高年齢再就職給付金をわかりやすく解説【概要・受給要件・注意点等】
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「高年齢再就職給付金」は、高年齢者の雇用機会確保と就労継続維持を目的とした高年齢雇用継続給付の一つです。
60歳以降に再就職の結果、収入ダウンとなった65歳未満の労働者に支給され、給与の減額補填として働きます。
本給付金の申請手続きは事業主が行うことになっているので、本人と会社双方が十分に手続きを理解しておきましょう。
退職金や確定拠出年金、年金や失業保険など定年前後のお金の仕組みは複雑です。
一人ひとりの価値観や状況によって最適な方法は変わるため、個人の判断で進めると大損しかねません。
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- 【この記事を読んでわかること】
- 高年齢再就職給付金は60歳以降の給与低下を補填する雇用保険の給付の一つ
- 高年齢再就職給付金の支給対象は失業保険(基本手当)受給後、60歳以降に再就職した労働者
- 受給資格は支給対象者でかつ「雇用保険の被保険者期間5年以上」「再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上」「賃金が75%未満に低下」の3つ
- 受給金額は賃金低下率に連動し、給付額の最大は「引き下げられた賃金の15%
- 受給申請は会社を介して行い、給付金は本人口座に振り込まれる
高年齢再就職給付金の概要
高年齢再就職給付金は、雇用保険の中の「高年齢者雇用継続給付」の一つです。
高年齢者の就業意欲を維持・喚起し、65歳までの就業の継続を援助・促進することを目的とした給付制度として1994(平成6)年に設置されました。60歳を超えて働き続ける高年齢労働者が、60歳時点に比べて大幅に賃金減となった場合に、その補填の意味合いがある制度です。
高年齢雇用継続給付には、下記2種類があります。
制度名 | 給付金名 | 対象者 |
---|---|---|
高年齢 雇用継続給付 |
高年齢再就職給付金 | 60歳以降に「失業保険(※)」を受給し、その後 再就職した労働者が対象 |
高年齢 雇用継続基本給付金 |
60歳以降に「失業保険(※)」を受給せず、 継続して就労している労働者が対象 |
※雇用保険の基本手当(失業給付)を指します
本記事では「高年齢再就職給付金」を解説します。
高年齢雇用継続給付は離職後再就職した労働者を対象としており、事業主を経由して支給申請手続きすることになっています。受給資格がやや複雑で、申請期間にも制限があるため、企業の担当者は十分に手続きを理解しておきましょう。
パンフレット:高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて|厚生労働省
※「高年齢雇用継続給付」および「高年齢雇用継続基本給付金」については、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
高年齢再就職給付金の段階的縮小・廃止について
高年齢雇用継続給付制度(再就職給付金および基本給付金)は、政府の方針で今後段階的に縮小・廃止されていくことが決まっています。
まずは、2025(令和7)年度、新たに60歳となる労働者から給付率を縮小し、その後段階的に給付制度が廃止される見込みです。
参考:高年齢雇用継続給付の見直し|厚生労働省
※高年齢雇用継続給付の制度廃止については、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
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高年齢再就職給付金の受給資格・支給期間・支給額
高年齢再就職給付金の支給対象者(受給資格)
以下の要件をすべて満たす場合、受給資格が発生します。
- 60歳以上65歳未満で再就職した雇用保険一般被保険者であること
- 雇用保険の被保険者だった期間が5年以上あること
- 直前の職と比較して、再就職後の賃金が75%未満に低下していること
- 1年を超えて引き続き雇用されることが見込まれる安定した職に再就職したこと
- 同一の就職について、再就職手当の支給を受けていないこと
- 再就職の前日における基本手当(失業保険)の支給残日数が100日以上あること
① 60歳以上65歳未満で再就職した一般被保険者であること
高年齢再就職給付金は、離職(※)後雇用保険の基本手当(失業給付)を受給しながら職を探し、60歳以降に再就職した方を対象にしています。
※離職時の年齢は60歳より前でも後でも問題ありません。
