模、勤続年数による退職金の相場は?

オフィスワーカー

退職金の金額は業種や勤続年数によっても差があります。ここでは厚生労働省の外部機関である中央労働委員会のデータから、業種別・勤続年数別の退職金相場を紹介します。

業種別の退職金の相場は?

退職金の多い業種・少ない業種ではどの程度の差があるのでしょうか。以下は業種別の定年退職金額の平均です。退職金の多い業種と少ない業種では約2倍の差があります。

業種 退職金額
鉱業 2,121万円
製造業 1,901万円
建設 2,098万円
銀行・保険 879万円
私鉄・バス 1,937万円
海運・倉庫 1,106万円
電力 1,924万円
商事 2,053万円
新聞・放送 2,282万円
その他のサービス 921万円

参考:中央労働委員会「令和3年賃金事情調査」より

勤続年数別の退職金の相場は?

1社で新卒から定年まで勤めない場合、勤続年数による退職金にはどの程度差があるのでしょうか。以下は大学卒、事務・技術労働者、総合職の勤続年数別・退職事由別のモデル退職金額です。
勤続年数が5年以内では退職金はあっても金額はわずかですが、勤続年数が長くなるにつれて退職金額も右肩上がりに増えていきます。

勤続年数 年齢 自己都合 会社都合
3年 25歳 32万円 69万円
5年 27歳 59万円 118万円
10年 32歳 180万円 310万円
15年 37歳 387万円 578万円
20年 42歳 727万円 953万円
25年 47歳 1,143万円 1,394万円
30年 52歳 1,707万円 1,915万円
35年 57歳 2,163万円 2,365万円
38年 60歳 2,269万円 2,528万円
3年 25歳 32万円 69万円
定年 2,564万円

参考:中央労働委員会「令和3年賃金事情調査」より

退職金の支給方法は2種類ある

入金

退職金は退職時に一括で支給される一時金をイメージする人が多いでしょう。しかし、退職金には、企業年金のように分割で支払われる方式もあります。また、企業によっては、退職一時金と企業年金を併用している場合もあります。ここでは2種類の退職金の支給方法を解説します。

退職一時金制度

退職時に一括で支給される退職金を、退職一時金といいます。一般的に退職一時金の計算方法は、企業ごとに退職金規程で定められています。主な計算方法には以下の4種類があります。

  1. 定額制
  2. 基本給連動型
  3. 別テーブル型
  4. ポイント制

1.定額制

定額制の退職金は、勤続年数ごとに定額の退職金額が設定される方式です。基本給や役職などの要素に関係なく、勤続年数が長いほど受け取る退職金額が多くなります。定額制の退職金制度はシンプルでわかりやすく運用も簡単なため、小規模な会社がとりあえず退職金制度を導入したい場合などに適しています。

ただし、同じ時期に入社した社員の退職金額は同額になるため、やる気のある社員のモチベーションが下がるおそれがあります。

2.基本給連動型

基本給連動型は、退職時の基本給をベースに勤続年数や退職事由を反映して計算する方法です。最も多くの企業で導入されています。一般的には以下の計算式を用いて退職金額を算出します。

退職金額 = 退職時の基本給 × 支給係数(勤続年数ごとに設定) × 退職事由係数

退職事由係数は自己都合退職が減額されるように、自己都合と会社都合ごとに設定します。支給係数は勤続年数ごとにテーブルで設定される数値です。

基本給連動型は、給与が改定されると退職金額も変動します。給与の改定と同じタイミングで退職金の給付水準の見直しもすべきです。

3.別テーブル制

別テーブル制は基本給連動型と似た方式ですが、退職時の基本給ではなく、役職などに応じて変動する基準金額をベースに算出します。一般的な計算式は以下のとおりです。

退職金額 = 基準金額(役職などに応じて変動) × 支給係数(勤続年数ごとに設定) × 退職事由係数

支給係数と退職事由係数は、基本給連動型と同様に設定します。基準金額は、役職や職能などの要素を反映したテーブルで設定します。

4.ポイント制

ポイント制とは、企業が従業員に付与した退職金ポイントの累計によって退職金額が決まる方法です。ポイント制の一般的な計算式は以下のとおりです。

退職金額 = 退職金ポイント × ポイント単価 × 退職事由係数

ポイント単価が1万円の会社で、定年までに1,500ポイントを付与された人の退職金額は、1,500万円です(退職事由係数は1.0)。ポイント制は在職中の従業員の貢献度を退職金額に反映しやすいため、導入企業が増加傾向にあります。

