定年退職後の国民年金加入手続きはどうなる?ケース別や被扶養者の手続きも解説
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会社員として働いているうちは、会社が年金の手続きを行うため、年金の手続きについて詳しく知っている人は少ないでしょう。
しかし勤め先の会社を定年退職してしまうと、ご自身で年金の手続きをしなければならないケースがあります。
そこで年金の手続きについて、新たに加入する年金制度別に、どこでいつまでに行うのか解説します。
年金や退職金をはじめとした、定年前後のお金の仕組みは複雑です。
一人ひとりの状況によって最適な節税方法は変わるため、個人の判断で進めると大損しかねません。
そのため、お金を損しないポイントはおさえておきつつ、実際に退職するタイミングが近づいたら専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談することをおすすめします。
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- 【この記事を読んでわかること】
- 定年退職後に再就職して厚生年金保険に加入する場合は、会社が手続きを行う
- 国民年金に加入するケースでは、自分自身で手続きが必要となる
- 国民年金や厚生年金に任意加入することで、受給資格を満たせる制度がある
- 年金の切り替え手続きをしなかった場合、未納期間として処理される
定年退職後の年金手続きは、自身の年齢に着目
退職後の年金手続きは、新たに加入する年金制度によって異なります。そしてどの年金制度に加入するのかは、自身の年齢と今後のライフプランによって異なります。 ライフプランは、大きくわけると次のとおりです。
- 再就職や自営業での就労をしない
- 会社員として厚生年金の適用事業所に再就職する
- 自営業やフリーランスとして働く
定年退職後に必要となる年金手続きを考えるには、まず自身の年齢に着目し、次に想定している今後のライフプランを選択しましょう。この二つが明確になることで、どの年金制度に加入するのかが決まり、続いて必要となる年金手続きも決まります。手続きは大きくわけると次のとおりです。
(B)国民年金保険に任意加入する
(C)厚生年金保険に任意加入する
次章では、自身の年齢及びライフプランから、(A)~(C)のうち、どのグループに該当するかをチェックしながら読み進めてください。
60歳以上64歳の年金手続き
①再就職や自営業での就労をしない場合
手続きは原則として必要ありません。ただし、20歳以上60歳未満のあいだに未納期間があるなどの理由で、国民年金の納付月数が480か月(40年)に達しない人は任意加入制度を利用し、年金の受け取り額を増やすことができます。国民年金の任意加入を希望する場合には、(B)国民年金保険に任意加入するケースに該当します。
②会社員として厚生年金の適用事業所に再就職する場合
厚生年金は70歳まで加入しなければなりません。したがって、(A)厚生年金保険に加入するケースに該当します。
③自営業やフリーランスとして働く場合
国民年金は20歳以上60歳未満の人に加入の義務があるため、60歳以上64歳未満の人は加入する義務はありません。ただし、①のケースと同じように、納付月数が480か月(40年)未満の人は任意加入制度を利用し、年金の受け取り額を増やすことができます。国民年金の任意加入を希望する場合には、(B)国民年金保険に任意加入するに該当します。
65歳以上69歳の年金手続き
①再就職や自営業での就労をしない場合
手続きは原則として必要ありません。ただし65歳までに老齢基礎年金の受給資格期間を満たせない場合で、昭和40年4月1日以前生まれの人に限り加入できる特例任意加入制度が用意されています。国民年金の特例任意加入を希望する場合には、(B)国民年金保険に任意加入するに該当します。
②会社員として厚生年金の適用事業所に再就職する場合
厚生年金は70歳まで加入しなければなりません。したがって、(A)厚生年金保険に加入するケースに該当します。
③自営業やフリーランスとして働く場合
①再就職や自営業での就労をしない場合のケースと同じ考え方をします。65歳までに老齢基礎年金の受給資格期間を満たせない場合で、昭和40年4月1日以前生まれの人に限り特例任意加入制度を利用できます。国民年金の特例任意加入を希望する場合には、(B)国民年金保険に任意加入するに該当します。
70歳以上の年金手続き
①再就職や自営業での就労をしない場合
手続きは原則として必要ありません。70歳未満の人には設けられていた任意加入制度や特例任意加入制度もありません。
②会社員として厚生年金の適用事業所に再就職する場合
70歳以上の人には厚生年金の加入義務がありません。厚生年金保険では70歳になると資格を喪失しますが、70歳以上になっても老齢年金の受給資格期間を満たしていない人で、会社に勤めている人は受給資格期間を満たすまで、「高齢任意加入被保険者」として厚生年金保険に任意加入できます。(C)厚生年金保険に任意加入するケースに該当します。③自営業やフリーランスとして働く場合手続きは原則として必要ありません。
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新たに加入する年金制度によって手続きは異なる
自身の年齢と今後のライフプランから該当するグループが明らかにできれば、新たに加入する年金制度が決まります。以下の説明が、先ほど提示した(A)~(C)のグループ別に必要な手続きです。
基本的には、厚生年金に加入するのか、国民年金に加入するのか、加入する制度によって異なります。厚生年金保険に加入するのであれば年金の加入手続きを行うのは事業主ですし、国民年金に加入するのであれば、住所地の市区町村役場において自身で手続きを行う必要があります。
(A)厚生年金保険に加入するケース
厚生年金制度がある会社へ就職したときは、事業主が厚生年金の加入手続きをします。事業者に「基礎年金番号通知書」もしくは「年金手帳」を提出して、厚生年金の切替え手続きを行います。会社側で厚生年金加入の手続きをすれば、国民年金も資格喪失となります。そのため、市役所等での手続きは必要ありません。
