経理未経験は簿記の資格なしでも働ける?需要が高いのは何級かを解説
経理未経験で簿記資格がなくても、簡単な経理業務はできます。しかし、より経理で活躍したいと考える人は、簿記の取得を検討しましょう。今回は未経験から経理を目指す人は簿記何級がおすすめかや等級ごとの概要、注意点を解説します。
- 【この記事を読んでわかること】
- 経理未経験で簿記資格なしでも簡単な日次業務はできる
- 経理になりやすいのは企業からの需要が高い簿記3級以上の資格保有者
- 仕訳や計算問題など丸暗記では対応できないため基礎の理解が必須
未経験で簿記資格がなくても経理にはなれる
経理未経験で簿記の資格を持っていなくても、経理にはなれます。経理業務はさまざまな種類がありますが、伝票起票や入力業務、経費清算などの日次業務は比較的簡単にできるため、経理未経験でも業務を任せてもらえるでしょう。現金の入出金の管理や社員の交通費の精算など、おもに会社の内部で動くお金の管理が日次業務に該当します。
しかし、経理の仕事は上記の業務だけにとどまりません。取引先との売掛金や買掛金の管理、年度末の決算業務や年末調整業務など、仕事内容は多岐にわたります。とくに中小企業では経理の人数が少ないこともあり、一人ひとりが幅広い分野を担当することも多いでしょう。
よって、経理担当として幅広い業務をおこなうには、相応の知識が求められます。将来、経理業務でキャリアアップを目指していくのであれば、経理の実務に内容が直結している簿記資格を取得するのがおすすめです。
次では経理のキャリアに簿記がおすすめの理由を詳しく解説します。
経理のキャリアに簿記がおすすめな2つの理由
経理としてのキャリアに簿記がおすすめな理由は以下の2つがあるので、順番に解説します。
経理の実力を示すことで年収アップにつながる
簿記3級から2級に挑戦して合格した場合など、簿記を取得してステップアップすると経理の実力を認められて年収アップにつながる可能性があります。会社によっては資格手当をもらえることもあるため、気になる人は確認しておきましょう。また、資格は自分の実力を正しく客観的に証明してくれるものであるため、キャリアアップや昇給の交渉にも使えます。
さらに年収を上げたい場合は簿記と合わせて、社会保険労務士やファイナンシャルプランナーなど、経理の仕事内容に関連する別の資格を取得するのもおすすめです。
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税理士や公認会計士などの金融系専門職を目指せる
将来的に経理業務を極めたい場合は、簿記で得た経理の知識を活かして、税理士や公認会計士などの金融系専門職を目指せます。1から目指すよりも、簿記で経理や会計の知識が身についている方が学習スピードは格段によくなるでしょう。簿記1級を取得している人は税理士の受験資格を得られることからも、経理と金融系専門職との相性の良さがわかります。将来は金融系専門職で独立したい人にとっても、簿記は最初の足掛かりとしておすすめです。
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経理を目指す人にとってさまざまなメリットがある簿記ですが、簿記には5つの等級があります。どの級の取得を目指したら良いのか次で詳しく解説します。
経理に直結する簿記資格の等級別の特徴
簿記は経理業務に直結する内容のため経理の実力を示すのに最適な資格で、以下5つの等級があります。
- 簿記3級
- 簿記2級
- 簿記1級
- 簿記初級
- 原価計算初級
それぞれの等級がどのような内容で、どのような人におすすめかを以下で解説します。
簿記3級は経理の基本で未経験でも挑戦しやすい
簿記3級は経理の基本を押さえられるため、未経験から挑戦する人でも挑戦しやすいにおすすめの資格です。簿記3級で扱う範囲は、商業簿記です。商業簿記とは、企業の取引内容を決算報告書に記録する際に使用される記帳方法で、一般的に簿記といえば商業簿記を指します。取引を帳簿に記録して報告書を作成するまでの、一連の流れが習得できます。
