中小企業退職金共済(中退共)とは?基本をわかりやすく解説
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自分の退職金は「中退共」というところに預けてあるらしいと知り、中退共がどんな団体か疑問に思っていませんか?
中退共は、一般的には国が中小企業のために整備した退職金共済制度とその運営団体を指します。自社が中退共に加入していれば、その労働者は原則として被共済者となり、退職時に退職金を受け取ることができます。
- 【この記事を読んでわかること】
- 中小企業退職金共済制度(中退共)とは中小企業のための退職金の外部積み立て制度で、国の外郭団体である「中退共本部」が運用している
- 中退共は会社が自社で雇用する労働者を被共済者として加入させ、掛金を会社負担で納付する
- 中退共の加入者である労働者が退職する際は、一定の条件により、中退共から退職金が支払われる
- 中退共は退職金が確実に支払われる点、通算制度がある点で労働者にとって安心できる仕組み
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中小企業退職金共済(中退共)は中小企業で働く人のための退職金共済
中小企業退職金共済制度(以下、中退共)は、中小企業のための退職金積み立て制度です。国が定める「中小企業退職金共済法」に基づいており、制度の運用は「中退共本部」(独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部)が行なっています。労働者にとって退職金は、老後の生活の安定や、長く働き続けるためのモチベーション維持に繋がります。
しかし、大手企業よりも売り上げ規模が小さな中小企業は、原資確保の面から、自社単体で退職金制度を設けることが難しいとされています。
そのため、国が制度を整え、中小企業が複数集まって退職金の原資を拠出する仕組みを作りました。これが中小企業退職金共済です。中小企業退職金共済に加入することで、中小企業は毎月少額からの掛金で、長期就労した労働者にまとまった退職金を用意することができます。
中退共制度の目的は、中小企業で働く労働者の安心や就労意欲の向上に役立つこと、中小企業の人材獲得や人材維持を支えることです。
中小企業退職金共済の加入者数
中退共に加入している企業数と労働者数は制度開始の1963年から順調に伸びています。2022年9月時点での加入状況は下記の通りです。
- 加入している企業 38万9千事業所
- 加入している従業員 363万人
また、加入事業所の増加に伴い運用額も増えており、運用資産額は約5.3兆円となっています。
中小企業退職金共済は国の制度です。必要な加入期間を満たせば従業員に退職金を確実に支給できるため、多くの中小企業で導入されています。
参考:独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部>制度の概要>事業の概要(令和4年9月末時点)
参考:独立行政法人勤労者退職金共済機構>資産運用の状況>資産運用残高及び利回り状況等>資産運用状況の推移
中小企業退職金共済制度(中退共)の対象は中小企業とその従業員
中退共に加入できる企業の条件
会社が中退共に加入するには、業種ごとに定められた従業員数または資本金・出資金の額のいずれかを満たす必要があります。事業主が中退共本部と退職金共済契約を結び、掛金を支払います。
個人事業主も、従業員を雇い入れていれば加入できます。
業種 | 条件 |
---|---|
一般(製造業・建設業等) | 常用従業員300人以下または資本金出資金3億円以下 |
卸売業 | 常用従業員100人以下または資本金出資金1億円以下 |
サービス業 | 常用従業員100人以下または資本金出資金5,000万円以下 |
小売業 | 常用従業員50人以下または資本金出資金5,000万円以下 |
常用従業員とは、正社員もしくは労働時間と雇用期間の面で正社員に準ずる労働者を指します。
参考:よくわかる中小企業退職金共済制度 詳細版(あらまし)P4
中退共の加入対象者は加入企業の従業員
中小企業退職金共済(中退共)の加入対象者(被共済者)は、当該企業が雇用している従業員で、原則として全員を対象とします。
ただし、次の条件に該当する従業員は加入の必要はありません。
- 期間を定めて雇われている労働者
- 試用期間中の労働者
- 休職期間中の労働者