定年退職後も再就職をして厚生年金に加入したとすると、再就職先の企業で厚生年金保険料を納付することになります。自身の体力や体調に応じて働く期間が延びれば、将来的に受給できる老齢厚生年金の額を増やすことができます。
(B)国民年金保険に任意加入するケース
国民年金保険に任意加入する手続きは、任意加入制度を利用するケースだけでなく特例任意加入制度を利用するケースも同様です。
手続きの場所は住所地の市役所や市区町村役場で、「基礎年金番号通知書」や「年金手帳」など基礎年金番号がわかるものを準備し、本人が出向く必要があります。本人確認ができるもの(例:マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)が必要です。保険料の額は毎年度変動しますが、令和4年の保険料は月額16,590円です。
(C)厚生年金保険に任意加入するケース
70歳以上になっても老齢年金の受給資格期間を満たしていない人で、「高齢任意加入被保険者」として厚生年金保険に任意加入を希望する人は、事業所の所在地を管轄する年金事務所で本人が手続きを行います。自身の住所地ではなく、勤務先の事業所の所在地となっているので注意しましょう。
「基礎年金番号通知書」や「年金手帳」など基礎年金番号がわかるもの、生年月日に関する市町村長の証明書または戸籍抄本、履歴書などを添え「厚生年金保険高齢任意加入被保険者資格取得申出書」を届け出ます。保険料の納付手続きも自身で行い、原則として保険料は全額自己負担です。ただし事業主が同意した場合には、事業主が保険料の半額を負担し納付の手続きを行うことができます。
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被扶養者の手続き
これまで会社に勤めていた人が退職後、「再就職をしない」「自営業をする」などのライフプランを選択した場合、厚生年金保険の被保険者ではなくなります。そして60歳以上であれば国民年金に加入する義務もないため、定年退職される本人については、基本的に国民年金に加入する手続きは必要ありません。
しかし60歳未満の専業主婦(夫)がいる場合は注意が必要です。専業主婦(夫)の人は、定年退職される人の被扶養者ではなくなるため、国民年金保険料を60歳になるまで支払わなければなりません。
加入するときは住所地の市区町村役場に出向き、国民年金の加入手続きをします。手続きの期限である退職日の翌日から14日以内に、「基礎年金番号通知書」など基礎年金番号がわかるものを準備して、本人または世帯主が手続きを行います。
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年金の切り替え手続きをしなかったらどうなるの?
60歳以上で定年退職した人が手続きを必要とするのは、(B)国民年金保険に任意加入するケース、(C)厚生年金保険に任意加入するケースだけです。したがって多くの人が、自身で手続きをする必要はありません。
問題となりやすいのは、60歳未満の専業主婦(夫)がいる場合です。サラリーマンの夫(妻)の被扶養者だった60歳未満の人は国民年金保険に加入する義務があります。年金の切り替え手続きを怠り、国民年金保険料を納付しないと、未納期間として処理されます。
将来の受け取る年金額が減ってしまう
年金は支払った期間が長いほど、受け取る年金額が増える仕組みです。2022年度の国民年金の老齢基礎年金は、満額で77万7,792円です。満額とは40年間(12ヶ月×40年間=480ヶ月)全期間の保険料を納めた方が受け取る年金額です。たとえば、納付した期間が30年間で未納期間が10年あるならば、納付した期間は360ヶ月/480ヶ月=3/4です。この割合を反映し、77万7,792円×3/4=58万3,344円が年金額となります。
このように未納期間が長いほど、将来受け取ることができる年金額が減額されてしまう仕組みとなります。そして未納期間が長い期間にわたると、障害基礎年金や遺族基礎年金を含め年金そのものが支給されない可能性もあります。
年金の保険料納付が難しいときは、免除・納付猶予制度を検討
国民年金保険料を納付しなければならないにもかかわらず、経済的理由などで国民年金保険料の納付が難しい場合は、保険料の納付猶予または免除になる制度が設けられています。この制度の適用を受けるためには、本人、配偶者及び世帯主それぞれの前年所得が、一定の金額以下でなくてはいけません。
保険料の納付猶予期間や免除された期間は、未納期間ではなく受給資格期間としてカウントされます。そのため、障害基礎年金や遺族基礎年金が支給されないといった事態を防ぐことができ、保険料を免除された期間は未納期間よりも将来の年金受給額を増やすことができるメリットがあります。国民年金の手続きは必ず行い、保険料の支払いが困難なときでも免除・納付猶予制度を検討しましょう。
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まとめ
定年退職をした後に再就職し、厚生年金保険に加入するケースでは事業主がその手続きを行います。自営業者は国民年金に加入することになりますが、定年退職時の年齢が60歳以上であれば加入義務はありません。これらのことから、過去に国民年金の未納期間があるなどで任意加入を希望する場合を除き、定年退職をされた本人は自身で年金の手続きは必要ありません。
しかし定年退職した人が自営業者や無職になったケースで、扶養されていた60歳未満の配偶者がいる場合、その配偶者は国民年金に加入しなければなりません。
保険料を納めなかった期間は、未納期間として処理されます。未納期間が長いほど将来受け取ることができる年金額は減り、未納期間が長期にわたると国民年金を受け取ることができないことも考えられます。経済的な理由で国民年金の保険料納付が難しいときは、納付猶予制度や免除制度を検討しましょう。
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