また、「一般被保険者」とは「高年齢被保険者(65歳以上の被保険者)」、「短期雇用特例被保険者」、「日雇労働被保険者」以外の雇用保険の被保険者のことです。高年齢再就職給付金は、申請日時点で雇用保険に加入しており、その後も継続して雇用される見込みがあることが必要です。
② 雇用保険の被保険者だった期間が5年以上あること
再就職前に受給していた基本手当にかかる算定基礎期間(雇用保険の被保険者だった期間※)が、5年以上であること。
※被保険者期間は離職による空白があっても以下の条件で通算ができます。不明な点があれば管轄ハローワークにご確認ください。
- 離職日(退職日)から次の職の就職日の空白期間が1年以内であること
- 上記空白期間に基本手当や再就職手当等の給付をもらっていないこと
※また、2020年8月1日以降の離職者から、雇用保険の被保険者期間の算定方法が変わりましたので、ご注意ください。詳細は下記をご参照ください。
参考:失業等給付の受給資格を得るために必要な 「被保険者期間」の算定方法が変わります
③ 直前の職と比較して、再就職後の賃金が75%未満に低下していること
再就職後の各月に支払われる賃金が、直前の職の賃金(再就職前に受給していた基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額)の75%未満となったこと。
また、支給申請後も対象月ごとに支払いの実態を確認されるので、もし実際の賃金(「みなし賃金」※を含む)が75%を超えることがあれば、その月の給付金支給はありません。
※みなし賃金とは
下記理由で給与が減額されている場合に、その額も支払われたものとして、減額分を実際の支払い金額に加算した賃金です。
1.被保険者の責めに帰すべき理由、本人の都合による欠勤(冠婚葬祭などの私事による欠勤も含みます。)
2.疾病または負傷
3.事業所の休業(休業の理由、休業の期間は問いません。)
4.同盟罷業、怠業、事業所閉鎖等の争議行為
5.妊娠、出産、育児
6.介護
※以上のケースでの給与低下は、本給付の趣旨に外れるため「みなし賃金」の考え方があります。
④ 1年を超えて引き続き雇用されることが見込まれる安定した職に再就職したこと
失業手当受給者が早期に安定した職につくことを促進する給付金なので、「再就職手当」と同じく「継続雇用される見込み」に関する要件があります。
1年未満の雇用契約で再契約の見込みがない場合などは、本要件を満たさないと判断される可能性があるので、ハローワークにご確認ください。
⑤ 同一の就職について「再就職手当」の支給を受けていないこと
同じ雇用保険の給付の一つに「再就職手当」がありますが、同一の再就職について「再就職手当」と「高年齢再就職給付金」は同時受給ができません。「再就職手当」を申請し、受給した場合は「高年齢再就職給付金」の受給資格がなくなります。
どちらの受給資格もある労働者は、どちらの給付金を申請するか、労働者本人が選択する必要があります。二つの給付金の違いは後述します
⑥ 再就職の前日における基本手当(失業保険)の支給残日数が100日以上あること
「高年齢再就職給付金」受給資格のポイントとなる要件です。
必ず確認しましょう。
高年齢再就職給付金の支給を受けることができる期間(支給期間)
支給を受けることができる期間は以下のとおりです。
期間の開始:60歳到達以降の日※で、受給資格を満たした日の属する月から
基本手当の支給残日数 (再就職した日の前日時点) |
支給期間 (起算日:再就職日の翌日) |
---|---|
200日以上 | 2年を経過する日の属する月まで |
100日以上200日未満 | 1年を経過する日の属する月まで |
期間の終了:支給期間に関わらず、65歳に到達する日の属する月まで
ただし、支給には「月の初日から末日まで」雇用保険の被保険者であることが条件です。
たとえば65歳の誕生日に定年し、退職日が月の半ばとなった場合、該当月は給付金が支給されませんので注意しましょう。
※60歳到達日は「60歳の誕生日の前日」(「年齢計算に関する法律」の原則に従う)
参考:高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて|厚生労働省
高年齢再就職給付金の受給できる額(支給額)
高年齢再就職給付金はいくらくらいの金額になるのでしょうか。
受給要件と支給期間がわかったところで、支給額も確認しましょう。
1)支給額の基本的な考え方
支給額は、支給対象となる月に支払われた賃金が、再就職直前の賃金(基本手当の基準となった賃金)からどの程度下がったか(これを「低下率」と呼びます)に応じて計算方法が変わります。
低下率 | 支給額の計算方法 |
---|---|
61%以下 | 支給対象月に支払われた賃金額×15% |
