高年齢雇用継続給付〜段階的廃止の背景と企業・労働者への影響

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「高年齢雇用継続給付金」は雇用保険制度に基づく給付で、65歳未満の労働者の60歳以降での賃金ダウンの補填を目的としています。

2020年度の通常国会で、この給付が段階的に縮小、最終的には廃止になることが決定しました。給付廃止の背景となった関連法整備を説明し、企業への影響と労働者への影響についてもまとめます。

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  • 【この記事を読んでわかること】
  • 高年齢雇用継続給付金は2020年の国会にて2025年度以降の段階的縮小・廃止が決定した
  • 高年齢雇用継続給付金は2025年度に60歳になる労働者から給付率を10%に縮小する
  • 高年齢雇用継続給付金の廃止に備え、企業では高年齢者処遇の見直しが急務
  • 高年齢雇用継続給付金の廃止に備え、労働者は65歳まで働くキャリアプランの早期検討が必要

高年齢雇用継続給付金は段階的な廃止へ

「高年齢雇用継続給付金」は60歳以降、賃金が大きく低下した65歳未満の労働者に、国が減額分を一定程度補填する雇用保険の制度です。この給付は2020年4月の通常国会において段階的な縮小・廃止が可決されました。

※高年齢雇用継続給付には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類があります。詳しくは下記の記事で解説しているので、ご参照ください。

参考:高年齢雇用継続基本給付金については、こちらの記事で詳しく解説しています。
高年齢再就職給付金については、こちらの記事で詳しく解説しています。

▼『高年齢雇用継続基本給付金』について詳しく知りたい方はこちら

▼『高年齢再就職給付金』について詳しく知りたい方はこちら

高年齢雇用継続給付金の制度変更は2025年度から

現状で決まっている制度変更および廃止の方針は下記のとおりです。

  1. 2024年度までは現状維持
  2. 2025年度に60歳に到達する人から給付率を縮小(最大給付率15%→10%)
  3. 2025年度以降は給付金を段階的に廃止

具体的な廃止年はまだ決まっていませんが、今後下記の検討事項と合わせて方針が示されて行くでしょう。

  • 高年齢労働者の処遇の改善に向けて先行して取り組む事業主に対する支援策
  • 同給付の給付率の縮小後の激変緩和措置

参考:高年齢雇用継続給付の見直し(雇用保険関係)|厚生労働省

「同一労働同一賃金」の法制化による公正な待遇確保の推進

高年齢雇用継続給付金の廃止のもう一つの背景は、働き方改革関連法のなかの、いわゆる「同一労働同一賃金」の法制化です。

「同一労働同一賃金」は、2021年4月から全企業を対象として施行となった「働き方改革関連法」(「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)の中の一部で、「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」をめぐる法改正※を指します。

※具体的には下記3つの法律の改正です。

  • 労働契約法
  • パートタイム労働法
     (短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
  • 派遣法
     (労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)

これまで「パートタイマーや非常勤社員・派遣労働者・有期雇用契約社員」と「通常の労働者」とのあいだの不合理な待遇を禁止する法改正と理解されていましたが、高年齢労働者の雇用確保が進むにつれ定年後の高年齢者が「パートタイマー非常勤社員・派遣労働者・有期雇用契約社員」となるケースが増えています。

そのため「同一労働同一賃金」で保護すべき労働者の対象には定年後高年齢労働者も含まれ、これまで以上に法的根拠を持って待遇改善の動きを図るという方針です。

「同一労働同一賃金」の重要なポイントは下記2点になります。
均等待遇 職務内容、職務内容・配置の変更範囲が同じ場合、
「通常の労働者」と比較して差別的取り扱いは禁止
均衡待遇 職務内容、職務内容・配置の変更範囲が異なる場合でも、
「通常の労働者」と比較して不合理な待遇差は禁止

これまでにも、高年齢労働者の処遇をめぐって労働者と企業が争った裁判がいくつかありましたが、公的給付を考慮した企業の賃金制度については違法との見解にはいたりませんでした。

しかし、公的給付が縮小・廃止となる今後はこの「同一労働同一賃金」の観点から「高齢労働者」と「通常の労働者」のあいだでの処遇格差是正が求められていくことになります。

参考:同一労働同一賃金特集ページ~雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保について~|厚生労働省

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高年齢雇用継続給付金縮小・廃止の企業への影響

以上のような経緯で決まった高年齢雇用継続給付金の縮小・廃止は、今後企業にどのような影響をもたらすでしょうか。

メリットとしては、単純に給付金手続きの負担減ということがあげられます。

高年齢雇用継続給付金は受給に複数の要件があるため、60歳前後から65歳までの従業員を多く抱える企業では新規受給該当者のチェックや初回手続きに気を遣います。また、支給全期間を通じて2ヶ月ごとに継続受給のための書類作成と手続きが必要なため、60歳前後の労働者が増えるたび事務手続きも増えていました。今後給付廃止となれば、それらの事務手続きの負担はなくなります。

デメリットとしては、60歳以降の継続雇用制度において、これまで公的給付に頼った賃金設定をしていた場合は早急な制度の見直しが必要になる点です。また、制度見直しの結果、人件費負担が大きくなる可能性もあります。

