経理と会計の違いはどこにある?財務や税務との違いも合わせて解説
経理と会計の違いは、どこにあるのでしょうか? 一見似ているように見えますが、経理は日々のお金の動きを記録し、会計は財務状況を外部に報告する役割を持っています。 今回は、経理や会計のそれぞれの業務内容や、財務や税務との違いも合わせて解説します。
- 【この記事を読んでわかること】
- 経理と財務の違いは、お金のやり取りの記録か財務状況の報告かという点にある
- 経理や会計の仕事の一部は財務や税務と重なる
- 平均年収は経理が432万円、会計が504万円と会計の方が高い傾向にある
- 経理は作業の正確さ、会計は根拠をもとに説明できる力が求められる
経理と会計の役割の違いはお金の記録か報告かにある
経理の役割は日々のお金のやり取りの記録である一方、会計の役割はお金の動きの外部への報告であるので、過去の記録を分析して報告や見直しをおこないます。
それぞれの役割について詳しく解説していきます。
経理|日々のお金のやり取りを記録する
経理の役割は、企業活動において日常的に発生するお金のやり取りを記録することです。
たとえば、現金管理や帳票作成などの小さいものから、毎月の売掛金の管理や決算書の作成などの大きいものまで、会社のお金の動きはすべて記録していきます。
日々のお金の動きを記録しないと、いくら使っていくら儲けたのか、曖昧になってわかりません。そのため、経理は企業活動をするうえで欠かせない、土台のような役割を担っています。
会計|記録されたお金の動きを外部に報告する
会計の役割は、経理が作成したお金の記録を分析して会社の損益を確定し、関係者などに報告することです。
具体的には財務諸表を分析して株主総会で決算報告をおこなったり、収支を把握して会社の経営判断のサポートをおこなったりします。
会計の仕事は経理の仕事をもとにして成り立っているので、一部業務が重なる部分もあります。しかし会社内部のお金の動きをデータにまとめるのか、内部の記録を分析して外部に報告するのか、という目線で見ると違いは明らかです。
ほかにも、経理・会計と似ている言葉に税務がありますが、税務は会社が納める税金を計算して納税のための書類を作成する仕事です。一般的には経理部門が担当することが多い傾向にあります。
ここまで経理と会計の基本的な違いを解説してきましたが、次は経理と会計の実際の業務内容の違いを解説していきます。
経理と会計の業務内容の違いはお金を扱う局面にある
経理が記録したお金のデータをもとに、会計が分析・報告や見直しをおこなうという一連の流れがあります。
そのため、お金を扱う局面の違いから、経理と会計の業務内容の違いが発生します。
では、それぞれ実際にどのような業務をしているのかを、具体的にみていきましょう。
経理のおもな4つの業務内容
経理の業務内容は、大きくわけると以下の4つがあります。
- 現金出納管理
- 売掛金・買掛金管理
- 決算作成
- 社員の勤怠・給与関連手続き
それぞれの役割について詳しく解説していきます。
現金出納管理
現金出納管理とは、現金の入出金をおこない、残高と会計帳簿の一致を確認することです。
備品の購入など、ちょっとした現金が必要なときに担当者からの依頼を受けて現金を渡し、金額を帳簿に記録します。
また、経費の精算も経理の仕事です。
取引先までの交通費など業務を進める際に必要となる費用は会社が負担するため、社員からの申請を受けて領収書を受け取り、経費の精算をおこないます。
売掛金・買掛金の管理
売掛金や買掛金が正常に処理されたかを確認・管理するのは、経理の大事な仕事のひとつです。
売掛金や買掛金とは、掛取引で使われる勘定科目のひとつで、商品を売買する際に代金をあとで支払うときに発生するものです。
たとえば、売上が立ってから実際に請求書で代金を請求するまでにはブランクが生じるため、売上の適切な管理が欠かせません。そこで、売掛金などの形で売上を処理することで、目に見えない売上を管理します。
決算作成
経理が年ごとにおこなっている業務は、おもに以下の2つです。
- 決算書類の作成・確定申告
- 社員の年末調整
決算書の作成や確定申告は、経理の大きな仕事のひとつです。
貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の財務三表を作成し、毎年3月15日までに確定申告をおこないます。
なお確定申告で納めるべき法人税や事業税などの各種税金は本来、税務担当者が計算・納付しますが、税務がいない会社では経理が担当することがほとんどです。
社員の勤怠・給与関連手続き
取引先への対応だけではなく、社員の勤怠管理や給与計算なども経理の仕事です。勤怠管理の情報に基づいて給与計算をおこない、毎月の給与額を確定してから社員一人ひとりに給与を振り込みます。
また、社員の年末調整も経理の仕事です。
毎年12月末におこなわれ、源泉徴収で納め過ぎた社員の税金の還付手続きをおこないます。