61%より大きく 75%未満 |
- 183 280 × 支給対象月に支払われた賃金 + 137.25 280 × 賃金月 |
75%以上 | 給付金は支給されません |
また、「低下率(%)」は(支給対象月に支払われた賃金額÷「賃金月額※」)×100 で求めます。
※「賃金月額」は次項で説明
2)「賃金月額」の上限額と下限額の適用
高年齢再就職給付金の支給額の計算に使用する「賃金月額」は、「再就職前に受給していた雇用保険の基本手当の算定の基礎となった賃金日額✖️30に相当する額」が便宜上登録されます。
受給資格確認時や支給確認後にハローワークから交付される「受給資格確認通知書」や「支給額決定通知書」でも確認できます。
高年齢雇用継続給付の計算に用いる「賃金月額」には、上限と下限が定められています。
賃金月額の下限額:79,710円(2022(令和4)年8月1日〜)
「賃金月額」が上限額以上(下限額未満)となる場合は、実際の「賃金月額」に代えて上記の額を計算に用います。
3)みなし賃金の適用
「支給対象月に払われた賃金額」に、前項で説明した「みなし賃金」の算定が必要となる減額があれば、支給額の計算は「みなし賃金」で行います。
4)支給限度額と最低限度額の適用
計算後の支給額にも、実際に支給される際の上限と下限があります。
「支給限度額(支給額の上限)」:364,595円 (2022(令和4)年8月1日〜) 支給対象月に払われた賃金額が「支給限度額」以上の場合は、給付金は支給されません。 また、計算後の支給額は支給対象月に払われた賃金額との合計が「支給限度額」を超えないように調整されます。
「最低限度額(支給額の下限)」:2,125円(2022(令和4)年8月1日〜)
計算後の支給額がこれを下回る場合は給付金は支給されません。
3)と4)の上限と下限の額は、毎月勤労統計の平均定期給与額の増減をもとに、毎年8月に改定されます。
参考:令和4年8月1日から支給限度額が変更になります|厚生労働省
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高年齢雇用継続給付(再就職・基本給付共通)支給額の計算
高年齢再就職給付金の支給額の計算は「高年齢雇用継続基本給付金」と同じです。 支給額の計算には注意点が多いですが、計算の手順を守ればそれほど難しくありません。
<計算の手順>
- 支給対象月に支払われた賃金額が「支給限度額」を超えていないか確認する。
- 賃金月額が、支給額計算に使用できる上限額・下限額に抵触しないか確認し、計算に使用する「賃金月額」を決定する。
- 支給対象月に支払われた賃金額÷「賃金月額」×100で低下率(%)を求める。
- 支給対象となる「低下率」かどうか確認する。
- 支給対象となる「低下率」の場合、「低下率」にあった計算方法を選択し、計算する。
- 計算後の「支給額」について「支給限度額」・「最低限度額」の観点から、支給の有無の確認と支給額の調整を行う。
※「支給限度額」など毎年改定される数字もあるので、計算時は必ず最新の厚生労働省のリーフレットを参照されてください。
リーフレット:高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて|厚生労働省
「賃金月額」が30万円の場合の計算例
計算の基本と手順がわかったところで、具体的な数字を使って計算してみましょう。
手順①と②で、今回例とする賃金月額(30万円)は、「支給限度額」および計算に使用できる賃金月額の上限額、下限額に抵触しないことを確認。そのまま計算に使用します。
支給期間中に支払われた額のパターンを4つにわけて、手順③〜⑥まで続けると計算結果は下記になります。
支給期間中に支払われた額(A)の | 低下率=(A)÷賃金月額(30万円) | 支給額と計算方法 |
---|---|---|
260,000円 | 86.67% | 支給されない(低下率が75%未満でない) |
200,000円 | 66.67% | 低下率が61%を超える場合の計算で下記のとおり 支給額=- 183 280 × 20万円 + 137.25 280 × 30万円 = 16,340円 |
180,000円 | 60.00% | 低下率が61%以下の場合の計算で下記のとおり 支給額=180,000円×15%= 27,000 円 |
8,000円 | 2.67% | 支給されない(計算後支給額が最低限度額以下) 支給額=8,000円×15%= 1,200 円となるが、支給される最低額2,125円以下のため支給対象外となる |
※端数処理の関係で、試算額と実際の支給金額は異なる場合があります。詳細は省きますが、およその計算方法として参照ください。