- 定年などで短期間内に退職することが明らかな労働者
経営者や役員は加入できない
退職金積み立ての対象となるのは、労働者のみです。
そのため、法人企業の役員や個人企業の事業主とその配偶者などは被共済者にはなれません。
中小企業退職金共済(中退共)の手続き
中退共への加入手続きと掛金の支払い
中退共に加入するには、加入対象となる中小企業の事業主が中退共本部と「退職金共済契約」を結びます。中退共は、被共済者となる従業員に共済手帳を発行します。中退共に加入する事業主が従業員を新たに雇用し被共済者を追加したい場合は、都度「追加申し込み」を行います。
事業主が中退共に加入すると、掛金の支払いが始まります。毎月の掛金は事業主から中退共に口座振替で納付されます。
従業員の退職と中退共退職金の支給
従業員が退職した場合、事業主は「被共済者退職届」を中退共へ提出し、「退職金共済手帳(請求書)」を従業員に渡します。中退共は、従業員からの請求に基づいて、決まった退職金を労働者個人に直接支払います。退職金の支払いの前には、事業主および従業員に中退共本部から退職金の額の連絡があります。
退職金を受領するには、従業員が「退職金共済手帳(請求書)」を自分で送付して退職金請求を行う必要がありますので、忘れないようにしましょう。
中退共退職金の受け取り方法は3つ
受け取り方法は、下記の3パターンがあります。- 一時払い…退職時に全額を一括受取
- 全額分割払い…全額を年金型で分割払い ※一定の条件あり
- 一部分割払い…一時払いと分割払いの組み合わせ ※一定の条件あり
中退共の退職金は、退職時の一括支給が基本ですが、退職金支給額など一定の条件を満たせば、5年間または10年間の分割支給型を選ぶこともできます。
参考:よくわかる中小企業退職金共済制度 詳細版(あらまし)P8
中小企業退職金共済(中退共)の掛金と退職金の額
中退共退職金の掛金
月々の掛金は最小5,000円から最高30,000円の範囲で、事業主が従業員ごとに16通りある選択肢から1つを選びます。掛金の減額には一定の条件を満たす必要がありますが、掛金の増額はいつでもできます。
1週間の所定労働時間が30時間未満の短時間労働者(パートタイマー等)には、通常の従業員より低い特例掛金も選択できます。特例掛金は月額2,000円、3,000円、4,000円の3パターンです。
法律により、掛金は事業主による全額負担と定められています。どんな理由があっても従業員から徴収することはできません。
中退共退職金の支給額は法令で定められている
中退共の退職金の額は法律で定められており、基本退職金と付加退職金の二本立てとなっています。退職金の総額は「基本退職金」と「付加退職金」の合算です。
それぞれについて説明します。
中退共退職金の「基本退職金」
基本退職金の金額は、毎月の掛金に納付月数を乗じた額をベースに、予定運用利回りを考慮して定められています。納付月数と掛金に応じた基本退職金の合計額は、独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部のWebサイトで公表していますので、参考にするといいでしょう。
2002(平成14)年11月から適用されている利回りは1.0%です。予定運用利回りは法令の改正により変わることがあります。
また、中小企業退職金共済事業本部のWebサイトにはシミュレーターが設置されており、自分の将来の退職金の額を計算できます。
参考:独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部>退職金試算>基本退職金額表
中退共退職金の「付加退職金」
付加退職金とは「基本退職金」に上乗せされるものです。共済資産の運用利回りが予定を上回った場合に、掛金納付月数が43ヵ月以上の被共済者に加算されます。年度ごとに確定した付加退職金の退職時までの累計金額を、付加退職金として、退職時に支給します。
付加退職金の支給率は、運用収入に基づき、国が毎年度決定します。近年では、令和3年度に0.0142%の付加退職金の上積みがありました。令和4年度は付加退職金の上積みはありませんでした。
参考:令和4年度の一般の中退共の付加退職金支給率はゼロ
参考:第81回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会|厚生労働省
中退共退職金をもらうには1年の最低加入期間が必要
