退職金所得控除の5年ルールを活用し税制上有利に退職金を受け取る方法
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退職金が支給される際は、税法上の計算により税金が控除されます。この過程で重要なのが「退職所得控除」であり、この額により最終的な税額が変わります。退職所得控除5年ルールとは退職所得控除の計算にあたり、確定拠出年金制度と一時金の退職金制度を併用する企業から退職金をもらう際に活用できる仕組みです。詳しく解説します。
- 【この記事を読んでわかること】
- 「退職所得控除5年ルール」は税制上有利になる仕組み
- 「退職所得控除5年ルール」が適用可能なのは退職一時金制度と確定拠出年金制度を併用している企業の場合のみ
- 上記の制度面での条件に加え、退職金を受け取る期間と順番がクリアされた場合のみルールが適用できる(=税の優遇が受けられる)ようになる
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退職所得控除5年ルールとは
退職所得控除の5年ルールとは、退職金から控除する税額を決定する際に用いられる勤続年数の考え方について、税制上有利に計算をおこなえるようにする仕組みのことです。
ただし、このルールが適用されるには確定拠出年金制度と退職一時金制度を併用している企業である等一定の条件が揃っている事が必要です。
退職所得控除は退職金の税額の計算に必要
退職所得控除の5年ルールを説明するにあたり、まずは退職所得控除について理解が必要です。
退職所得控除とは、退職金の税金額を決定し手取り額を算出する際に必要となるものです。退職金の税金は、税法上計算された「退職所得額」に対して課されるもので、法律で定められた計算式によって算出します。
今回は、多くの人が該当すると考えられる「一般退職手当等」で見ていきましょう。具体的には以下の式に当てはめて計算をおこないます。
退職所得額=(一般退職手当等の収入金額-退職所得控除額)✕ 1/2 |
ここでいう「一般退職手当等の収入金額」とは、退職金の総支給額のことです。額面の支給額から「退職所得控除額」を引くため、退職所得控除の額が大きくなるほど、退職所得額が少なくなることが分かります。退職所得額は、退職金に税金がいくら課されるのかの元となるもののため、この額が少ないほど納める税金(=源泉徴収される額)が少なくなり、手取り額が多くなります。
退職所得控除額の計算方法
それでは、退職所得控除額の計算方法を説明します。ここでポイントになるのは勤続年数(確定拠出年金制度の場合は加入年数)です。
以下の式に当てはめて算出します。
勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円✕A (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円+70万円✕(A-20年) |
上記の式では、勤続年数が20年以上か20年超かにかかわらず、どちらのケースも勤続年数が長い(数値が大きい)方が退職所得控除額が大きくなります。
つまり、勤続年数が長い方が退職所得控除額が大きくなり、結果として退職所得額が少なく算出されるため、課税額も低く抑えられるということが分かります。
退職所得控除額の計算における勤続年数の考え方
上記の内容からも分かるように、退職金の課税額の算出において勤続年数の数字は大きな影響を与えます。
そのため通常は、退職金を受け取る年の前年以前19年以内に何らかの退職金を受け取っている場合、重複した勤続年数分は退職所得控除の算出に用いることができない仕組みです。
例えば、確定拠出年金制度と退職一時金制度を併用している企業において、退職金を受け取る場合、いくつかのパターンが考えられますが、退職一時金を先に受け取り、そのあと確定拠出年金制度の運用分を一括で受け取った場合をとりあげましょう。
この場合、退職所得控除5年ルールは適用にならず、前述の「前年以前19年以内に何らかの退職金を受け取っている場合」に該当し、勤続年数の重複分は差し引いて計算します。
以下は具体的な事例です。
勤続35年のAさんは退職一時金制度の退職金2,000万円、確定拠出年金制度は10年間加入し、運用資産500万円を一時金として受け取ることができるとします。
【先に退職一時金2,000万円を受け取り、その後確定拠出年金制度の500万円を受け取るケース】
勤続35年の場合の退職所得控除額は上の式より
退職所得控除額=800万円+70万円✕(35年-20年)=1,850万円
課税の対象となる退職所得額は
退職所得額=(2,000万円-1,850万円)✕1/2=75万円
このように、退職所得として算出された75万円に対してまず税金が課されることとなります。
そして、上記退職金を受け取ったあとに確定拠出年金をもらう場合には、前述の「前年以前19年以内に何らかの退職金を受け取っている場合」に該当するため、退職所得控除の優遇が適用できず 、以下のような計算式になります。
