年金の種類は1つではない!さまざまな分類をわかりやすく解説

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「年金」と聞いて老後に受け取る「老齢年金」を真っ先に思い浮かべる人は多いでしょう。年金は公的年金と私的年金の大きく2種類に分けられ、公的年金は2種類、私的年金は4種類です。
老齢年金は公的年金に含まれ、老後に受給する年金以外の公的年金もあります。この記事では各種年金について正しく理解できるよう、年金の種類について仕組みとともに解説します。

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  • 【この記事を読んでわかること】
  • 日本の年金制度は「国民年金」「厚生年金」「私的年金」の3階建て
  • 公的年金は「老齢年金」だけでなく「障害年金」「遺族年金」もある
  • 自営業者には2階部分がないため、自助努力が必要

日本の年金制度は全部で6種類

紙幣

日本の年金制度は大きく公的年金と私的年金に分けられ、公的年金は2種類、主な私的年金は4種類あります。ここではそれぞれの年金についてと、各年金の構造について解説します。

公的年金

公的年金とは国の運営する年金のことで、国民年金(基礎年金)と厚生年金の2種類があります。

1.国民年金(基礎年金)

国民年金は基礎年金とも呼ばれ、日本に居住する20歳以上60歳未満の全国民が加入する公的年金です。国民年金は自分が支払った保険料を将来受け取る方式ではなく、集めた保険料をその時期の年金支給に充てる「賦課方式」です。

国民年金の保険料は全加入者一律(2022年度は月額1万6,590円 )で、収入による違いはありません。将来の年金は480カ月保険料を納めると満額(2022年度は月額6万4,816円 )となり、保険料を納めた月数によって金額が決まります。
たとえば、保険料を432カ月納めた場合、年金月額は5万8,334円(6万4,816円 ×432カ月/480カ月)です。

国民年金の被保険者の種類3つ

国民年金の加入者(被保険者)は「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」 の3種類に分かれます。それぞれに該当するのは次のような人です。

種別 該当者
第1号被保険者 農林漁業者・自営業・学生など(厚生年金に加入していない人)
第2号被保険者 会社員・公務員 等
第3号被保険者 国内に居住し、第2号被保険者に扶養されている配偶者

2.厚生年金

厚生年金は会社員や公務員が加入する、国民年金に上乗せする公的年金です。「会社員は厚生年金に加入しているから国民年金に加入していない」と捉えている人もいますが、会社員も国民年金に加入しています。かつて公務員には共済年金という制度がありましたが、2015年に厚生年金と一元化されました。

厚生年金の保険料は事業主と従業員が折半で負担します。厚生年金の被保険者(第2号被保険者)の国民年金の保険料は厚生年金と一緒に徴収され、国民年金に納付されます。そのため、厚生年金の被保険者は自分で国民年金の保険料を納める必要はありません。

厚生年金の保険料は、給与や賞与をベースにした「標準報酬月額」と「標準賞与額」を用いて計算します。そのため、高収入の人ほど保険料が高くなりますが、上限があります。将来の年金額は支払った保険料によって決まる仕組みです。

私的年金

私的年金とは、企業が福利厚生として用意する年金や、個人が自分で用意する年金のことです。私的年金には次の4種類があります。

  1. 企業年金
  2. iDeCo(個人型確定拠出年金)
  3. 国民年金基金
  4. 個人年金保険

1.企業年金

企業年金とは事業主が従業員のために掛金を負担し、公的年金に上乗せして支給する私的年金です。企業によっては従業員が負担する場合もあります。

企業年金の制度には「確定給付型企業年金(DB)」「確定拠出年金(DC)」「厚生年金基金」の3種類があります。

確定給付型企業年金(DB)

確定給付型企業年金は、将来給付する金額について事業主が従業員に約束し、退職後にその約束に基づき給付する企業年金制度です。あらかじめ給付額が確定しているのが特徴です。運用難のために資産の積立不足が発生した場合、事業主には追加拠出の義務があります。従業員にとって、強い受給権があるため有利な制度といえます。

企業型確定拠出年金(DC)

企業型確定拠出年金(DC)は、事業主が拠出した掛金を従業員が運用し、60歳以降に年金または一時金で受け取る企業年金です。制度設計によっては、従業員も掛金を拠出できます。

従業員が自分で運用しなければならないため、確定給付型企業年金に比べて不利に感じる人もいるかもしれません。しかし、同じ掛金でも運用次第で年金資産を大きく増やせる可能性があります。

確定拠出年金は、60歳まで年金資産を引き出せません。中途退職した場合、転職先の企業型確定拠出年金(制度があれば)またはiDeCo(個人型確定拠出年金)に年金資産を移管します。

厚生年金基金

厚生年金基金とは、事業主が国に代わって厚生年金の給付の一部を代行する企業年金制度です。また、さらに独自の上乗せ給付ができます。

近年では運用難のために財政が悪化しており、基金の解散や確定給付型企業年金への移行を促進しています。2014(平成26)年4月以降は新規設立ができなくなったため、財務が健全な一部の基金のみが存続しています。

2.iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金の上乗せ制度です。加入者自身が支払う掛け金を自分で運用し、60歳以降に年金または一時金で受け取ります。先述した企業型確定拠出年金は事業主が掛金を負担しますが、個人型は加入者個人が掛金を支払います。iDeCoは個人の自助努力をサポートするため、以下の3つの税制優遇があります。

