客先常駐はどんな働き方?メリット・デメリットを解説

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客先常駐とは、ITエンジニアに多い働き方の一つで、業務命令により勤務先が自社ではなくクライアントとなるものです。本記事では、客先常駐という働き方の概要、メリット・デメリット、楽しい?それとも辛い?といった点を説明します。

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  • 【この記事を読んでわかること】
  • 客先常駐とは客先で就業する、ITエンジニアに多い働き方
  • 客先常駐で働くことにはメリットとデメリットの両方がある
  • 客先常駐が辛い理由と楽しむためのエッセンス
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客先常駐とはお客様・取引先において就業する働き方

客先常駐の需要が多い職種・業務6つが箇条書きされた図

「客先常駐」とは、お客様・取引先において就業する働き方です。毎日自宅から客先へ出勤し、退勤後もそのまま帰宅します。

どんな業種・職種であっても客先を就業先とする働き方であれば客先常駐になりますが、特にIT業界においては、SES(システムエンジニアリングサービス)を行っている企業のエンジニアが、その顧客である大手企業に派遣されることを指します。

客先常駐と関係が深いSESとは

ITエンジニアの客先常駐は、IT業界で行われるサービスの一つであるSES(システムエンジニアリングサービス)に基づくものが多いです。

SESは、システム開発やインフラ環境構築・運用などを業とする企業が、自社のエンジニアの技術力と労働力を一定期間クライアントに提供するサービスです。具体的には、客先にエンジニアを派遣し、常駐させるという形態を取ります。

SESでは、クライアントとSESを行う企業が準委任契約であるSES契約を結ぶことが一般的ですが、状況に応じて請負契約や派遣契約となる場合もあります。

準委任契約によるSESでは、所属企業の業務命令によりクライアントに派遣されたエンジニアが、契約内容に沿った業務を遂行します。請負契約との違いは、請負契約では受託者が成果物に責任を持つ契約であるのに対し、準委任契約によるSESではエンジニアの派遣元には成果物に対する責任が発生しない点です。

客先常駐と派遣社員との違い

SESによる客先常駐と混乱しやすい言葉に派遣社員があります。

派遣社員とは、労働者派遣法および個別の労働者派遣契約によって、派遣元が派遣先に労働者を派遣する仕組みです。派遣社員は派遣先に指揮命令権があるのに対し、SESの準委任契約による客先常駐のエンジニアはベンダー側(エンジニアの本来の所属企業)に指揮命令権がある点が異なります。

クライアントは派遣社員に対して業務指示を行うことができますが、準委任契約による客先常駐のエンジニアに直接業務指示を出すことはできません。

客先常駐の需要が多い職種・業務

客先常駐の需要が多いIT系の職種・業務には、下記のようなものがあります。

  • システムエンジニア
  • プログラマー
  • ネットワークエンジニア
  • インフラエンジニア
  • サポートエンジニア
  • ITコンサルタント

IT系以外の業種では、一部の事務職や営業コンサルタントなどでも客先常駐の働き方があります。また、企業に属さないフリーランスのITエンジニアでも、客先常駐の案件は少なくありません。

社会の急速なデジタル化の進展で、IT業界は慢性的な人手不足です。

システム開発などではプロジェクトが走っているあいだだけ多くの技術者を必要とします。必要な時だけ必要な技術を持ったエンジニアを採用することは簡単でないため、SESを行う企業などからエンジニアの技術力を一定期間だけ借りる「客先常駐」は需要があります。

次に、ITエンジニアにとって客先常駐にはどんなメリットがあるか見てみましょう。

客先常駐で働くおもなメリットは5つ 

客先常駐の5つのメリットが箇条書きされた図

ITエンジニアが客先常駐で働くことのおもなメリットは以下の5つです。

  • さまざまな経験が積める
  • 顧客に近い距離で働くことができる
  • 未経験や職務経験が浅くとも就職しやすい
  • 社外の人脈を作ることができる
  • 比較的残業が少ない

それぞれについて説明します。

さまざまな経験が積める

客先常駐で働く一番のメリットは、さまざまな会社でさまざまなプロジェクトに関わることができるため、多様な経験が積めることです。

客先常駐は短くて半年、長ければ3年程度で常駐先が変わります。転職をすることなくほかの企業を中から見ることができるため、マネジメント・働き方・プロジェクトの進め方など多くの事を学ぶことができるでしょう。

また、ネットワークエンジニアであれば、常駐先である大手企業のネットワーク構造を目の当たりにできる機会になるなど、それぞれの専門分野においても学ぶことが少なくありません。