退職所得額=500万円✕1/2=250万円
先に受け取った退職一時金分75万円への課税に加え、このように確定拠出年金制度の一括受け取りについても、250万円に対して課税されるのです。
ここで注意すべきは、確定拠出年金は制度上、遅くとも75歳までには受給していなければならないという点です。
つまり、退職金を受け取ってから確定拠出年金を受け取るまで19年もの年数を開けることは現実的ではないため、確定拠出年金を一括で受け取る際には確定企業年金に加入していた10年間は、勤続年数に重複してしまうことにより、退職所得控除の優遇が適用されません。
このケースの結果をまとめると、①退職一時金を受け取ったあとに②確定拠出年金を一括で受け取ると①の際に75万円への課税②の際に250万円へ課税されるという計算になりました。
退職所得控除5年ルールの適用には受け取る順番と時期が大切
こちらでは、税制上の優遇を最大限利用する受け取り方を説明します。
ここで出てくるのが、「退職所得控除5年ルール」と呼ばれる、勤続年数の重複分を差し引きしない優遇措置です。
ポイントは「退職金を受け取る順番」と「受け取る時期」です。
先ほどのAさんを例にとって見ていきましょう。
勤続35年のAさんは退職一時金制度の退職金2,000万円、確定拠出年金制度は10年間加入し、運用資産500万円を一時金として受け取ることができるという内容は同じです。
退職所得控除の5年ルールを適用するためには、まず先に確定拠出年金を一括で受け取り、5年経過したあとに退職一時金制度による退職金を受け取ります。
退職所得控除の5年ルールとは、このような場合に、前述のような勤続年数の調整をせず、退職所得控除を受けられるという仕組みを指します。
【先に確定拠出年金制度で500万円を受け取り、5年経過後に退職一時金2,000万円を受け取るケース】
まず、確定拠出年金の一括受け取りに対する退職所得額を計算する場合に、勤続年数(ここで言う加入年数)10年で退職所得控除の計算を進めることができます。
退職所得控除額=40万円✕10年=400万円
退職所得額=(500万円-400万円)✕1/2=50万円
このように、確定拠出年金制度の課税対象となる退職所得額は50万円です。
また、5年経過後に退職金を一時金で受け取る場合について、5年ルールが適用となるので、勤続年数35年という部分をそのまま使うことができ、退職所得控除額は以下の計算になります。
退職所得控除額=800万円+70万円✕(35年-20年)=1,850万円
課税の対象となる退職所得額は以下の式で求めましょう。
退職所得額=(2,000万円-1,850万円)✕1/2=75万円
よって、75万円に対して課税されることが分かります。(ここで算出される退職所得額は、退職一時金を先に受け取るケースと同じ結果です。)
受け取る順番を①確定拠出年金から②退職一時金にし、両者の間隔を5年空けることによって、Aさんは①の際に50万円への課税、②の際に75万円への課税で済む結果となりました。
前述の受け取り方よりも、明らかに課税額が少なくなります。
退職金は自身のライフプランにあった受け取り方を
これまで、退職所得控除の5年ルールについて説明してきましたが、確定拠出年金制度については「一時金・年金・一時金と年金の両方」とさまざまな受け取り方を選ぶことができます。
退職所得控除という税制優遇について考慮すれば、たしかに上記の5年ルールを活用した受け取り方は、税金を抑えて手取り額が増えるという点で有利かもしれません。
しかし、確定拠出の運用実績も受け取る金額に大きく影響してくるため、上記の優遇措置にとらわれず、退職後の再就職や年金の受給状況等、自身のライフプランにあった総合的な判断が必要です。
まとめ
退職所得控除5年ルールとは、退職金のさまざまな制度のうち、確定拠出年金制度と退職一時金制度の両制度を導入している企業から、一定の条件下で退職金を受け取る際に適用される税制上の優遇措置です。
具体的には、両制度のうち、まず①確定拠出年金制度からの退職金を一括で受け取ります。そして②5年経過後に退職一時金制度による退職金を受け取ると①・②両者の退職所得控除額において、勤続年数の重複分を考慮せずに計算ができるというものです。これにより課税額が安く抑えられ、退職金の手取り額が多くなります。
退職所得控除額の5年ルールが適用されるように退職金を受け取ると、たしかに税制上は有利に退職金を受け取ることができ、手取り額が多くなるという点ではお得です。しかし、確定拠出年金制度は、一括・年金・一括と年金の併用というようにさまざまな受け取り方法があります。受け取り額は運用実績によっても変動するため、一概に5年ルールありきで受け取ることが得策ではない場合も考えられます。
あくまでも選択肢のひとつと捉えて、総合的に判断し自身のライフプランにあった退職金の受け取り方を選びましょう。
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