複数の退職金の退職所得控除の計算とお得に受け取る方法を解説
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退職金にかかる税金の計算では、支給額から退職所得控除を差し引くなどのルールがあり、所得税があまりかからないように配慮されています。
しかし、複数回の退職金の受け取りには退職所得控除の調整をする決まりがあります。
本記事では、複数の退職金を受け取る場合の所得税の計算方法と、有利な受け取り方法を解説します。
退職金や確定拠出年金など、定年前後のお金の仕組みは複雑です。
一人ひとりの価値観や状況によって最適な方法は変わるため、個人の判断で進めると大損しかねません。
そのため、お金を損しないポイントはおさえておきつつ、実際に退職するタイミングが近づいたら専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談することをおすすめします。
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- 【この記事を読んでわかること】
- 退職金は退職所得控除があるためにかかる税金が少ない仕組みになっている
- 退職金を複数回受け取る場合には退職所得控除が調整される場合がある
- 前の退職金受け取りから5年経過すれば退職所得控除が調整されない
退職金の所得税の計算方法
はじめに退職金(一時金)の所得税を計算する方法を解説します。
退職所得と所得税の計算
退職一時金の所得は税法上、退職所得に該当します。退職所得の所得税の計算はほかの所得と合計せずに、退職所得単独で計算します(分離課税)。
退職所得の計算のもとになる課税退職所得金額の計算式は以下のとおりです。
上記の式で求めた課税退職所得金額に以下の税率を掛け、控除額を差し引くと所得税が求められます。
課税退職所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
参考:国税庁「退職金と税」
退職所得控除
退職金支給額から差し引く退職所得控除額は勤続年数によって以下の計算式で求めます。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
参考:国税庁「退職金と税」
勤続年数の端数は1年として計算します。たとえば勤続20年1ヶ月であれば、21年となります。また、求められた金額が80万円に満たない場合の退職所得控除額は80万円です。
退職所得控除額は勤続年数が長いほど大きくなるため、同じ支給額なら勤続年数の長い人の手取りのほうが多くなります。
退職金にかかる所得税の計算例
勤続年数30年で退職金支給額2,000万円の場合の退職金にかかる所得税を計算してみましょう。
① 退職所得控除額を計算する
② 課税退職所得金額を計算する
③ 所得税を計算する
復興特別所得税 = 15万2,500円 × 2.1% = 3,202円(1円未満切り捨て)
合計 = 15万2,500円 + 3,202円 = 15万5,702円
勤続年数30年では、2,000万円の退職金にかかる所得税は15万5,702円となります。
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同じ年に2ヶ所以上から退職金を受け取る場合
退職金を複数の会社から受け取る人は少ないかもしれません。しかし、勤務先に退職一時金と企業年金がある場合などは、退職金が同じ年に2ヶ所以上から支払われる可能性があります。このように同じ年に退職金が2回以上支払われる場合は、退職金を支払う勤務先は支払い済みの退職金分の調整を行わなければなりません。
退職する人は事前に「退職所得の受給に関する申告書」を、受け取り済の退職金の源泉徴収票を添えて提出します。「退職所得の受給に関する申告書」には、受け取り済の退職金に関する以下の情報を記載します。
- 受け取り済みの退職金の支払者の名称
- 退職金支給額
- 源泉徴収税額
- 支払い年月日
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所得税の計算方法
同じ年の2回目以降の退職金の所得税の計算方法は、以下のとおりです。
退職金支給額を合算
同じ年度で2回目以降の退職金を支払う勤務先は、他社で支払い済みの退職金等の額と今回の退職金等の額を合算し、退職金支給総額を求めます。
退職所得控除を計算
退職所得控除の勤続年数は、複数の勤続期間中の最も長い期間の勤続年数を適用します。ただし、最も長い期間以外に重複していない期間がある場合、勤続年数にその部分の期間を加算することに注意が必要です。求めた勤続年数をもとに退職所得控除額を算出します。
所得税の総額を計算
同じ年に支給された退職金の総額と退職所得控除額を用いて、全体にかかる所得税を計算します。その税額から支払い済みの退職金から源泉徴収された所得税額を差し引いた金額が、今回の退職金分の所得税額です。
計算例
A社とB社に勤務していた人が同じ年に退職し、双方から退職金を受け取ったケースの退職金にかかる所得税を計算してみましょう。それぞれの勤続年数と退職金は以下のとおりです。なお、「退職所得の受給に関する申告書」は提出しているものとします。
勤務期間 | 勤続年数 | 退職金支給額 | |
---|---|---|---|
A社 | 1995年4月1日~ 2022年3月31日 | 27年 | 2,000万円 |
B社 | 2000年4月1日~ 2022年9月30日 | 22年6ヶ月(23年) | 500万円 |
A社からの退職金の所得税を計算
A社から支給された退職金にかかる所得税は以下のように計算します。
① 退職所得控除額を計算する
② 課税退職所得金額を計算する
③ 所得税を計算する
復興特別所得税 = 28万2,500円 × 2.1% = 5,932円(1円未満切り捨て)
合計 = 28万2,500円+ 5,932円 = 28万8,432円
B社からの退職金の所得税を計算
① 退職金支給額を合算する
② 退職所得控除額を計算する
A社とB社の勤続期間は、27年 > 23年で、長いのは27年です。ただし、両期間のうちB社の2022年4月1日から2022年9月30日までは重複しておらず、加算可能です。よって、勤続年数は28年として計算します。
