65歳の貯金平均額は2376万円!今からできる老後資金の増やし方

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円安の進行に物価高騰、そして老後2000万円問題。近い将来定年を迎える方の中には、老後資金に対して漠然とした不安を抱える方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、65歳以上の無職世帯における貯金の平均額や収支のデータを参考に問題を洗い出し、その問題に対して今からできる対策を考えます。

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老後資金2,000万円問題に代表されるように、老後の生活費はひとりあたり数千万円が必要と言われています。
漠然とした不安を抱えるのは辛いものです。まずは現状を把握し、どのような対策が必要なのかを相談してみましょう。

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  • 【この記事を読んでわかること】
  • 65歳以上の世帯平均貯蓄額は2736万円
  • 夫婦の場合も単身の場合も年金収入のみになると赤字が見込まれる
  • 資産形成をしながら65歳以降も働く方法がおすすめ

全世帯の貯蓄額平均値は1880万円

多くの世代に強烈なインパクトを与えた「老後2000万円問題」。特に定年を間近に控える世代では、「みんなはどれくらいの貯金をしているのか」「本当に2000万円が必要なのか」といった点は非常に気になるところでしょう。
総務省統計局が発表した「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-(二人以上の世帯)」によると、2人以上の世帯の平均貯蓄額の平均値は1880万円。前年度より89万円増加しているだけではなく、3年連続の増加となっています。
このデータを見て「若い世代を含めて2000万円近く貯金がある人が多いの?」と驚かれるかもしれませんが、これはあくまでも平均値です。同調査では、全体のうち貯蓄額が4000万円を超える世帯は12.8%、3000~4000万円の世帯も6.7%にのぼります。つまり、一部の世帯が平均値を引き上げているという実態があるのです。
同データを小さい順から並べた際に真ん中にくる中央値は1104万円ですので、こちらの方がリアルな金額であるといえるでしょう。

参考:「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-(二人以上の世帯)・貯蓄の状況|総務省統計局」

65歳以上の世帯の貯蓄額平均値は2736万円

それでは実際に「老後2000万円問題」の当事者となる65歳以上の世帯の平均貯蓄額はいくらかというと、平均値は2376万円、中央値は1588万円です。さらに、貯蓄額が2000万円を超える世帯は、全世帯の場合が30.7%であったのに対し、65歳以上の世帯の場合は41.3%となっており、年齢が高い世代の方が貯蓄額が多くなる傾向にあることがわかります。実際に平均値を引き上げている貯蓄額4000万円超の世帯も17.7%、3000~4000万円の世帯も9.2%と、全世帯の時よりも増加しています。
とはいえ、「年齢が上がれば貯金が増える」というわけではありません。65歳以上の世帯の中には貯蓄が100万円未満という世帯も8.3%あり、貯蓄が1000万円以下の世帯は37.1%。全体の4割近くにものぼるのです。貯蓄額に不安を抱えた状態で定年を迎えるという世帯も少なくないことがわかります。

貯蓄のピークは60代

住宅ローンや車のローン、子どもの学費など、貯蓄とは別に負債もあるという方も少なくないでしょう。同調査の別のデータでは世帯主の年齢と貯蓄現在高や負債の関係も明らかになっています。以下は総務省統計局のデータに独自の計算データ(貯蓄額と負債額の差)を加えたものです。

世帯主の年齢平均40歳未満40~49歳50~59歳60~69歳70歳以上
貯蓄現在高1880万円1366万円1134万円1846万円2537万円2318万円
負債現在高567万円726万円1172万円692万円214万円86万円
貯蓄額と負債額の差1313万円640万円▲38万円1154万円2323万円2232万円
負債保有世帯の割合37.7%59.2%63.7%52.6%28.0%12.5%

貯蓄のピークが60代であるのに対し、負債のピークは40代です。50代までは全世帯のうち半数以上の世帯が負債を保有していますが、60代からは急激に負債保有世帯が低くなっています。貯蓄現在高と負債現在高をみても、60代が最も多くなっており60代が貯蓄のピークであることがわかります。
つまり、負債額が急激に減る60代こそが「貯めどき」といえるでしょう。

参考:「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-(二人以上の世帯)・世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況|総務省統計局」

貯蓄の種類は定期性預貯金が大部分を占める

先ほどのデータでは貯蓄のピークを迎えるのは60代の世帯であることがわかりましたが、その貯蓄はどのような形で保有されているのでしょうか。同調査では65歳以上の無職世帯の貯蓄の種類についても次のように明らかにしています。