企業年金制度(退職年金)

企業年金は退職後に退職金を年金形式で分割して支給する方式です。以下、主な企業年金制度を紹介します。

確定給付型企業年金

確定給付型企業年金とは、将来受け取る給付額が決められているタイプの企業年金です。年金の運用成績が悪く予定した給付金額に満たない場合、不足分は企業が補填しなければなりませんが、その分、従業員には受給権が保証されています。

近年は運用環境の悪化で、支給額不足に陥るケースが増えています。そのため、確定給付型企業年金は財務が安定している大企業または優良企業向けの制度です。

厚生年金基金

厚生年金基金は導入企業が国に代わって厚生年金の一部の給付を代行し、企業独自の上乗せ給付を行う制度です。

しかし、近年は運用環境が悪化し、多くの基金で代行部分に積立不足が生じたことが社会問題となりました。そのため、厚生年金基金の新設は認められなくなり、既存の基金も一部の健全運営の基金を除いて解散しています。

企業型確定拠出年金

企業型確定拠出年金は企業が拠出した掛金を従業員が自分で運用して、その成果を60歳以降に受け取る制度です。確定給付型企業年金と違い、企業は掛金を拠出するだけで給付に関する責任を負いません。

また、選択制確定拠出年金のように掛金の一部または全部を従業員が負担する制度設計も可能なため、中小企業でも導入しやすい企業年金です。

退職金(一時金)の手取り金額

手取り金

受け取った退職金には税金がかかります。年金で受け取る場合、公的年金などその他の所得と合算されて所得税・住民税がかかりますが、一時金は、他の所得とは別に退職金だけで税金を計算する分離課税という方式のため、ほかの所得と区別して課税されます。

ここでは、退職一時金の税金と手取りについて解説します。

退職所得控除について

退職一時金にかかる税金を求めるには、以下のように課税のもとになる課税退職所得金額を計算します。

課税退職所得金額 = (退職金の支給額 - 退職所得控除額)× 1/2

退職所得控除額は、勤続年数によって以下のように計算します。

  • 勤続20年以下の場合:退職所得控除=勤続年数×40万円(80万円に満たない場合は80万円)
  • 勤続20年超の場合:退職所得控除=(勤続年数-20)×70万円+800万円

勤続年数は1年に満たない端数がある場合、年単位に切り上げます。20年1ヶ月であれば、21年となります。

退職金手取りの計算例

退職一時金は、退職所得控除があるために給与など比べて手取りが多くなる仕組みです。支給額に対して手取りがどの程度かを試算してみましょう。所得税は課税所得金額に応じて以下の税率と控除額で計算します。住民税の税率は一律10%です。

課税所得金額 税率 控除額
1,000円~194万9,000円 5% 0円
195万円~329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円~3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

参考:国税庁「所得税の税率」より

1.勤続10年退職金800万円

勤続年数が10年で退職金の支給額が800万円の場合の退職金の手取り額を試算しましょう。

退職所得控除額=10年×40万円=400万円
課税退職所得金額=(800万円-400万円)× 1/2 =200万円
所得税=200万円 × 10%-9万7,500円 =10万2,500円
復興特別所得税=10万2,500円 × 2.1%=2,152円(小数点以下切り捨て)
住民税=200万円×10%=20万円
合計=10万2,500円+2,152円+20万円=30万4,652円
手取り額=800万円-30万4,652円=769万5,348円

2.勤続年数30年退職金2,000万円

勤続年数が30年で退職金の支給額が2,000万円の場合の退職金の手取り額を試算しましょう。

退職所得控除額=(30年-20年)×70万円+800万円=1,500万円
課税退職所得金額=(2,000万円-1,500万円)× 1/2=250万円
所得税=250万円×10%-9万7,500円=15万2,500円
復興特別所得税=15万2,500円× 2.1%=3,202円(小数点以下切り捨て)
住民税=250万円×10%=25万円
合計=15万2,500円+ 3,202円+25万円=40万5,702円
手取り額=2,000万円-40万5,702円=1,959万4,298円

勤務先の退職金制度を調べる方法

リサーチ

企業に退職金制度が導入されている場合、労働基準法により就業規則に以下の内容を明示することが義務づけられています。

  • 退職金の支給対象となる従業員の範囲
  • 退職金の決定、計算、支払いの方法
  • 退職金支払いの時期

就業規則は、従業員が随時閲覧できるように備え付けることが義務づけられています。最近では冊子だけでなく、サーバー上に設置している会社もあります。就業規則の設置場所や内容がわからない場合は、人事や総務などの担当部署に問い合わせましょう。