ちなみに、このような年末調整や前述した決算業務が重なる12月から3月ごろまでが、1年を通して経理がもっとも忙しい期間といわれています。
ここまで経理の業務内容を解説してきました。次は、会計の業務内容をみていきましょう。
会計のおもな2つの業務内容
会計の業務内容は、管理会計と財務会計のおもに2種類にわけられます。
財務会計
財務会計とは、株主をはじめとする社外の利害関係者に対し、財務諸表を使って会社の財政状態や経営状況を明らかにする業務です。
経理や財務が作成した貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を使って、株主総会で前年度のお金の動きや利益状況を説明します。
管理会計
管理会計とは、自社の経営判断の材料として活用することを目的とした社内向けの会計のことです。目標と現状の乖離を把握する予実管理や、会社の収支を把握する資金繰りの管理などがあげられます。
どの部署が利益を出し、どの部署が苦戦しているかがわかるので、管理会計は今後の経営方針を決めるうえでも欠かせません。
ここまで経理と会計の仕事内容を説明してきましたが、このような仕事をしている人の平均年収はいくらなのでしょうか。次で解説していきます。
経理の平均年収は432万円、会計士は504万円
政府の統計によると、企業規模10人以上の企業において経理などの職に就く人の平均年収は約432万円です。また、弊社にて大手転職サイト2社を調査した結果、会計士の年収相場は約504万円であることがわかりました。
経理の知識はもちろん、分析スキルや全体を俯瞰できる視野の広さが求められることから、経理よりも会計の方が平均年収が高い傾向にあります。
ただし、一概にデータのとおりに年収が決まるわけではないので、実際に募集されている業務の内容や給料をしっかりと確認してから応募しましょう。
ここまで経理と会計の平均年収をみてきましたが、このような年収に見合う仕事ができる経理や会計になるためには、どのような能力が求められるのでしょうか。次で解説していきます。
経理と会計に求められる能力の違い
経理や会計に求められる能力にはそれぞれ違いがあるので、以下で解説します。
経理|正確に一つひとつの作業を確実にこなせる人
経理には、細かい計算や入力などを一つひとつ、正確かつ確実にこなせる人が向いています。
会社のお金の動きは細かく、正確に記録する慎重さがないと務まりません。ひとつ間違うとあとから間違いを探すのが困難になることも多いです。
どのような仕事にも一定の正確さは求められますが、とくに顕著に求められる仕事です。
会計|数字から根拠を持って事実を論理的に説明できる人
会計は社外へ会社の財政状況や経営状況を伝える役割があるため、どのような質問が飛んできても正確な数字から根拠を持って、論理的に説明できる人が向いています。
株主はみずからの大切な資産を会社に投資してくれている存在なので、いい加減な説明は許されません。財務諸表の分析や読み取りができるレベルが求められます。
ここまで経理や会計に向いている特徴を説明しましたが、転職を考える人は次で紹介する資格の取得も合わせて検討すると採用率も上がるでしょう。
経理には「簿記検定」、会計には「公認会計士」の資格がおすすめ
経理や会計へ転職を考えている人におすすめの資格を、以下でそれぞれ紹介します。
経理なら簿記検定
経理を目指すなら、企業からの需要も高い簿記検定を受けるのがおすすめです。
経理未経験なら簿記3級、よりビジネスレベルに近づけたいなら簿記2級がおすすめです。試験内容は実際の業務に直結しており、勘定科目の仕訳や決算書の作成など、経理の実際の仕事内容の基本となる知識を身につけられます。
参考:「簿記|日本商工会議所」
会計なら公認会計士
会計を目指すなら、監査・会計のプロである公認会計士の資格が有利に働くでしょう。企業の会計業務に不正がないか監査をおこなう会計資格の最高峰であり、財務諸表や決算書に間違いがないことを会計の目線で証明できる唯一の人材になれます。
難関資格であり簡単に合格はできませんが、会計のプロを目指すなら検討する価値はあります。
まとめ|経理と会計の違いは記録するか報告するかにある
本記事を通して、以下のことがわかりました。
- 経理と財務の違いは、お金のやり取りの記録か財務状況の報告かという点にある
- 経理や会計の仕事の一部は財務や税務と重なる
- 平均年収は経理が432万円、会計が504万円と会計の方が高い傾向にある
- 経理は作業の正確さ、会計は根拠をもとに説明できる力が求められる
経理と会計の違いがわからない人は、まずそれぞれでお金を扱う局面が違うことを理解しましょう。
経理と会計の仕事内容は一部重なる部分がありますが、その役割は異なります。
また経理や会計への転職を検討している人は、向き不向きや求められる能力を知っておくことも大切です。
そのうえで、どちらがより自分の興味ある仕事なのかを考えてから選ぶようにしましょう。