退職金は規定がないと貰えないのか。規定があっても貰えない場合も

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会社を辞めたら当然退職金が貰える。これは間違いです。会社は必ず退職金を支払う義務がある訳ではないからです。

退職金の規定がない場合は、会社は退職金を支払う義務はありません。

退職金の規定があっても、懲戒解雇など退職の理由によっては、退職金が不支給となったり、減額されたりする場合があります。

退職金や確定拠出年金など、定年前後のお金の仕組みは複雑です。
一人ひとりの状況によって最適な節税方法は変わるため、個人の判断で進めると大損しかねません。

そのため、お金を損しないポイントはおさえておきつつ、実際に退職するタイミングが近づいたら専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談することをおすすめします。

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  • 【この記事を読んでわかること】
  • 労働契約、労働協約、就業規則に退職金の規定があれば会社に支払義務がある
  • 著しい背信行為があれば、退職金を不支給とする規定で、退職金がゼロになる
  • 退職金不支給の規定がなくとも、労働者の請求が権利濫用となるケースがある

労働契約の内容でなければ退職金支払義務はない

書類にサインをするペン

使用者が労働者に退職金を支払わなければならないと定めた法律は存在しません。

労働者が使用者の指揮命令にしたがって労働義務を負うのは、それが労働契約の内容だからです。反対に使用者が給与や賞与などの賃金支払義務を負うのも、それが労働契約の内容だからです。

同様に、使用者が退職金を支払うことが、労働契約の内容となっていない限り、使用者は退職金を支払う義務を負いませんし、労働者も退職金の支払いを請求することはできません。

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退職金支払義務は労働契約、就業規則、労働協約で定められる

お札を保有している手の画像

そこで退職金支払義務があると言えるには、労使の合意によって労働契約に定められている必要があります。

ただし、個々の労働者が締結した労働契約の契約書に記載がなくとも、労働組合と使用者が締結した労働協約や、使用者が定めた就業規則に、退職金を支払う旨の条項が定められているなら、やはり使用者には支払義務があります。

なぜなら労働契約の内容が、労働協約や就業規則に違反している場合、その労働契約は無効となり、これに代わって、労働協約や就業規則に定められた内容が、労働契約の内容となるからです(労働組合法第16条、労働基準法93条、労働契約法12条)。

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規定が明確な退職金は「賃金」である

100ドル札の束

「賃金」とは、使用者が労働者に支払う「労働の対償」です(労基法11条)。これは、その金銭の名称の如何を問いません。

労働の対償とは、労働義務の対価という意味です。

たとえば慶弔禍福の給付金(結婚祝、病気見舞、弔慰金など)は、会社側が任意に給付するものであれば、たんなる「任意的恩恵的」なものに過ぎず、労働の対償ではありません。

しかし、これら慶弔禍福の給付金も、労働契約(労働協約、就業規則を含む)で支給条件や内容が明確化され、会社側に支払義務があれば、やはり労働の対償として賃金に含まれます。

同様に退職金も、労働契約(労働協約、就業規則を含む)の規定によって、使用者に支払い義務が認められるときは、労働の対償ですから、賃金に含まれます。

逆に、そのような規定がなく、経営側の自由な判断で支払われる金銭は、その名称が「退職金」であっても、賃金ではありません。

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公序良俗に反する退職金の規定は無効

話し合いをしている人達

退職金を支給するか否か、支給する場合の条件や金額は、労働契約(労働協約、就業規則を含む)によって定まります。現実に、多くは退職金規定として定められています。

ただ、どのような規定でも有効な訳ではなく、公序良俗(民法90条)に違反する内容は無効です。

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懲戒解雇で退職金を減額する規定も有効

書類にサインをする人

退職金の規定に、懲戒解雇の場合は退職金の全部・一部を支給しないと定めるケースは珍しくありません。退職金没収条項(退職金不支給条項、退職金減額条項)などと呼びます。

退職金は、賃金とはいえ、通常、算定基礎賃金に勤続年数別の支給率を乗じて算定されるので、経済的には「賃金の後払い」の性格を有します。

他方、退職金は一般に退職理由(自己都合・会社都合)や勤務成績を考慮し、退職時の基本給を算定基礎賃金に、支給率も勤続年数に応じて累進する取扱いですから、「功労報償」としての性格も否定できません。

たんなる「賃金の後払い」ではなく、「功労報償」でもあることから、事情によっては退職金を不支給・減額できる退職金没収条項は公序良俗違反ではないとされています。

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退職金の不支給・減額規定の適用は著しい背信行為に限定される