設問は3題程度出題され、試験時間は60分、70%以上の正答率で合格です。合格率は回によって異なりますが、2023年2月の合格率は36.5%で3人に1人が合格しています。具体的な出題内容は、簿記の基本原理・勘定科目の仕訳・決算書の作成などです。簿記3級を取得すれば、経理の基礎をわかっている人材として認められるでしょう。勉強時間の目安は、約3ヶ月です。
簿記2級は経理への転職に有利で企業からの需要も高い
簿記2級は、経理の実践の場においても十分に通用するポテンシャルを持っていることの証明となる資格です。簿記3級よりも企業からの需要が高いため、経理への転職を考えている人の強い味方となってくれるでしょう。
簿記2級は商業簿記に加えて、工業簿記も出題される点がポイントです。工業簿記とは、製造業で使用される簿記の記帳方法のことで、習得すれば製造業の経理処理に対応できます。また、商業簿記が企業の財務活動を外部へ報告する役割が強いのに対して、工業簿記は製造コストを内部で把握する役割があるため、経営の観点からも工業簿記ができる簿記2級保持者は歓迎されます。
簿記2級の設問は5題程度で試験時間は90分、70%以上の正答率で合格です。合格率は低く、2023年2月の合格率は24.8%とおよそ4人に1人しか合格していません。勉強時間の目安は未経験の場合は約半年程度と簿記3級より範囲が広くなる分長めなので、計画に余裕を持って勉強を進めていきましょう。
簿記1級は大企業の会計処理もできる経理のスペシャルリスト
簿記1級は、取得すればきわめて高度な経理業務ができる、経理のスペシャリストです。大企業の会計処理もできるため、どのような企業相手でも対応できるでしょう。検定に合格すれば、税理士試験の受験資格も得られます。
簿記1級の試験科目は商業簿記や工業簿記のほか、会計学や原価計算も追加されるため、覚える量は膨大です。直近2022年11月試験の合格率は10.4%と非常に低く、簿記1級は難関資格の部類に入るため、これから経理を目指す人が取得する資格としては適しません。経理になったうえでもっとステップアップしたいと思ったタイミングが来たら、検討してもいいでしょう。
簿記初級や原価計算初級は経理の入門レベル
簿記1級〜3級のほかにも経理の入門レベルの資格として、簿記初級と原価計算初級があります。簿記初級は、簿記の基本的な用語や仕組みを理解するために創設された試験です。簿記初級で学んだ内容は簿記3級の範囲の半分程度をカバーするとされているため、簿記3級へ挑戦する前に受験してもいいでしょう。
原価計算初級は、原価計算の理論を理解するうえで最低限必要な用語や考え方を学べるため、2級の出題内容に含まれる工業簿記の内容の理解がスムーズになります。工業簿記は計算問題が多いため、原価計算が苦手に感じる人は原価計算初級で克服するのもいいでしょう。ただし、学習の補助として利用するレベルで資格としては弱いため、経理への転職時にアピールする材料には向きません。あくまで検定試験までの勉強の一部として利用しましょう。
このように、簿記はどの等級ごとに難易度が異なるものの、経理業務に直結する資格です。
また、簿記検定は試験を主催する団体によっていくつかの種類にわけられます。どの団体の簿記検定に申し込めばいいのか混乱する人も多いので、選び方を次で解説します。
経理を目指して簿記を受けるなら日商簿記検定を選ぼう
経理を目指す際にもっとも役立つ簿記検定は、日商簿記検定です。簿記検定は以下の種類にわけられますが、日商簿記検定は受験者数が非常に多いため、認知度の高さが伺えます。
おもな受験者 | 年間受験者数 | 主催者 | |
---|---|---|---|
日商簿記検定 | 社会人・大学生 | 539,283人 | 日本商工会議所 |
全経簿記検定 | 社会人・大学生 | 36,681人 | 全国経理教育協会 |