高年齢雇用継続給付「給付金早見表」の使い方
低下率によっては複雑な計算が必要になる支給金額ですが、厚生労働省リーフレットに掲載の「給付金早見表」を使用すれば、簡単におよその額を求めることができます。
「給付金早見表」
低下率 | 支給率 | 低下率 | 支給率 | 低下率 | 支給率 |
---|---|---|---|---|---|
75.00%以上 | 0.00% | 70.00% | 4.67% | 65.00% | 10.05% |
74.50% | 0.44% | 69.50% | 5.17% | 64.50% | 10.64% |
74.00% | 0.88% | 69.00% | 5.68% | 64.00% | 11.23% |
73.50% | 1.33% | 68.50% | 6.20% | 63.50% | 11.84% |
73.00% | 1.79% | 68.00% | 6.73% | 63.00% | 12.45% |
72.50% | 2.25% | 67.50% | 7.26% | 62.50% | 13.07% |
72.00% | 2.72% | 67.00% | 7.80% | 62.00% | 13.70% |
71.50% | 3.20% | 66.50% | 8.35% | 61.50% | 14.35% |
71.00% | 3.68% | 66.00% | 8.91% | 61.00%以下 | 15.00% |
70.50% | 4.17% | 65.50% | 9.48% |
※早見表は下記出典を見て作成(2022年度版)
出典:高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて|厚生労働省
<早見表を使った計算の手順>- 支給対象月に支払われた賃金額が「支給限度額」を超えていないか確認する。
- 賃金月額が、支給額計算に使用できる上限額・下限額に抵触しないか確認し、計算に使用する「賃金月額」を決定する。
- 支給対象月に支払われた賃金額÷「賃金月額」×100で低下率(%)を求める。
- 早見表のなかの「低下率」から近似値を探し「支給率」を確認する。
- 「支給率」×「支給期間中に支払われた賃金額」で概算支給額を計算する。
- 計算後の「概算支給額」について「支給限度額」・「最低限度額」の観点から、支給の有無の確認と支給額の調整を行う。
前項と同じく、賃金月額30万円かつ、支払われた賃金は20万円で計算して見ると、下記のとおりになります。
- 賃金月額 30万円は「支給限度額」に抵触しない。
- 賃金月額 30万円は、支給額計算に使用できる上限額・下限額に抵触しない。そのまま計算に使用する。
- 低下率は 20万円÷30万円×100= 66.66%
- 早見表のなかの「低下率」から近似値を探し「支給率」(8.35%)を確認
- 概算支給額は 8.35%×20万円=16,700円
- 計算後の「概算支給額」は「支給限度額」・「最低限度額」に抵触しないので、実際の支給時の調整は不要。
詳細な計算をした場合と、若干の誤差は生じますが、およその金額をシンプルに求めることができるので活用してみてください。
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高年齢再就職給付金を申請する際の注意点
老齢厚生年金の一部が支給停止される場合がある
特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)の支給を受けながら、同時に高年齢再就職給付金の支給も受ける場合は、給付額に応じ年金の一部が支給停止(併給調整)される場合があります。
特別支給の老齢厚生年金:
厚生年金の支給開始が65歳に引き上げられたことを踏まえて設置された年金。60歳以降に在職(厚生年金保険に加入)しながらもらえるのが特徴。
詳細につきましては、最寄りの年金事務所へお問い合わせください。
参考:失業給付・高年齢雇用継続給付を受けるとき|日本年金機構
高年齢再就職給付金と再就職手当は併給不可
高年齢再就職給付金の受給資格がある場合、もうひとつ選択できる可能性がある雇用保険の給付が「再就職手当」です。どちらも、基本手当(失業手当)を受給しながら求職活動を行う労働者が、早期に就職することを促進するための給付ですが、支給内容が異なります。給付金ごとの具体的な金額の違いは次項で詳述します。
この2つの給付は、同一の再就職に際しどちらかを選択する必要があり、どちらも受給することはできません(併給不可)。事業主は労働者本人が各給付の内容を理解して、適切な判断ができるよう検討を促す必要があります。
再就職手当※1 | 高年齢再就職給付金 | |
---|---|---|