個人で退職金を上乗せする3つの方法

積立

勤務先に退職金制度がない場合、自力で老後資金の不足分を準備しなければなりません。通常、老後資金は数十年の時間をかけて準備するため、物価上昇の影響を受けやすい点(インフレリスク)に注意が必要です。

ここでは、老後資金準備の方法を3つ紹介します。3つの方法の併用も可能なので、それぞれの特徴を知って効果的な活用を考えましょう。

1.財形貯蓄

勤務先に財形貯蓄制度がある場合、老後資金準備に利用できます。財形貯蓄は給与や賞与から天引きされるため、貯蓄が苦手な人でも計画的な貯蓄が可能です。積み立てる商品は引受ける金融機関が銀行であれば預貯金、保険会社であれば貯蓄タイプの保険など異なります。

財形貯蓄には「一般財形」「住宅財形」「年金財形」の3種類があります。老後資金を準備する場合、「一般財形」と「年金財形」の活用が考えられ、それぞれの概要は以下のとおりです。

一般財形 年金財形
対象者の年齢 年齢制限なし 55歳未満
目的 制限なし 老後の生活資金
積立期間 3年以上 5年以上
受け取り 随時 60歳以降、5年以上20年以内の期間で年金受け取り
税制 利息は20.315%の源泉分離課税 住宅財形と合わせて元利合計550万円まで(預貯金の場合)が非課税

財形貯蓄では、利用している従業員に補助金を給付する企業もあります。ただし、長引く超低金利のために年金財形の非課税メリットはほとんどなくなっています。老後資金準備に利用するなら自由度の高い一般財形のほうが使い勝手がよいといえます。

いずれにしても財形貯蓄では将来のインフレリスクに対応できないため、iDeCoやつみたてNISAとの併用も検討しましょう。

2.iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は公的年金の上乗せ制度です。先述した企業型確定拠出年金は勤務先が掛金を負担するのに対し、iDeCoは加入者個人が掛金を支払います。iDeCoの主な内容は以下のとおりです。

最低投資額 毎月5,000円から
年間投資上限額 加入資格によって14万4,000円から81万6,000円
投資対象 定期預金・貯蓄型保険などの元本確保型商品と投資信託
税制 ・掛金は全額所得控除の対象
・運用益は非課税
・受け取り時(年金または一括)も所得控除の対象
受け取り 原則として60歳まで不可

iDeCoには老後資金準備という明確な目的があるため、60歳までの引き出しができません。しかし、手厚い税制優遇があるため、無理のない積立額でコツコツ積立てていくとよいでしょう。

3.つみたてNISA

つみたてNISAはNISA(少額投資非課税制度)の一種で、積立投資の運用益に課税されない制度です。つみたてNISAの概要は以下のとおりです。

最低投資額 金融機関によって異なるが、月100円から可能な場合も
非課税投資枠 年間40万円
非課税期間 最長20年
投資対象 金融庁が選定した長期・積立・分散投資に適した投資信託・ETF
受け取り 途中引き出しは自由

つみたてNISAの資産の利用目的は自由ですが、長期の資産形成が前提の制度であり、老後資金準備に適しています。途中の引き出しに制限がないため、資金が必要になったときも安心です。

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ライフプランや資金計画に不安がある場合、プロであるFP(ファイナンシャルプランナー)への相談がおすすめです。
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まとめ:自社の退職金制度を確認し、老後の生活設計を立てよう

退職金の支給額には企業規模や業種、勤続年数で大きな開きがあります。また、老後資金の不足分の準備を短期間で行うのは難しい場合があります。なるべく早い時期に、自社の退職金制度の内容と自分の受け取る退職金の見込額を確認しましょう。退職金や公的年金の見込額から大まかな老後資金の不足分をつかみ、できるだけ早くから準備を始めると無理なく資産形成ができるでしょう。

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執筆者
松田聡子
ファイナンシャルプランナー
明治大学法学部卒業後、証券システムのITエンジニア、国内生保の法人コンサルティング営業を経て2007年よりファイナンシャル・プランナーとして独立。コンサルティングのほか、主な活動は企業型確定拠出年金導入企業へのセミナー講師、マネーサイトへの執筆など。年金・資産運用・保険などに精通、iDeCoやNISAなどの制度を活用した人生100年時代の資産形成をアドバイスしている。