顧客に近い距離で働くことができる

客先常駐は、ITエンジニアとして、顧客と同じ現場で働くという数少ない機会です。自社のオフィスにいるよりもコミュニケーションがスムーズであったり、顧客の反応を目の当たりにできたり、自分の仕事に対する顧客からの評価を直接聞くことができるなどのメリットがあります。

また、客先での働きを評価され顧客からの信頼を得ることができれば、プロジェクトがスムーズに進むだけでなく、引き抜きのような形で採用をオファーされることもあります。

未経験や職務経験が浅くとも就職しやすい

人手不足が深刻化するIT業界において、客先常駐の需要は高まり続けています。需要に供給が追いついていないため、SESを積極的に行っているIT企業などでは、中途採用であっても未経験や職務経験の浅いエンジニアでも積極的に採用しています。

IT業界へのキャリアチェンジを考える人にとっては、業界への登竜門として応募しやすいでしょう。

社外の人脈を作ることができる

客先常駐は、自社以外の人脈を作る格好の機会になります。

ITエンジニアの場合、自社開発をメインとする会社などで働くと、気がつけば同じ先輩や上司に囲まれ十数年過ぎてしまうことがあります。一方客先常駐であれば、数ヶ月から長くても3年程度でさまざまな開発の現場を渡り歩くことになるため、社外のエンジニアを始め多様な人との関わりが生まれます。

人との出会いやそこから発生する人脈は自己の成長、キャリアアップにとって大切な資産となるでしょう。

比較的残業が少ない

客先常駐では、関わるプロジェクトによっても異なりますが、比較的残業が少ない働き方となることが多いです。

SESの準委任契約では、通常、クライアントはエンジニアの所属企業にエンジニアの労働時間単位で支払います。客先常駐のエンジニアを残業させると超過料金がかかり、クライアントにとっては負担が大きくなるため、よほどの事態でない限り残業はコントロールされる傾向にあります。

以上、客先常駐で働くメリットについて紹介しましたが、次にデメリットについても確認しておきましょう

客先常駐で働くおもなデメリットは3つ 

客先常駐の3つのデメリットが箇条書きされた図

ITエンジニアが客先常駐で働くことのおもなデメリットは以下の3つです。

  • 正社員と同等の教育を受けることが難しい
  • マネージャーポジションや上流工程を経験しづらい
  • 所属企業への帰属意識が薄れる

それぞれについて説明します。

正社員と同等の教育を受けることが難しい

客先常駐の場合、即戦力として派遣をされているため、常駐先で教育を受けることはありません。特に若手の場合、この点はデメリットになるでしょう。

自社に勤務する社員であれば、先輩からのOJTなどで日々教育され、業務のチェックを受けたり注意を受けたりする機会があります。また、自社での教育は技術にとどまらず、仕事の仕方や上司・部下との付き合い方といった人間力の部分へも大きく影響します。しかし客先常駐では、周りを見てみずから学ぶしかありません。

また、常駐先の企業には、SESによって派遣されたエンジニアを教育する意図や義務がありません。教育のために、ポジションや業務を変えたりすることもないため、同じ常駐先に長くいる場合は高い自己研鑽の意識が重要になってきます。

マネージャーポジションや上流工程を経験しづらい

ITエンジニアとして、マネージャーポジションやシステム開発の上流工程を経験したいという場合には、客先常駐を続けることがデメリットになるでしょう。

客先常駐のエンジニアは、人手不足解決のための即戦力としてクライアントに呼ばれる場合が多いため、客先で行う業務の大半は手を動かす作業になります。

そのため、客先常駐ではさまざまな現場の知識・技術を身につけることはできますが、プロジェクトマネジメントやプロジェクトの企画・設計・提案といった工程はクライアント側が行うため、直接関わる機会は少ないでしょう。

所属企業への帰属意識が薄れる

SESが事業の主体となる企業では、所属エンジニアは恒常的に他社に就業することになります。今の常駐が終われば、次の企業への常駐が開始します。このような状況では、企業側が対策をしていないと、所属社員の自社への帰属意識の低下をもたらしてしまうでしょう。