おもな 支給要件 |
・基本手当の支給残日数 3分の1以上 ・離職前の事業主による再雇用でない ・就職した会社から求職の申込み前に、すでに内定をもらっていない など |
・60歳以降に再就職し雇用保険に加入 ・基本手当の支給残日数 100日以上 ・基本手当の対象被保険者期間 5年以上・再就職後の賃金額が基本手当の基準となった賃金の75%以下に低下 など |
支給額 | 支給残日数分×基本手当日額×60%か70% (一定の上限・下限あり) ※基本手当の支給残日数が ・所定給付日数の2/3以上 …70% ・所定給付日数の1/3以上 …60% |
再就職後の賃金額の最大15%、賃金額の低下率によって逓減 (一定の上限・下限あり) |
支給方法 | 一括支給 | 原則2ヶ月ごとに申請し都度審査後に支給 ※再就職前日時点で基本手当の支給残日数が ・200日以上で最大2年間 ・200日未満100日以上で最大1年間 ・また、上記に関わらず、65歳に達する日の属する月で打ち切り |
申請期限 | 再就職日の翌日から起算して1ヶ月以内 | 最初に支給を受けようとする支給対象つきの初日起算で4ヶ月以内に初回申請を行う |
年金関係 | 年金と併給調整されない (同時受給可能) | 年金と併給調整される (年金が一部支給停止となる可能性がある) |
その他 | 再就職手当の受給者は、一定の要件を満たせば「就業促進定着手当」を受給できる可能性あり※2 | 「再就職手当」の申請の結果、審査で不支給となった場合でも「高年齢再就職給付金」の受給資格を満たせば別途申請が可能 |
※1 再就職手当の詳細は下記を参照ください
雇用保険受給資格者のみなさまへ「再就職手当のご案内」
※2 再就職手当の受給者は、一定の要件を満たせば「就業促進定着手当」を受給できる可能性があります。「就業促進定着手当」は再就職後の賃金が以前に比べて一定程度低下した場合に受給できる給付です。
参考:「就業促進定着手当」が受けられます|厚生労働省
上記の表は下記2つのリーフレットを元に作成しています。
高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて|厚生労働省
雇用保険事務手続きの手引き《令和4年4月版》第10章 高年齢雇用継続給付について
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再就職手当と高年齢再就職給付金はどっちが得?
「再就職手当」と「高年齢再就職給付金」。どちらの受給要件も満たす場合、労働者はどちらの給付金を申請するか選ぶ必要がありますが、支給額の計算が違うため給付額に違いがでます。
複数の条件が絡むため、実は、どちらの方が得なのか・金額が大きいのかは一概には言えません。
具体的な条件で試算して確認する必要があるので、再就職手当の計算方法を確認しつつ、ケーススタディをしてみましょう。
再就職手当の計算方法
再就職手当の計算式は下記のとおりです。
支給額=支給残日数分×基本手当日額×60%か70%
<再就職手当 計算の手順 ※1>
- 基本手当の支給残日数(※2)を求める(所定給付日数- すでに受給した日数)
所定給付日数は受給者資格と年齢、雇用保険被保険者であった期間で決まります。
(ハローワークインターネットサービス – 基本手当の所定給付日数) - 基本手当日額を求める(※3)
1.賃金日額=退職前6カ月間の給与総額÷180
2.基本手当日額=賃金日額×45~80%(賃金日額と年齢によって率が異なる) - 基本手当日額が、支給額計算に使用できる上限額・下限額(※4)に抵触しないか確認し、計算に使用する「基本手当日額」を決定する。
- 計算に使用する係数(60%か70%か)を、支給残日数から求める
- 支給額の計算に当てはめて計算する>
※1と※4「支給限度額」など毎年改定される数字もあるので、計算時は必ず最新の厚生労働省のリーフレット類を参照されてください。
雇用保険受給資格者のみなさまへ「再就職手当のご案内」
雇用保険の基本手当日額が変更になります(令和4年8月1日から)|厚生労働省
※2と※3 当該労働者の「支給残日数」、「所定給付日数」と「基本手当日額」は「雇用保険受給資格者証」に記載されているので、それを使用するのが簡単です。
再就職手当と高年齢再就職給付金の金額シュミレーション
シュミレーションするケース:60歳で定年退職後、基本手当を受給し、再就職したAさん
- 退職時の給料(賃金月額) 300,000円
- 退職時年齢 60歳(定年退職)
- 退職時の雇用保険被保険者期間通算 25年
- 基本手当受給済日数 40日→残りの支給日数110日(150日の2/3以上)
- 再就職後の給料 180,000円
<再就職手当 計算の手順>にそって実際に計算