鳥かごの中のお金

退職金没収条項の規定は有効でも、その規定を具体的に適用できる場面は無制約ではありません。

退職金の不支給・減額は労働者にとって大きな不利益ですし、退職金は「過去の功績」をも含めた「功労報償」なので、懲戒解雇事由さえあれば、直ちに退職金を不支給・減額できるとするのは不合理です。

そこで退職金没収条項を適用できるのは、それまでの功労を全部抹消(または一部減殺)してしまうほどの著しく信義に反する行為があったときに限定されます。

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退職金の不支給を認めなかった裁判例

裁判の書類にサインをする人

A社営業所の責任者Bらが、突然に退職届を提出した事件です。A社は退職金を不支給としたので、Bらが提訴しました。

A社側の主張は、Bらは営業所の運営を放置し、残務整理もせず、後任者に何らの引継もしなかった。後任者は途方にくれて営業所の運営は停滞し、A社に多大の損害が生じた。職場放棄であり、永年勤続の功労を抹消する不信行為だから、退職金の支払義務はないというものです。

しかし、裁判所は、仮にA社側の主張どおりの行為がBらにあっても、非難されるべきではあるものの、末だ永年勤続の功労を抹消するほどの不信行為とは言えないないとし、退職金の支払義務を認めました。

参考:日本高圧瓦斯工業事件(大阪高裁昭和59年11月29日判決)

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退職金の不支給を認めた裁判例

裁判所の判決をイメージした画像

カラオケ設備レンタルなどを業務とするA社の労働者Bら6名が一斉に無断退職した事件です。A社は懲戒解雇とし、退職金も不支給としたので、Bらが提訴しました。

退職金規定には、①懲戒解雇者には退職金を支給しない、②退職の手続き、業務の完全な引き継ぎをせず退職した場合は退職金の減額・不支給があると規定されていました。

裁判所は次の事実を認定しました。

  • Bらは、A社に事前の連絡なく一斉に退社し、後任者に引き継ぎもせず、本社営業部と新宿支店の機能を麻痺させ、大混乱に陥らせた
  • しかもBらは、会社が麻痺・混乱の事態となることを認識していた
  • 無断で在庫商品を運び出したり、PC内の顧客台帳やリース台帳などのデーターをコピーして持ち出したり、消去したりした
  • これらによってA社に多大な損害を与えた

裁判所は、Bらの行為は、それまでの功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為と評価し、退職金の請求を認めませんでした。

参考:日音事件(東京地裁平成18年1月25日判決)

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退職金の7割減額を認めた裁判例

駅で電車を待つ女性

A鉄道会社の職員Bは、電車での痴漢で検挙歴が3回あり、4回目には逮捕され罰金刑を受けたものの、会社側からは昇給停止・降職の処分にとどめられ、やり直しの機会を与えられていました。それにもかかわらず、半年後に5回目の痴漢で逮捕、起訴されました。

A社はBを懲戒解雇し、退職金不支給条項を適用したので、Bが提訴しました。

裁判所は、痴漢は軽微な犯罪ではなく、A社が会社と従業員をあげて痴漢撲滅運動に取り組んでいたのに、Bは痴漢を繰り返していたなどとして、懲戒解雇は相当としました。

しかし、退職金の不支給は別の検討が必要として、次の諸点を指摘しました。

  • 痴漢は会社の業務とは関係ない私生活上の非行だった
  • 過去にA社は、業務上の金銭着服という会社への直接的な背信行為をした者でも退職金の一部を支給したことがある
  • Bは20年余り真面目な勤務態度で、資格取得など職務能力向上の努力もしていた
  • 犯行は社外に漏れず、A社の評価や信用を低下させる具体的な実害はなかった

以上の諸点から、Bの行為には過去の功労を「全部」抹消してしまうほどの強度の背信性はないとして、退職金の3割の支払いを認めました。

参考:小田急電鉄事件(東京高裁平成15年12月11日判決)

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転職による退職金減額の規定も有効

面接を受けている様子

同業他社へ転職するときは、退職金を半分に減額するとの規定も珍しくありません。

ライバル社への転職が、営業上の打撃となるケースは少なくないので、これを抑止するため、企業防衛上やむを得ない必要性があります。

退職金の「功労報償」という面からも、同業他社への転職は、功労を減殺するものと評価されても仕方ない場合もあり得ます。

このため、このような減額の規定も公序良俗に違反しないと理解されています。

ただ、職業選択の自由を制約するので、退職後ある程度の期間内に同業他社へ転職する場合に限って有効性を認めるべきとされています。

 参考:三晃社事件(最高裁昭和52年8月9日判決)