2016年2017年2018年2019年2020年2021年
有価証券17.5%16.5%16.8%16.1%15.2%16.6%
生命保険など16.8%16.9%16.6%16.6%17.3%17.2%
定期性預貯金45.9%45.3%43.5%42.4%40.1%39.5%
通貨性預貯金19.4%21.0%22.6%24.5%27.0%26.6%

貯蓄の6割以上は預貯金によるもので、株や投資信託などの割合はそれほど多くないことがわかります。また、預貯金の中でも定期性預貯金の割合は年々減少傾向にあります。預貯金ではありませんが、財務省が行った「通貨に関する実態調査(令和3年度)」では、自宅で現金を保有する理由として「金融機関に預けても利子がつかない(10.8%)」「手元に資産があると安心(23.9%)」といった回答も目立ちます。定期性預貯金の割合が減少している背景には、定期性預貯金として貯蓄を保有することのメリットが感じにくくなっている点も関係しているのかもしれません。

参考:「通貨に関する実態調査(令和3年度)|財務省」

老後の生活費はいくら?65歳以上世帯の収支

65歳以上の世帯の約4割は2000万円以上の貯蓄を保有していることがわかりました。では、2000万円あれば老後の備えとしては十分なのでしょうか。ここからは総務省統計局が発表した「家計調査報告(家計収支編)2021年(令和3年)平均結果の概要」を参考に、65歳以上の無職世帯の家計の収支をシミュレーションします。

夫婦のみの無職世帯の場合

まず65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支は以下のとおりです。

実収入236,576円
内訳社会保障給付216,519円
その他20,109円
消費支出224,436円
内訳食料65,789円
住居16,498円
光熱・水道19,496円
家具・家事用品10,434円
被服及び履物5,041円
保険医療16,163円
交通・通信25,232円
教育2円
教養娯楽19,239円
その他(交際費含む)46,542円
非消費支出30,664円
月の収支▲18,525円

実収入のうち年金に該当する「社会保障給付」は21.6万円程度。社会保険料や税金などの「非消費支出」は3万円程度、食費や住居費などの「消費支出」は22.4万円となり、月の収支は2万円程度の赤字になります。
「老後2000万円問題」の発端となった市場ワーキング・グループ(金融庁の金融審議会)の報告書では、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦世帯で毎月5.5万円の赤字が生じた場合、30年間で2,000万円の取り崩しが必要となる計算です。仮に2万円の赤字が30年間続いたとすれば720万円となり、2000万円もの貯蓄は必要ないということになります。
ただ、上記の収支はあくまでも一例ですのでこれらのデータだけで「2000万円も必要ない」と考えることは早合点といえます。実際には上記のような収支を自分の世帯に当てはめて計算してみることをおすすめします。

参考:「高齢社会における資産形成・管理|金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」

単身無職世帯の場合

65歳以上の夫婦のみの無職世帯では月の収支は赤字となりましたが、単身世帯の場合はどうでしょうか。ここからは先ほどと同様に65歳以上の単身無職世帯の家計収支を計算します。

実収入135,345円
内訳社会保障給付120,470円
その他14,875円
消費支出132,476円
内訳食料36,322円
住居13,090円
光熱・水道12,610円
家具・家事用品5,077円
被服及び履物2,940円
保険医療8,429円
交通・通信12,213円
教育0円
教養娯楽12,609円
その他(交際費含む)29,185円
非消費支出12,271円
月の収支▲9,402円

実収入のうち社会保障給付は12万円程度、非消費支出は1.2万円程度、消費支出は13.2万円となり、夫婦世帯と同様、月の収支は1万円程度の赤字になります。
夫婦と単身、それぞれのシミュレーションからいえることは、年金だけで生活を賄うことは容易ではないということです。東京都産業労働局が発表した「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」によると、中小企業の退職金の平均額は大学卒の場合で1,031万円、高校卒の場合で786万円。退職金が支給される場合であっても、現役時代からマネープランを立て、資産形成や定年後の暮らし方を考えておく必要があるでしょう。

参考:「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)|東京都産業労働局」

今からできる貯金の増やし方

経済的な不安を抱えることなく老後を過ごすためには、できるだけ早いうちから老後の生活資金を考え、貯蓄を増やしておきたいところです。とはいえ、さまざま事情から「現段階では十分な備えができていない」「このままでは老後の資金が不足しそうだ」という方もいるでしょう。そこでここからは、今からできる老後資金の増やし方や貯め方をご紹介します。