しかし、これまで60歳以降の高年齢労働者の処遇については、労働者の期待と現実の待遇ギャップがあるなど、たびたび問題点が浮き彫りになってきました。

60代前半の待遇についての企業の意識調査結果

労働政策研究・研修機構が実施している「高年齢者の雇用に関する調査」では、フルタイムで定年前と同じ仕事をしている高年齢者に対する賃金制度のあり方に興味深いデータが出ています。

<フルタイムで定年前と同じ仕事をしている高年齢者に対する
賃金制度のあり方についてのアンケート結果から抜粋>
60歳以上の正社員が
在籍している企業
60歳以上の正社員が
在籍していない企業
「そう思う」・「ややそう思う」の合計割合
定年後でも仕事が同じなら原則、
賃金は下げるべきではない
50.9% 42.1%
会社は雇用確保のために再雇用する
のだから、賃金が低下しても構わない
19.1% 20.6%
高年齢者の賃金が高いままだと現役
世代の賃金が下がるので、高年齢者の
賃金を下げても構わない
27.8% 28.4%

参考:2020年3月 高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)JILPT調査シリーズNo.198|労働政策研究・研修機構

上記結果では、定年後でも同じ業務を行う場合は賃金を下げるべきではないと考える会社が4割から5割あることがわかり、60歳以上の正社員がいる企業でよりその傾向が見られました。

一方、定年前と同じ時間・同じ仕事をしていても、定年後に賃金が下がることはやむを得ないと考えている企業が一定程度あることもわかります。
この場合は、通常労働者と比較して差別的扱いとなっていないか(「均等待遇」)という視点で、高年齢者向けの人事制度設計を再度見直す必要が出てくるでしょう。

高年齢者の処遇改善をはじめとした人事制度変更が急務

現在、男性60〜64歳での就業者の割合は82.7%であり、女性でも60.6%と60歳以上の高年齢労働者は年々増加しています(内閣府「令和4年版高齢社会白書」)。

就業継続の状況を見てみると、60歳定年企業における定年到達者のうち86.8%が継続雇用制度を利用して再就業しており、60歳到達時に働いていた企業で引き続き働きたい労働者が多いことが伺われます(厚生労働省「令和3年 高年齢者雇用状況等報告」)。

しかし今後、高年齢雇用継続給付や年金などの公的給付を受けられなくなることで、これまでの定年後賃金水準が65歳未満の労働者にとって十分でなくなる可能性が出てきました。生計やモチベーションの維持が難しくなり、定年後もしくは定年の前に、ほかの企業への転職などほかの選択肢を選ぶ労働者が増える可能性があります。

また、高年齢労働者を対象とした同一労働同一賃金の施策が推進されるにつれ、給付がなくとも働き続けられる環境や、65歳以上でも不公平感が生じないような賃金制度を整備した企業が増えていくでしょう。

加速する労働人口の不足を補うため、働く意欲のある高年齢者の活用はどの企業にとっても考えなくてはならない喫緊の課題です。高年齢雇用継続給付金の段階的縮小と廃止は、60歳以上の労働者市場において他社に負けない高年齢者人事制度設計を検討するためのきっかけとなるかもしれません。

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高年齢雇用継続給付金廃止の労働者への影響

最後に、高年齢雇用継続給付金の段階的縮小と廃止が労働者にどのような影響をもたらすか考えてみましょう。

デメリットとしては、給付金受給額が少なくなる(いずれもらえなくなる)ため、60歳定年以降の収入減となりうることです。

しかし国は2020年4月、高年齢雇用継続給付金の縮小と同時に「高年齢労働者処遇改善促進助成金」(2021年4月1日新設)を設置。これは、60歳から64歳までの賃金の増額改定に取り組む事業主を支援する助成金です。

今後こういった国の施策や同一労働同一賃金の高齢者への適用周知により、賃金面での待遇改善は進むと考えて良いでしょう。

次に、メリットとしては、これを機会に企業全体の高年齢労働者の処遇改善の動きが期待できることです。60歳以降の就業先を検討する際、現在の勤務先だけでなく、より高年齢者雇用に積極的で納得した働き方ができる制度を持つ職場があれば選択肢も広がります。

そのためにも、個人としては、企業から必要とされ続けられるよう引き続き能力を磨き、65歳ないし70歳までの就労も視野に入れた新たなライフプランを描いておくことが必要でしょう。

参考:高年齢労働者処遇改善促進助成金 リーフレット|厚生労働省

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まとめ

2025年4月以降、雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付は段階的に縮小されることが決まっています。本給付の縮小と将来的な廃止は、企業による65歳までの継続雇用の体制が概ね整ったことや、「同一労働同一賃金」の法制化を背景としています。
国が、意欲ある高齢者が年齢に関わりなく働き続けられる生涯現役社会を目指す中、企業にはよりいっそうの環境整備(公的給付に頼らない納得感のある賃金設計を含む)が求められています。

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執筆者
阿部雅子
人事/キャリアコンサルタント
人事担当として約12年強、採用から人事管理、退職までをサポート。業界はIT系スタートアップ/ブライダル/政府系研究機関等。国家資格キャリアコンサルタント。中小企業での各種雇用調整助成金の受給やコンプライアンスのための規程整備等の経験が豊富。