また適用にあたっては、期間内に転職した事実だけでなく、諸般の事情を総合考慮するべきとした裁判例もあります。

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諸事情を総合考慮し同業他社への転職による退職金不支給を否定した裁判例

転職で面接を受けている様子

広告代理業のA社は、就業規則に「退職後6か月以内に同業他社に就職した場合には退職金は支給されない」と定めており、これに違反した労働者Bへの退職金支払いを拒否したのでBが提訴しました。

裁判所は、不支給が認められるのは、たんに退職者が6か月以内に競業する業務に携わったのみでは足りず、顕著な背信性がある場合に限るとしました。

その判断にあたっては、不支給条項の必要性、退職の経緯・目的、競業業務への従事により会社が被った損害などの諸般の事情を総合的に考慮すべきとし、この事案では、そのような背信性はないとしました。

参考:中部日本広告社事件(名古屋高裁平成2年8月31日判決)

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退職金の規定を会社が一方的に変更して不支給とすることは認められない

お札を手にしている人

退職金支払義務を定めた就業規則などの規定を、会社が一方的に、労働者に不利益に変更することは許されません。

このような変更は原則として無効であり、労働者は従前の規定に基づく退職金を請求できます。

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会社による退職金規定の一方的な変更を無効とした裁判例

倉庫で働く労働者

労働者Bは、1967年、建築材料販売業A社に入社し、2000年3月に退職しました。就業規則には、勤続年数と支給率に応じた退職金を支給する定めがあったので、Bは33年間の勤続に適用される退職金の支払を求めました。

ところがA社は、1999年4月に就業規則を改定し、退職金支給は「経営状態に著しい変化が生じた時は別途取締役会において個別決定する」との条項を加え、経営状況が厳しく、2000年7月にはBの退職金不支給を取締役会で決定したので、退職金支払義務はないと主張しました。

裁判所は、就業規則の不利益変更は高度の必要性に基づく合理的な内容でなければ無効だとし、次の各事実から無効な変更と断じて退職金の支払を命じました。

  • 退職金の不支給が収益改善に不可欠なのか不明
  • ほかの退職者には支給しており、恣意的な不平等を招来
  • 代償措置・緩和措置の設定や、ほかの労働条件を改善した事実もない
  • 組合や従業員代表者の意見を聴取しておらず改訂手続にも正当性がない

参考:ドラール事件(札幌地裁平成14年2月15日判決)

就業規則の不利益変更は合理的な内容でなくてはならない旨は労働契約法(第9条、第10条)に定められていますが、この裁判例は労働契約法制定前で、同法のベースとなった最高裁判例の考え方にしたがって変更の有効性を判断したものです。

参考:秋北バス事件(最高裁昭和43年12月25日判決)

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労働者の退職金請求が権利濫用として認められないケースも

お札の上に置かれたガベル

①退職金支給の規定だけがあって退職金没収・減額条項がないケース、②退職金没収・減額条項があっても、在職中の背信行為が退職後に発覚したため、懲戒解雇とできなかったケースがあります。

これらの場合、退職金没収・減額条項を適用できませんが、まだ退職金を支払っていない場合に、著しい背信行為をした退職者からの請求を認めることは明らかに信義に反します。

そこで、このようなケースでは、退職者からの請求が権利の濫用として認められません。

背信行為のあった退職者からの退職金請求を認めなかった裁判例

オフィスで仕事をしている男性

ピアス事件(大阪地裁平成21年3月30日判決・労働判例987号60頁)

すでにA社を退職した労働者Bには、同社の退職金規定によって退職金が支給される筈でした。

ところが、Bは在職中にもかかわらず、A社と競業する会社を設立して、その取締役となったり、A社の営業上の秘密である美容技術を提供するなど、重大な背信行為を行っていた事実が、Bの退職後に発覚しました。

そこで、会社は懲戒解雇の場合は退職金を支給しないとの規定に基づいて、これを不支給としました。

しかし、Bは、自分はすでに退職している以上、懲戒解雇はできないのだから、退職金不支給条項を適用できないと主張し、退職金の支払を求めました。

裁判所は、退職金不支給条項を適用できないとしても、在職中に著しい背信行為を行ったBの退職金請求は権利の濫用として請求を認めませんでした。

まとめ

退職金の有無、その金額は、就業規則などの規定によって決まります。

退職を考えている方、定年が近づいている方は、退職金の規定を読み直してみることをおすすめします。

CTACTA

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執筆者
望月則央
著述業/法律解説・監修
弁護士として20年にわたり、労働事件、一般民事、交通事故、債務整理、相続問題など、様々な事件の弁護を担当。特に刑事事件の経験は豊富。現在は各種法律記事の執筆・監修を行う。早大法学部卒。