- 基本手当の支給残日数
60歳で、被保険者期間が20年以上あるので所定給付日数は150日
うちすでに受給した日を引くと、支給残日数は110日 - 基本手当日額を求める(※実際は雇用保険受給資格者証を見るのが確実です)
賃金日額=300,000×6÷180 =10,000
基本手当日額はA(5,144)=(10,000×0.8)-0.35×{(10,000-5030)/6,090}×10,000または
B(4,948)=0.05×10,000+4,448のいずれか低い方なのでB(4,948円)を使用 - 基本手当日額が、再就職手当の支給額計算に使用できる上限額(5,004円)に抵触しない ので、そのまま使用する。上限額は上記リーフレット参照。
- 計算に使用する係数(60%か70%か)
支給残日数110日は所定給付日数150日の2/3以上なので、係数は「70%」 - 支給額=支給残日数(110)×基本手当日額(4,948)×70%=380,996円(一括)
<高年齢再就職給付金>を計算
前述した「賃金月額」が30万円の場合の計算例(「賃金月額」が30万円の場合の計算例)を参照ください。
・退職時の給与と再就職後の給与から、低下率が61%以下の場合の計算をして下記になります。
支給対象月の支給額=180,000円×15%= 27,000 円(月)
・このケースでは失業保険の支給残日数が100日以上、200日未満なので状況が変わらなければ「高年齢再就職給付金」は1年間受給できます。
・合計で受給できる金額は 27,000×12ヶ月=324,000円(年・分割) となります。
今回のケースでは、再就職手当の方が得(金額が大きい)という結果になりました。
とはいえ、どちらがどのくらい特になるかは、個人の状況によってかなり異なります。
高年齢再就職給付金は、在職老齢年金を受給する場合、その支給停止額も考慮しなければなりません。
労働者本人がよく理解する必要があるとともに、会社担当者も本人の納得の元に手続きできるよう、検討をサポートする必要があります。
▼『再就職手当』について詳しく知りたい方はこちら
再就職手当の申請で審査落ちする理由とは?申請漏れの対処法も解説
離職後、早期に再就職できた人を対象に再就職手当が支給されます。 再就職手当の申請をしたものの不受理の通知が届いたあるいは申請し忘
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高年齢再就職給付金の申請方法
高年齢再就職給付の申請は、対象労働者を雇い入れた際の雇用保険の加入手続きと同時に「受給資格の確認」をするところから始まります。
対象労働者と手続き開始の流れは下記になります。
上記の表は下記の手引きを参考に作成しています。
雇用保険事務手続きの手引き《令和4年4月版》第10章 高年齢雇用継続給付について
対象労働者が雇用保険(基本手当等)を受給していなかった60歳以上65歳未満の労働者を採用した際は「高年齢雇用継続給基本給付金」の支給対象となる場合があります。
※「高年齢雇用継続給付」および「高年齢雇用継続基本給付金」については、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
高年齢再就職給付金の申請手続き:提出者と提出先
提出者:事業主(申請者の雇用主である会社等)
提出先:企業等の所在地を管轄するハローワークあるいは電子申請
高年齢再就職給付金の受給資格確認手続:提出書類
新規雇い入れの対象労働者についてハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する際、同時に受給確認の必要書類を提出しましょう。受給資格の有無により、ハローワークから「受給資格確認通知書」または「受給資格否認通知書」が交付されます。
提出書類:
・高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
・払渡希望金融機関指定・変更届
書類はハローワークインターネットサービスからダウンロードできます。
高年齢再就職給付金の申請手続き(初回):提出書類・添付書類
受給資格が確認されたら労働者に交付するとともに、「受給資格確認通知書」に記載の「賃金月額」を確認します。
支給対象月の賃金が、通知書に記載の「賃金月額の75%」未満に低下した場合支給を受けることができるので、給付金申請を行いましょう。
提出書類:
・高年齢雇用継続給付支給申請書 ※受給資格確認後にハローワークから交付されます。
申請添付書類:
・賃金台帳や出勤簿など、支給申請書の内容を確認できる書類
・被保険者(当該労働者)の年齢確認書類(運転免許証または住民票の写し)※