帰属意識が薄れることでの、労働者側のデメリットには下記のようなものがあります。

  • 所属企業や同僚と積極的にコミュニケーションを取らなくなり、孤立感を覚える
  • 仕事に対するモチベーションが低下する
  • 退職への抵抗感を小さくする

結果として、不必要な転職を招いてしまう可能性があります。

メリット・デメリットの両方がある客先常駐ですが、実際に客先常駐で働くエンジニアは、客先常駐を辛いと感じる人が一定数います。次の章ではその理由について説明します。

客先常駐で働くのは辛いと感じる人もいる

客先常駐が辛いと感じる理由3つが箇条書きされた図

エンジニアが客先常駐で働くのは辛いと感じるおもな理由は下記の3つです。

  • エンジニアとしての将来が見えづらい
  • 短期間で常駐先が変わるストレス
  • 勤務先での立場が弱く肩身が狭い

それぞれについて説明します。

客先常駐が辛い理由①エンジニアとしての将来が見えづらい

客先常駐のエンジニアはさまざまな現場で多様な経験ができますが、スキルやキャリアの幅が広げづらく、自分のエンジニアとしての将来が見えづらいという辛さがあります。

会社員として客先常駐をする場合、常駐先や参加案件は選べない上、即戦力として今持っているスキルを使うプロジェクトにアサインされることが多いでしょう。そのため、エンジニアとしてステップアップするためのスキルの幅や、マネジメント能力などを現場で学ぶことは難しいかもしれません。

客先常駐が辛い理由②短期間で常駐先が変わるストレス

客先常駐で、同じ企業に派遣される期間はプロジェクトによりさまざまです。数年間同じ客先に常駐することもある一方で、半年程度の単位で客先が変わる場合もあります。

その場合、プロジェクトごとに業務内容が変わるため、得られるスキルやノウハウも中途半端なものになりがちです。また、職場が変わるごとに働く環境や人間関係がリセットされてしまうため、それをストレスに感じる人もいるでしょう。

客先常駐が辛い理由③勤務先での立場が弱く気を遣う

客先常駐では、勤務先は顧客となります。さらに、大きなプロジェクトで自社が三次請けとなっている場合などは、勤務先は顧客の顧客の顧客です。そういった事情から、会議で自由に発言できなかったり、発言内容や人間関係に気を遣ったりする場合もあります。

また、プロジェクトの中で重要な部分はクライアントの正社員が行い、客先常駐エンジニアが行うのは手を動かす仕事やクライアントの社員のサポートとなる場合もあります。クライアントの正社員とは違った扱いを受けることで、肩身が狭い思いをする人もいるでしょう。

客先常駐で楽しく働くために必要なことは3つ

客先常駐で楽しく働くために必要なこと3つが箇条書きされた図

最後に、客先常駐を楽しむために必要なエッセンスを3つ紹介します。

  • みずからのキャリアプランを持ち、自己研鑽を怠らない
  • クライアントに寄り添い、案件から学ぶ姿勢を持つ
  • スキルアップし、フリーランスとして独立する

それぞれについて説明します。

みずからのキャリアプランを持ち、自己研鑽を怠らない

客先常駐エンジニアとして仕事を楽しむためには、仕事人として将来の目標をもつ・自分の成長を所属企業に任せきりにしないなど、自分軸のキャリアプランニング力が求められます。

客先常駐では、多様な経験やたくさんの人との出会いといったメリットがあります。それらを学びのソースととらえ、自己研鑽を怠らない姿勢を持てば、自社勤務一辺倒の働き方とは違った恩恵を得られるはずです。

クライアントに寄り添い、案件から学ぶ姿勢を持つ

客先常駐では、新しい環境でも素早く周りにキャッチアップできるコミュニケーション能力や高い柔軟性が求められます。

客先が変わるごとに報告・連絡・相談の方法、仕事をする上でのお作法が変わるでしょうが、それに疑問を持っていては、気持ちよく業務ができません。

勤務先はあくまで顧客であることを忘れず、悪いところ・不満点にフォーカスするよりは、良いところを見つけてそこから学ぶという姿勢でいることが大切です。

スキルアップし、フリーランスとして独立する

会社員の場合、常駐先の顧客やそこで行う業務は所属する会社が決定します。一方、フリーランスの場合は自分で受注した仕事先が常駐先となるので、常駐する会社・プロジェクトをみずから選べるのがポイントです。

客先常駐エンジニアとして多様な顧客をみて学び、そこで得た人脈を活用して、将来エンジニアとして独立を考えるのもいいかもしれません。

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まとめ

  • 客先常駐とは客先で就業する、ITエンジニアに多い働き方
  • 客先常駐で働くことにはメリットとデメリットの両方がある
  • 客先常駐が辛い理由と楽しむためのエッセンス

客先常駐は、所属する企業内で働くのではなく、所属企業から派遣されてお客様である別の企業で働くことを意味します。特にITエンジニアに多い働き方で、メリットもデメリットも両方あります。

自身の将来設計や理想とする働き方を踏まえ、客先常駐にチャレンジするかどうか検討してみましょう。

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執筆者
阿部雅子
人事/キャリアコンサルタント
人事担当として約12年強、採用から人事管理、退職までをサポート。業界はIT系スタートアップ/ブライダル/政府系研究機関等。国家資格キャリアコンサルタント。中小企業での各種雇用調整助成金の受給やコンプライアンスのための規程整備等の経験が豊富。