「元気なうちは働く」が基本

「定年=働かない」と決めつけてしまう必要はありません。現役時代のようにバリバリと働くことはなくても、気力、体力ともに「まだ働ける」と感じているのであれば、定年後も働き続ければ良いのです。定年を迎え、それまで数十万円だった月収が数万円程度に減っても、先ほどのシミュレーションの不足額を考えれば十分な金額といえます。
少子高齢化により人手不足が深刻化し続ける昨今、シニアが活躍できる場は広がっています。慣れ親しんだ職場での再雇用はもちろん、これまでの経験を活かしながら再就職したり、新たな分野に挑戦したりしてみるのも良いでしょう。

生活費の見直し

定年により大幅に収入が減ることがあっても、支出が大幅に減ることはありません。定年を迎える前から支出の見直しを行い、無駄な支出を減らしておくことが大切です。
食費や日用品の節約よりも先に見直しておきたいのは固定費です。たとえば通信費の場合はキャリア携帯から格安スマホへ乗り換える、保険料は掛け金が手頃な医療保険に変えるなどの方法があります。固定費は食費や日用品のように毎日節約を意識をする必要がないため、一度切り替えをして慣れてしまえばストレスに感じることもありません。できるだけ日常生活への影響が少なく、精神的なストレスを感じにくい部分から節約をしてみましょう。

資産運用の開始

向こう5年以上使う予定がない貯蓄があるのなら、資産運用を始めましょう。資産運用と一口に言っても株やFX、仮想通貨などさまざまな金融商品がありますが、資産運用は元本が保障されないことを前提に考える必要があります。特にシニアの場合は万が一大損をしてしまった時にリカバリーができない可能性もあるため、リスクの低いものがおすすめです。
投資信託の場合、元本は保証されないものの、投資自体は投資の専門家が行うため値動きは比較的緩やかでリスクが低いものも多くあります。年間120万円までの投資額への分配金や運用益が非課税となるNISAを利用する方法も良いでしょう。また、以前は20歳以上60歳未満の人しか加入できなかったiDeCoも、2022年5月以降は65歳未満まで加入できる上限年齢が延長されています。

年金の繰り下げ受給

老後のために事前に貯めておくものではないものの、老後の収入源のベースとなる公的年金の支給額を増やすという方法もあります。
現在、年金の支給開始時期は75歳まで遅らせることが可能です。支給額を遅らせると、遅らせたひと月分ごとに支給額は0.7%増えます。たとえば65歳で受け取る予定だった年金を70歳まで繰り下げた場合は42%の増額、75歳まで繰り下げた場合は84%の増額となるのです。
定年後も働くことを検討するのであれば、年金の繰り下げもセットで検討することをおすすめします。

資産の売却を検討する

定年が近くなる頃には、子どもが独立したことで自宅の部屋に空きが出ていたり、マイカーに乗る機会が減ったりすることも少なくありません。このような場合は、自宅を売却してコンパクトな間取りの家に住み替えることや、マイカーを手放してレンタカーやカーシェアリングなどを利用することも検討してみましょう。
また、自宅には住み続けつつも、自宅を担保にして老後資金を借りる「リバースモゲージ」や、自宅を売却して現金化しつつ、リース契約を結んでそのまま自宅に住み続けることができる「リースバック」という方法もあります。

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資金計画に不安がある場合、プロであるFP(ファイナンシャルプランナー)への相談がおすすめです。
FPは、相談者の現状やライフスタイルにあわせて最適な資金計画、資産運用や節税などの具体的なアドバイスを提供してくれます。

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漠然とした不安を抱えるのは辛いものです。まずは現状を把握し、どのような対策が必要なのかを相談してみましょう。

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人生100年時代。社会情勢にも変化があり、「定年後」や「老後」の経済状況やライフスタイルもひと昔前とは違った様相を見せています。今回ご紹介したシミュレーションからもおわかりのとおり、年金収入だけでは経済的余裕のある生活は容易ではありません。
定年後の備えはもちろん必要になりますが、焦りや不安感をただ抱えて過ごすだけでは心理的な負担が増えるだけで良いことはありません。定年後も元気なうちは働くことを基本に、資産を増やす方法や支出を減らす方法を今のうちから複合的に実践することをおすすめします。

▼老後資金について詳しく知りたい方はこちら

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執筆者
エイジレスメディア編集部
エイジレス社会の専門誌として、すべての人が何歳でも豊かな暮らしを紡げるよう有益な情報を発信していきます。主に、エイジレスなビジョンを体現している人物や組織へのインタビュー記事を執筆しています。