退職金の源泉徴収票とは?必要になるのはどんな時?基本を解説

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通常よく見る「源泉徴収票」は、年末調整が終わった後や離職時に元の職場から交付されるもので、給与の額などが記載されています。

それに対し、退職金をもらった時にだけ会社から発行される「退職所得の源泉徴収票」があります。

本記事では「退職所得の源泉徴収票」の概要、もらった後の対応などをわかりやすく説明します。

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  • 【この記事を読んでわかること】
  • 事業主は退職者に退職金を支払った場合「退職所得の源泉徴収票」を発行する
  • 退職金受給者は「退職所得の源泉徴収票」で退職金にかかる税金額を知ることができる
  • 確定申告を行う場合は「退職所得の源泉徴収票」が必要になる場合がある

退職金の源泉徴収票とは

税金関連の書類を抱えた女性

従業員に退職金を払う際、会社は退職金から所得税等の源泉徴収を行い、その内容が記載された「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を発行します。退職金にかかる源泉徴収票の正式な書類名は「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」です。書式は国税庁のホームページで確認できます。

参考:[手続名]退職所得の源泉徴収票(同合計表)

源泉徴収の仕組み

源泉徴収とは、給与・賞与や退職金にかかる所得税を、会社が社員の代わりに納付する国の仕組みです。所得税の納付義務は給与等を受け取った個人にありますが、日本中の会社員1人ひとりが毎年確定申告をするのは合理的ではありません。

源泉徴収では、会社が社員に給与等を支払う際にあらかじめ所得税を差し引きます。会社は全社員から預かった所得税を、後日まとめて税務署へ納付するという仕組みです。

原則として事業を行う全ての会社に源泉徴収の義務があります。

参考:令和4年版 源泉徴収のあらまし|国税庁

源泉徴収票とは源泉徴収の明細

源泉徴収票では、会社が行った源泉徴収の結果がわかります。会社からの支払いの総額と、源泉徴収によって支払った所得税の額を確認できます。

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退職金の源泉徴収票と給与の源泉徴収票の違い

オフィスのデスクで書類を読んでいる女性社員

源泉徴収票には大きく分けて下記の3種類があり、内容が異なります。

  • 「退職所得(退職金・退職手当)」の源泉徴収票
  • 「給与所得」の源泉徴収票
  • 「公的年金」等の源泉徴収票

それぞれについて説明します。

退職所得の源泉徴収票

退職所得の源泉徴収票は、退職所得(退職金・退職手当等)を受け取った際に会社から交付される源泉徴収票です。通常、退職所得の源泉徴収票は退職の日以後1ヶ月以内に発行されます。

退職所得にかかる税金の計算方法は給与所得と異なるため、源泉徴収票が別に発行されます。退職所得の源泉徴収票には、退職金の支払い総額や源泉徴収税額に加え「特別徴収税額」と「退職所得控除額」が記載されています。

特別徴収税額とは

退職金に対して課税され、支払った住民税の額です。退職所得は、他の所得と分けて税額計算と支払いを行うことができる「分離課税」が適用されます。そのため、給与所得にかかる住民税とは別に、退職金を受け取る際に源泉徴収で納税を済ませることができます。

退職所得控除とは

退職金を一括受給する場合にのみ認められた控除です。給与控除よりも控除額が大きく、勤続年数によって控除額が増えるのが特徴です。退職所得の源泉徴収票には、受給した社員に適用される控除額が記載されます。

退職金(退職所得)にかかる所得税の計算方法等、詳細についてはこちらの記事で解説しています。

給与所得の源泉徴収票

給与所得の源泉徴収票は、1年間の間に会社が自分に支払った給与などの総額と、源泉徴収によって自分が納付した所得税額が記載されています。給与所得には、賞与や諸手当も含まれます。会社で毎年、年末調整が終わってから配布される「源泉徴収票」は、この「給与所得の源泉徴収票」です。

また、年の途中で離職した際にも、退職した会社から源泉徴収票が発行されます。退職日までの給与所得に基づいて所得税を概算払いした源泉徴収の結果が記載されています。

給与所得の源泉徴収票の発行時期については、下記の通りに定められています。

  1. 支払の確定した日の属する年の翌年1月31日
  2. 中途退職者に係るものについては、退職の日以後1ヶ月以内

公的年金等の源泉徴収票

公的年金等の源泉徴収票は、公的年金等を受給した人に対して1年に1度発行されます。公的年金には、国民年金、厚生年金、企業年金、確定給付企業年金、外国の社会保険に基づき支給される年金などが含まれ、全て所得税の課税対象です。

公的年金等の源泉徴収票は、年金の管理機構それぞれが、対象年の翌年1月頃に発行します。源泉徴収票では、年金の支払総額や源泉徴収され納付した所得税額がわかります。

年金受給者で、下記に該当する場合は、確定申告が必要です。

  • 公的年金以外の所得が年間20万円を超える
  • 公的年金等を年間400万円以上受け取る
  • 各種控除の適用を受け、還付申請をしたい

確定申告では源泉徴収票に記載の情報が必要になるため、大切に保管しましょう。

参考:No.2508 給与所得となるもの|国税庁タックスアンサー
参考:法定調書の種類及び提出期限|国税庁
参考:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁タックスアンサー
参考:法定調書の種類及び提出期限|国税庁
参考:No.1600 公的年金等の課税関係>手続き>(2)公的年金等に係る確定申告不要制度