③ 課税退職所得金額を計算する
④ 所得税を計算する
復興特別所得税 = 71万2,500円 × 2.1% =1万4,962円(1円未満切り捨て)
合計 = 71万2,500円+ 1万4,962円= 72万7,462円
⑤ A社で源泉徴収された所得税を差し引く
B社からの退職金にかかる所得税は43万9,030円となります。
▼退職金と税金について詳しく知りたい方はこちら
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退職金を複数回受け取る場合
複数の退職金を同じ年に受け取らなくても、前年4年以内にほかの退職金を受け取っている場合には退職所得控除の調整が必要なケースがあります。前年4年以内とは2022年に退職金を受け取るなら、2018年までにほかの退職金がある場合です。そして、調整が必要となるのは、各勤務先の勤務期間に重複があるケースです。
前の退職金を受け取ってから5年以上経つと退職所得控除に調整がかからなくなり、所得税が少なくなります。
ほかの退職金の有無の調べ方
退職する人は事前に「退職所得の受給に関する申告書」の提出が必要です。「退職所得の受給に関する申告書」の「前年以前4年内に退職手当等の支払を受けたことがある場合」の欄に必要な情報を記載します。退職金の支払者はこの欄の情報をもとに退職金の源泉徴収税額を計算します。
所得税の計算方法
前年4年以内にほかの退職金を受け取っていて、勤続期間に重複がある場合の、退職金にかかる所得税の計算方法は以下のとおりです。
重複期間を勤続年数とした退職所得控除額を算出
重複期間分の退職所得控除を調整するため、重複している年数を勤続年数とした退職所得控除額を計算します。
退職所得控除額を計算
今回の退職所得控除額から、上記で求めた調整分の退職所得控除額を差し引いた退職所得控除額を計算します。
所得税額を計算
今回支給された退職金額から調整後の退職所得控除額を使用して、所得税額を算出します。
計算例
このケースは少しわかりにくいので、事例で確認してみましょう。
A社とB社に勤務していた人が別々の年に両社を退職し、双方から退職金を受け取ったケースです。A社からの退職金を受け取った後のB社からの退職金にかかる所得税を計算してみましょう。それぞれの勤続年数と退職金は以下のとおりです。なお、「退職所得の受給に関する申告書」は提出しているものとします。
勤務期間 | 勤続年数 | 退職金支給額 | |
---|---|---|---|
A社 | 1995年4月1日~ 2022年3月31日 | 27年 | 2,000万円 |
B社 | 2000年4月1日~ 2023年9月30日 | 23年 | 500万円 |
重複期間の所得控除の調整額を計算
A社とB社に重複して勤務していたのは2000年4月1日から2022年3月31日までの22年間です。
B社の退職所得控除額と調整後の金額を計算
B社での勤続23年分の所得控除額から上記の調整額を差し引きます。
調整後の退職所得控除額 = 1,010万円 - 940万円 = 70万円
B社の退職金の退職所得控除額は70万円となります。
所得税を計算する
所得税 = 215万円 × 10% - 9万7,500円 = 11万7,500円
復興特別所得税 = 11万7,500円 × 2.1% = 2,467円(1円未満切り捨て)
合計 = 11万7,500円+ 2,467円 = 11万9,967円
B社の23年分の退職所得控除額は1,010万円であり、支給額の500万円を上回っています。つまり、退職所得控除の調整がなければ所得税はかからないわけです。退職時期が近かったために課税される結果となりました。
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確定拠出年金(iDeCo含む)の一時金の受け取り
複数の退職金を受け取る場合の片方の退職金が確定拠出年金(iDeCo含む)の場合も、重複期間があると上述のような退職所得控除の調整を行います。
確定拠出年金の退職所得控除対象期間のルール
確定拠出年金を一時金で受け取る場合の退職所得控除の勤続年数は、加入年数を勤続年数とします。確定拠出年金の加入期間が、会社に勤続していた期間と重複する場合は先述した退職所得控除の調整を行います。ただし、先に勤務先の退職一時金を受け取って、後から確定拠出年金を受け取るケースでは調整対象期間が異なるため、注意が必要です。
確定拠出年金を先に受け取るケース
前年4年以内に確定拠出年金を受け取っていて、確定拠出年金の加入期間と勤務先の勤続期間に重複がある場合、退職一時金にかかる退職所得控除は先述したとおりに調整します。確定拠出年金を一時金で受け取り、5年経過してから勤務先からの退職金を受け取れば退職所得控除の調整の必要はありません。
退職一時金を先に受け取るケース
一方、先に勤務先から退職一時金を受け取ってから、19年以内に確定拠出年金の一時金を受け取ると退職所得控除額の調整が行われます。確定拠出年金でなければ過去4年以内のところ、確定拠出年金では調整対象期間が19年となってしまうのです。確定拠出年金を退職一時金より4年より先に受け取るケースはあまりなく、ほとんどの場合は退職一時金との退職所得控除の調整が必要になると考えられます。
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まとめ
退職金の計算で用いられる退職所得控除は、退職金にかかる税金を少なくするために有効な仕組みです。しかし、退職金を何回も受け取る人が退職所得控除を受け取る場合には、調整がかかるように配慮されています。前回の退職金受け取りから5年以上経過していれば退職所得控除に調整がかかりません。退職金受け取り時期を調整できる人は、退職所得控除を考慮して受け取り時期を決めるとよいでしょう。
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老後資金2,000万円問題に代表されるように、老後の生活費はひとりあたり数千万円が必要と言われています。
漠然とした不安を抱えるのは辛いものです。まずは現状を把握し、どのような対策が必要なのかを相談してみましょう。
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