※あらかじめマイナンバーを届け出ている場合は、支給申請書にマイナンバーを記載すれば年齢確認書類を省略できます。
参考:高年齢雇用継続給付の手続の際、 運転免許証等の写しを省略できます|厚生労働省
高年齢再就職給付金の申請手続き:申請時期
初回の支給申請時期:
最初の支給対象月(受給要件を満たし、給付金の支給の対象となった月)の初日から起算して4か月以内
2回目以降の支給申請時期:
ハローワークが指定する期間(原則として2ヶ月ごと)
高年齢再就職給付金の申請手続き:支給決定と支給方法
支給の決定:支給申請書に基づきハローワークが申請内容を確認した後、支給の可否および額が「支給決定通知書」で通知されます。
支給方法:
給付金は「払渡希望金融機関指定・変更届」で指定された被保険者本人の金融機関口座に振り込まれます。
支給の時期:
支給決定から約1週間程度で給付金が振り込まれます。
高年齢再就職給付金の申請手続き:e-Govを使った電子申請
高年齢再就職給付金の申請は「e-Gov」での申請が可能です。 「e-Gov(https://www.e-gov.go.jp)」は総務省が運営する、各省庁へのオンライン申請・届出サービスです。
下記リーフレットに「高年齢雇用継続基本給付」の電子申請の案内も載っているので、参考にしてみてください。
参考リーフレット:雇用保険関係手続き電子申請のご案内
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高年齢再就職給付金と高年齢求職者給付金の違い
「高年齢再就職給付金」と名称が似ている雇用保険の給付に「高年齢求職者給付金」があります。
「高年齢求職者給付金」は、65歳以上で離職した者のうち再就職の意欲・能力があって求職中である場合に、雇用保険の「基本手当(失業給付)」の代わりに受給できる給付です(65歳以上は雇用保険制度上、高年齢被保険者となり、基本手当の給付対象外となるため)。
<高年齢求職者給付金の受給が想定されるケース>
・65歳で定年退職し、引き続きフルタイムの職を探している場合
・66歳で自己都合退職し、週10時間程度のパートをしながら、週20時間以上の職を探している場合
「高年齢再就職給付金」と「高年齢求職者給付金」の違いを簡単にまとめると下記のようになります。
高年齢再就職給付金 | 高年齢求職者給付金 | |
---|---|---|
給付対象となる 雇用保険被保険者 |
一般被保険者 ※離職後、求職活動を早期に終了し再就職した被保険者 |
高年齢被保険者 |
給付の目的 | 60歳以上65歳未満の離職者の早期就業促進 | 65歳以上離職者の求職中の生活支援 |
給付のタイミング | 再就職により賃金が一定以上低下した場合、再就職後に受給する | 離職を経て求職の申し込み後、求職中に受給する |
※高年齢求職者給付金については、こちらの記事で詳しく解説しています。
▼『高年齢求職者給付金』について詳しく知りたい方はこちら
高年齢求職者給付金を徹底解説!【65歳からの失業保険】
「高年齢求職者給付金」という制度をご存じでしょうか? 65歳未満の人が失業した際に支給されるいわゆる「失業手当」に対し、高年齢求
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高年齢再就職給付金のよくある質問
Q 高年齢再就職給付金の受給資格を再就職時点で満たさなかった場合は?
A 受給資格を満たさなかった場合は、その後において被保険者であった期間5年以上を満たすことはないため、再就職後に受給資格が発生することはありません。
Q 高年齢再就職給付金は誰から振り込まれる?
振込者名は「コウセイロウドウショウ ショクギョウアンテイキョク」となります。
金融機関によっては、振込者名の表示が途切れたりする場合もあります。
参考:雇用保険事務手続きの手引き《令和4年4月版》第10章 高年齢雇用継続給付について
Q 高年齢再就職給付金は65歳以上の労働者でも貰えるか?何歳まで申請できるか?
A 高年齢再就職給付金は60歳以上65歳未満の雇用保険一般被保険者を対象にした給付です。65歳以上の求職者の場合は「高年齢求職者給付金」の受給対象者となる可能性があるので、ハローワークにご相談ください。
Q 高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金は同時にもらえる?
A 高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金は受給資格が相反するので、同時にもらえることはありません(併給不可)。
Q 前職を定年で(または早期退職制度を利用して、または転職のため)退職した。再就職したが、高年齢再就職給付金は申請できるか?