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退職金の源泉徴収票が必要な場合

税金の申告用の書類

通常、退職金の源泉徴収票が必要になることはありません。退職金にかかる納税は、源泉徴収により、退職金が支給された時点で完了しているためです。しかし、以下の場合など確定申告を行う場合は、退職金の源泉徴収票が必要になります。

  • 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない
  • 副業等での利益が赤字になっている

それぞれについて説明します。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、確定申告で税金の還付を受けることができます。その際に退職金の源泉徴収票が必要になります。

「退職所得の受給に関する申告書」とは

退職金を受ける人が、退職金等の支払を受ける時までに提出する所得税法上の申告書です。通常は退職手続きの中で会社側から書類が支給され、必要事項の記載と提出を求められます。

退職所得の受給に関する申告書を提出していれば、退職金には適切な所得税が課税され、源泉徴収で納付されています。しかし、申告書を提出していなければ退職金には一律20.42%の所得税及び復興特別所得税が掛けられ、源泉徴収されます。

申告書を出したかどうか覚えていない場合は、勤め先に尋ねたり、退職金の源泉徴収票を見て税率を確認しましょう。もし20.42%の所得税が課されている場合は、確定申告をすることにより、払いすぎた税金の還付を受けられる可能性があります。

参考:退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)|国税庁

副業等で赤字になっている

副業での利益が赤字になっている場合は、確定申告で税金の還付が受けられる可能性があります。その際に退職金の源泉徴収票が必要になります。

不動産所得や事業所得など会社員で働く以外の副業がある場合には、確定申告で、副業で発生した赤字分の金額を所得から控除できる「損益通算」を行えます。損益通算によって課税所得額が下がり、所得税も下がれば、余分に払っていた額が還付金として戻る仕組みです。

退職金をもらった年の確定申告は不要

確定申告を準備するための書類

前述の通り「退職所得の受給に関する申告書」を提出済みで、適切に源泉徴収をされていれば、退職金に関する確定申告は必要ありません。

しかし、下記のようなケースでは税金の還付が受けられる可能性がありますので、税務署に相談しましょう。

  • 年末調整を受けられなかった場合
  • 医療費控除など各種控除を受けたい場合

それぞれの場合について説明します。

年末調整を受けられなかった場合

年の途中で退職し、その後企業等で収入を伴う職につかなかった場合は、年末調整を受けることができません。その場合は給与所得等に関する税金の還付を受けられる可能性があるため、確定申告をしましょう。

年の途中とは、12月末日以外のことです。年の途中で退職し、その年中に再び企業に勤める場合は、会社が年末調整をするのが一般的です。ただし、入社の時期によっては個人で確定申告をするよう求められる場合もあります。詳しくは勤務先の担当者に確認しましょう。

医療費控除など各種所得控除を受けたい場合

所得税法では所得控除の制度があり、個人の事情に配慮した課税額の優遇が受けられます。下記の場合などで所得額が設定されています。要件に当てはまれば確定申告を行い、払いすぎた税金の還付を受けられる場合があります。

  • 一定額以上の医療費を支払った場合(医療費控除)
  • 災害や盗難、横領によって資産に損害を受けた場合(雑損控除)
  • ふるさと納税や認定NPO法人等に対して寄附をした場合(寄附金控除)
  • 健康保険料や国民年金保険料などの社会保険料を支払った場合(社会保険料控除)
  • 生命保険・地震保険などの保険料支払いがある場合(生命保険料控除・地震保険控除)

会社の年末調整で対応してもらえる控除もありますが、「雑損控除」「医療費控除」「寄附金控除」は、個人で確定申告をする必要があります。

各種控除の詳細は、国税庁のホームページや最寄りの税務署の相談窓口で確認してみてください。

参考:No.1100 所得控除のあらまし
参考:国税庁|国税に関するご相談について

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まとめ:退職金の源泉徴収票は退職金にかかった税額がわかる書類

この記事では、退職金を受給した際に受け取る「退職所得の源泉徴収票」について概要を説明しました。退職金には所得税・住民税が課税されますが、支給時に源泉徴収でどちらも清算するのが特徴です。「退職所得の源泉徴収票」を受け取ったら、ご自身の納付税額について念の為に確認してみると安心ですね。

また、退職後のプランや個人の事情によって、その年の確定申告の必要有無が変わります。所得税を払いすぎている場合は還付が受けられる可能性もありますので、専門家への相談をお勧めします。

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執筆者
阿部雅子
人事/キャリアコンサルタント
人事担当として約12年強、採用から人事管理、退職までをサポート。業界はIT系スタートアップ/ブライダル/政府系研究機関等。国家資格キャリアコンサルタント。中小企業での各種雇用調整助成金の受給やコンプライアンスのための規程整備等の経験が豊富。