  • 掛金は全額所得控除の対象になる
  • 運用中の利益には課税されない
  • 受け取り時も所得控除が適用される

受け取り時の所得控除は、受け取り方で異なります。年金で受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が適用されます。

iDeCoは老後資金準備のための制度なので、60歳までは年金資産の引き出しはできません。

3.国民年金基金

国民年金基金とは、自営業者など第1号被保険者のための国民年金の上乗せ年金制度です。任意で加入できる公的な制度ではありますが、加入資格を喪失しないかぎり脱退できません。ただし、途中の口数変更は可能です。加入資格を喪失するのは、厚生年金に加入した場合などです。国民年金基金の掛金は全額所得控除の対象になります。

将来受け取る年金額は加入時に決まります。そのため、インフレリスクに対応できない点はデメリットといえます。

4.個人年金保険

個人年金保険は民間の保険会社による貯蓄型の保険商品です。契約者が支払った保険料を積み立て、老後に年金として受け取ります。個人年金の保険料を支払うと、一般の生命保険や医療保険とは別枠で「個人年金保険料控除」を受けられます。個人年金保険料控除を受けるには一定の条件を満たす必要があり、控除額には上限があります。

長引く低金利の影響で円建ての個人年金保険の貯蓄性は低下しており、保険料を払い込んでもお金はあまり増えません。

日本の年金制度は3階建て

日本の年金制度は3階建てといわれています。1階部分にあたるのが基礎年金である国民年金で、2階部分が基礎年金の上乗せである厚生年金です。1階と2階は公的年金であり、3階は公的年金を補完する私的年金です。これまでの内容を踏まえ、以下の表にて整理します。

階層 対象者 制度
私的年金 3階 制度ごとに異なる 企業年金・iDeCo・国民年金基金・個人年金保険
公的年金 2階 会社員・公務員 厚生年金
1階 全国民 国民年金(基礎年金)

老齢年金以外の公的年金もある

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公的年金は老後に受け取る「老齢年金」だけでなく、「障害年金」「遺族年金」もあります。それぞれどのようなときに受け取るのかを知っておきましょう。

年金の種類 受給者 目的
老齢年金 被保険者本人 老後の生活保障
障害年金 被保険者本人 病気やけがで障害を負った人の生活保障
遺族年金 被保険者の遺族 被保険者の死亡による遺族の生活保障

障害年金

障害年金は病気やけがで障害認定を受けた人が受けられる年金です。障害年金には国民年金から給付される「障害基礎年金」と厚生年金から給付される「障害厚生年金」があります。第1号被保険者・第3号被保険者は障害基礎年金のみを受給、第2号被保険者は障害基礎年金と障害厚生年金を受給できます。

障害年金の等級と給付額

障害年金には1級から3級までの等級があり、数字が低いほど重く、受け取る給付も多くなります。ただし国民年金の等級は2級までです。

なお、病気やけがで日常生活が制限される場合で、障害年金の対象より軽い障害が残ったときは障害手当金が受け取れます。障害手当金は厚生年金だけの制度で、給付は1回かぎりです。障害年金の給付額は以下のとおりです。

障害等級 障害基礎年金 障害厚生年金
1級 国民年金年額の満額×1.25+子の加算 報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額
2級 国民年金年額の満額+子の加算 報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額
3級 報酬比例の年金額(最低保障額あり)
障害手当金 2 報酬比例の年金額×2(最低保障額あり)

障害基礎年金の「子の加算」は、被保険者に18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害1級または2級の子がいる場合に受けられます。2022年度の加算額は、子ども2人までの場合1人につき年額22万3,800円、3人目以降は1人につき年額7万4,600円です。

障害厚生年金の「配偶者の加給年金」とは、被保険者に65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます。2022年度の加給年金額は年額22万3,800円です。

遺族年金

遺族年金は、生計維持者である被保険者が死亡した場合に遺族が受け取れる年金です。障害年金と同様に、国民年金から給付される「遺族基礎年金」と厚生年金から給付される「遺族厚生年金」があります。第1号被保険者・第3号被保険者の遺族は遺族基礎年金のみの受給、第2号被保険者の遺族は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受けられます。

遺族年金の受給対象者と給付額

遺族年金は、国民年金・厚生年金に加入していた人の遺族が必ず受けられるわけではありません。対象となる遺族と受け取れる年金額は以下のとおりです。

遺族基礎年金 遺族厚生年金
対象となる遺族 子のいる配偶者


55歳以上の夫
55歳以上の父母

55歳以上の祖父母
年金額 国民年金年額の満額+子の加 報酬比例の年金額×3/4

遺族年金の「子」「孫」とは、18歳になった後の最初の3月31日までの子(孫)、または20歳未満で障害1級または2級の子(孫)を指します。子の加算額は障害基礎年金と同様です。子がいる配偶者が遺族基礎年金を受給する場合、子には遺族基礎年金は支給されません。遺族厚生年金で子がいない30歳未満の妻が受給できるのは、5年間です。

まとめ:自分が受け取る年金について知っておこう

日本の年金制度はやや複雑なため、自分が受け取る年金の種類がよくわからない人は少なくありません。この機会に年金制度の仕組みを理解し、将来どのような年金をいくら受け取れるのかを確認してみてください。公的年金の受取額がわかったら、不足分をどのような方法(私的年金)で準備するかを検討しましょう。

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執筆者
松田聡子
ファイナンシャルプランナー
明治大学法学部卒業後、証券システムのITエンジニア、国内生保の法人コンサルティング営業を経て2007年よりファイナンシャル・プランナーとして独立。コンサルティングのほか、主な活動は企業型確定拠出年金導入企業へのセミナー講師、マネーサイトへの執筆など。年金・資産運用・保険などに精通、iDeCoやNISAなどの制度を活用した人生100年時代の資産形成をアドバイスしている。