A 高年齢再就職給付金は受給資格を満たせば申請できます。前職の退職理由は問われません。また、前職の退職が60歳より前であっても受給資格を満たす場合があるので、支給対象となりそうな場合で受給を希望する場合は、会社を通じハローワークへ受給資格確認を行いましょう。
Q 高年齢再就職給付金と育児休業給付および介護休業給付は同時受給が不可?
A 同じ雇用保険関連給付金となる育児休業給付と介護休業給付には併給調整があります。
支給対象月(初日から末日まで全日)に育児休業給付または介護休業給付の対象となる休業をした場合、その月の高年齢再就職給付金は受けられません。
※ただし、月の一部のみ育児休業または介護休業給付の支給対象となる場合は給付可。
Q 高年齢再就職給付金の初回申請期限(受給資格発生から4ヶ月以内)を失念していた。申請忘れの場合、給付金は受給できないのか?
A 2年の時効の期間内であれば、支給申請が可能です(書面・電子申請どちらも可)。「高年齢再就職給付金」のほか、「再就職手当」「就業促進定着手当」「高年齢雇用継続基本給付金」も同様に時効期間内であれば申請が可能です。ただし、給付金リーフレット等には「特別な事情があると認められない限り、期限を過ぎての申請は受け付けません」とも記載があるため、気がついた時点ですぐに管轄のハローワークに相談することをおすすめします。
参考:申請期限が過ぎたことにより給付を受けられなかった方へ|厚生労働省
Q 高年齢雇用継続給付(基本給付・再就職給付)は受給者本人が手続きすることは可能?
A 原則は事業主が手続きをすることとなっていますが、やむを得ない理由があれば本人申請も可能です。労働者が本人申請を希望する場合は事業主が申請をサポートすることが努力義務となっているため、会社は労働者が制度を十分に理解した上でスムーズに受給申請できるよう努めましょう。
参考:雇用保険法施行規則 101条の5及び9
参考:Q&A~高年齢雇用継続給付~ Q6 |厚生労働省
Q 高年齢雇用継続給付(基本給付・再就職給付)は契約社員やパートでももらえるか?
A 原則として下記の受給資格を満たせば、フルタイムの正社員、有期雇用の契約社員、非常勤の嘱託職員、パートタイマー、派遣社員など雇用契約の種類によらず、受給申請が可能です。派遣社員の場合は、派遣先ではなく、派遣元に相談してください。
・60歳以上65歳未満の雇用保険一般被保険者であること。
・被保険者であった期間が5年以上あること。
ただし、下記のケースでは雇用保険の加入状況を個別に確認してください。
・地方公務員・国家公務員
原則として雇用保険の被保険者ではありませんが、日本郵政株式会社や国立大学法人などの雇用保険法の適用事業所に勤務していれば被保険者であることがあります。
・個人事業主
労働者ではなく、使用者であるため、雇用保険の被保険者ではありません。
・業務委託契約等で業務を行っている場合
労働契約ではないため、雇用保険の加入義務がありません。
・会社役員等
法人の役員等(取締役、執行役員、監査役等)は、原則として雇用保険の被保険者にはなりません。ただし、兼務役員等で従業員の立場も持っており、雇用保険に加入しているケースもあります。
Q 高年齢雇用継続給付(基本給付・再就職給付)は課税される?確定申告が必要?
A 高年齢雇用継続給付金は所得とはみなされず課税されません。非課税のため、確定申告の必要もありません。
Q 高年齢雇用継続給付(基本給付・再就職給付)の受給者にボーナスや残業代が支払われた場合の影響は?
A 賞与は賃金月額等の計算時に除外、それ以外の毎月支給の手当等は計算に反映します。
賞与・臨時支給のボーナス:
60歳到達時の賃金月額、支給額を決定する低下率の算定ともに計算に含めない
残業代や通勤費:
60歳到達時の賃金月額、支給額を決定する低下率の算定ともに計算に含める
参考:雇用継続給付金支給申請 ワンポイント!! – 支払われた賃金額 について|ハローワーク品川
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まとめ
本記事では、高年齢雇用継続給付のうち高年齢再就職給付金を説明しました。同じく雇用保険の給付である再就職手当や老齢在職年金などと同時に受給できない点について注意が必要ですが、60歳以上で新たに雇用した労働者がいる場合は、本人の意思を踏まえて忘れずに手続きしましょう。資金計画に不安ならFPへ相談を
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