全商簿記実務検定 | 商業高校生 | 173,934人 | 全国商業高等学校協会 |
参考:「受験者データ‐日本商工会議所」
参考:「受験データ‐全国経理教育協会」
参考:「統計資料‐全国商業高等学校協会」
日商簿記検定のほかにも全経簿記検定と全商簿記実務検定がありますが、全経簿記検定は受験者数があまり多くなく、全商簿記実務検定は受験者のほとんどが高校生です。よって、経理を目指す社会人なら日商簿記検定を選びましょう。日商簿記検定の簿記2級は年3回開催されるため、受験したい人は次で試験日や申込方法を確認してください。
簿記の試験日や申込方法
受験者数の多い日商簿記検定2級と3級の、令和5年度の試験日や申込方法は以下のとおりです。
2級 | 3級 | |
---|---|---|
令和5年度の試験日 | 【統一試験】
令和5年6月11日(日) 令和5年11月19日(日) 令和6年2月25日(日) 【ネット試験】 統一試験の前後を除き、随時 |
左記2級と同じ |
申込方法 | 最寄りの商工会議所の窓口・郵送・ネット | 左記2級と同じ |
受験料 | 4,720円(税込) | 2,850円(税込) |
参考:「商工会議所検定試験情報検索‐日本商工会議所」
参考:「日商簿記(統一試験)の申し込みの流れ(各商工会議所窓口)‐日本商工会議所」
簿記の試験は、全国に設置された会場で決められた日に受験する統一試験と、随時開催されるCBT方式のネット試験にわけられます。なお、ネット試験は自宅のパソコンから受験するのではなく、最寄りの会場に行ってパソコンを使って受けるCBT方式の試験であるため、勘違いしないようにしましょう。
ここまで簿記の申込概要を解説しましたが、最後に簿記検定を受ける際の注意点をお伝えします。
経理未経験で簿記を受験する際の3つの注意点
経理未経験から簿記を受験するときに注意したい点は、以下の3つです。簿記ならではの注意点もあるので、しっかり確認しておきましょう。
用語や数字の丸暗記では通用しない
勘定科目の仕訳や原価計算など、簿記の試験問題は用語や数字の丸暗記では応用が利きません。勘定科目の種類や計算問題が多いので最初は混乱しやすいですが、ひとつずつ基礎をしっかりと固めて繰り返し問題を解くことが大切です。
ひとつ間違えると設問すべて全滅する可能性がある
簿記の試験は、1ヶ所間違っただけで設問すべてに影響する場合があります。たとえば連結精算表の作成問題では上から順番に勘定科目の数字を記入していきますが、資産と負債の金額が合っていなければ純資産の金額も必然的に間違ってしまいます。そのまま問題を解き続けても、最初の問題で間違った数字を記入しているので後の問題が全滅する可能性があります。正確さを意識し、落ち着いて問題に取り掛かることが大切です。
簿記を取得しても必ず経理になれるわけではない
簿記を取得したからといって、必ず経理になれる保証はない点は覚えておきましょう。簿記は経理業務に直結する内容ですが、実務経験がないとなかなか採用が決まらない場合もあります。もし正社員採用が難しいのであれば、派遣社員やアルバイトから経理業務を経験するのもひとつの選択肢です。実務経験を積むためにも、まずはどんな形であれ簿記の知識を実践に移せる場を見つけましょう。
まとめ
- 経理未経験で簿記資格なしでも簡単な日次業務はできる
- 経理になりやすいのは企業からの需要が高い簿記3級以上の資格保有者
- 仕訳や計算問題など丸暗記では対応できないため基礎の理解が必須
経理未経験で簿記の資格がなくても、経理にはなれます。しかし、幅広い経理業務に対応できる証明として企業からの需要も高い簿記は、経理を目指すなら取得しておくのがおすすめです。簿記3級や2級を取得すれば、現場でも十分知識を活かせるでしょう。注意点として、簿記試験は用語や数字の丸暗記が通用しません。しっかりと基礎から理解する必要があるため、計画的に学習を始めることが大切です。