中退共の退職金を受給するには、最低12ヶ月、掛金の納付実績が必要です。また、長期加入者の退職金が手厚くなるよう、支給額に傾斜がついています。
掛金納付月数 | 基本退職金の支給額 |
---|---|
11ヶ月以下 | 支給なし |
12ヶ月以上24ヶ月未満 | 掛金総額を下回る額 |
24ヶ月以上3年6ヶ月(42ヶ月) | 掛金総額相当の額 |
3年7ヶ月(43ヶ月)以上 | 掛金総額を上回る額 |
中小企業退職金共済(中退共)の特徴
中小企業退職金共済(中退共)には、下記のような特徴があります。
- 国による掛金の一部助成
- 退職金の事務手続は中退共本部が実施
- 掛金は非課税
- 通算制度でまとまった退職金の額にできる
- 退職金は中退共から従業員へ直接支払い
- 自治体による掛金補助制度
いずれも事業主や労働者にとってメリットとなる内容です。それぞれについて説明します。
国による掛金の一部助成
中小企業退職金共済には、新規に中退共に加入する事業主と月額掛金を増額する事業主に対し、掛金の助成制度を設けています。
新規加入事業主の場合、契約加入後4ヶ月目から掛金月額の1/2(従業員ごと5,000円を上限として)が1年間助成されます。
また、すでに加入している従業員について、18,000円以下の掛金月額を増額変更する場合は、増額分の1/3が、1年間助成されます。
退職金の事務手続は中退共本部が実施
事業主が収める毎月の掛金は口座振替のため、払い忘れの心配がなく、手間もかかりません。
また、一年に一度、中退共本部から加入状況・掛金納付状況・退職金試算額についてのお知らせが届きます。事業主あてに、《事業主保存用》と《従業員配付用》の2種類が届くため、事業主は従業員に書類を渡すだけで、本人へ情報共有ができます。
掛金は非課税
加入事業主が資本金の額または出資の総額が1億円未満の法人であれば、中退共の掛金は全額非課税となり、節税効果があります。
法人企業の場合は損金として、個人企業の場合は必要経費として計上できます。
通算制度でまとまった退職金の額にできる
二つの通算制度があり、一定の要件を満たす従業員については、掛金納付月数を増やすことができます。そのため、働いた期間に応じた、まとまった額の退職金にできます。
過去勤務期間の通算
新しく中小企業退職金共済(中退共)に加入する企業に限り、中退共加入前の従業員勤務期間分についても掛金を納付できる通算制度があります。
過去の勤務実態に応じ、最大10年分の掛金を積み増しすることができるので、従業員のこれまでの勤務期間に応じた退職金を支給できます。
転職した場合の通算
中小企業退職金共済(中退共)では、中退共に加入している会社から同様の制度に加入している会社へ転職した場合、積み立てた退職金を通算できます。一般的な退職金制度は企業がそれぞれに運用しているため、労働者が退職した場合はその時点で精算されます。
通算には、一定の要件を満たす必要があります。詳細は、中小企業退職金共済(中退共)のWebサイトで確認できます。
参考:独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部>トップページ>制度について>通算制度
退職金は中退共から従業員へ直接支払い
退職金は、退職した従業員の請求により、中退共から退職者に直接支払われます。事業主が従業員に代わって退職金の請求や受給はできません。
自治体による掛金補助制度
自治体によっては、中小企業退職金共済(中退共)に加入する企業に対し、独自の補助を行なっています。補助制度がある自治体は、中退共のWebサイトで確認できます。
長野県松本市では、国からの助成のほか、1年間にわたり掛金の20%(ただし月額上限1,000円)の補助があります。
補助制度は自治体によって異なります。利用の条件・制度の詳細は各実施先で確認できます。
参考:掛金助成自治体等|中小企業退職金共済事業本部
参考:中小企業の退職金制度|松本市ホームページ
まとめ:中退共(中小企業退職金共済)は中小企業とその労働者のための制度
中退共は国の関連団体で、中小企業の労働者のために退職金共済制度を運用しています。中退共の退職金は国の公的年金等と同じで、本人の請求に基づいて退職金を支給します。受給者から請求を行わないと受給できないため、退職する場合は手続き忘れないようにしましょう。
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