定年制度とは|65歳定年制の年齢の引上げと今後の働き方

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「そもそも定年制とは何か」
「今後も定年の年齢は引き上がっていくのか」
「定年が延長する中でどのように働いていけばいいのか」
定年制度は年齢の引き上げがたびたび行われているため、不安に思う人も多いのではないでしょうか。
本記事では、定年制度と定年が延長する中での働き方を詳しく解説していきます。

▼定年制度の推移について詳しく知りたい方はこちら

  • 【この記事を読んでわかること】
  • 定年制度とは雇用が終了する制度ですが、希望があれば継続雇用が可能なケースもある
  • 定年制度が引上がる理由は時代の背景にあり、世界でも定年制度は廃止や延長の傾向
  • 今後は70歳までの雇用義務化が予想される
  • 定年が延長していく中でどのように働いていけばよいか

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定年制度とは雇用契約が終了する制度

定年制度とは|65歳定年制の年齢の引上げと今後の働き方

定年制度とは事業者と労働者の間で、あらかじめ定めた年齢に達した場合に交わされた雇用契約が終了する制度です。

ただし事業者が定める年齢によっては、労働者が雇用の継続を希望した場合、引き続き雇用となるため、この限りではありません。

定年の年齢は高齢者雇用安定法8条に定められており、「事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、該当定年は、六十歳を下回ることができない。」としています。

参考:厚生労働省「高年齢雇用安定法改正の概要」

定年制度は年金制度が始まったことにより定着し始めた

「定年制度」は昭和初期に始まった制度となり、55歳定年からスタートしましたが、定年制度が定着するまでに時間を要しました。

当時、相続は家督相続となっており、特定の相続人が1人で全財産をもらい受ける制度でした。

そのため当時は年金制度もなく、多くの国民は生涯働くか、今までの蓄えを使い生活するかの選択肢しかなかったからです。

しかし、第二次世界大戦後に、福祉制度がある程度整備されたことで変化が訪れます。
社会福祉制度が充実しはじめた頃に年金制度が始まりました。
年金制度が始まったことにより、定年制度が定着しはじめたとされています。

現在の定年制度を解説

定年制度とは|65歳定年制の年齢の引上げと今後の働き方

改正を繰り返し、定年制度の年齢がよくわからない人も多いのではないでしょうか。
2022年の現在では、以下の内容が法律で決まっています。

・60歳定年
・65歳の雇用確保措置(継続雇用)の義務化
・70歳の就業機会の確保

つまり、60歳以上に定年の年齢を定める必要がありますが、定年を迎えたからといって必ず退職をしなければいけないわけではありません。

事業主は定年を迎えた人の中で、希望者全員を対象として65歳まで雇用を継続する義務があるため、希望者は雇用継続が可能です。

さらに、2021年からは70歳まで雇用を継続できるよう、事業主は努めていく必要があります。

現在はこのような内容となっている法律ですが、どのような改正をして今に至るのか詳しく解説します。

1988年に60歳定年が定められた

60歳定年と定められたのは、1988年です。

その後、以下のような改正がおこなわれてきました。

・2000年に65歳までの雇用確保措置(努力義務)
・2006年に65歳までの雇用確保措置(義務化)
・2013年に65歳までの継続雇用の(義務化)
・2021年に70歳の就業機会の確保(努力義務)

上記のとおり努力義務が10年未満で義務化されていく改正がたびたびおこなわれています。
そのため、今後も70歳までの雇用義務化が予想されます。

雇用確保措置

65歳までの雇用確保措置とは、事業主が以下3つの措置のいずれかを実施しなければなりません。

  1. 65歳まで定年年齢を引上げる
  2. 希望者全員を対象とする、65歳までの継続雇用制度を導入
  3. 定年制度の廃止

継続雇用制度

上記の「希望者全員を対象とする、65歳までの継続雇用制度を導入」となっている、65歳までの継続雇用制度とは、雇用している高齢者を本人の希望によって定年後も引き続き雇用する制度です。

継続雇用制度には2種類あり、再雇用制度と勤務延長制度があります。

再雇用制度定年で一旦退職として区切りをつけて、新たに雇用契約を結ぶ制度
勤務延長制度定年で退職とせずに、引き続き雇用する制度

就業機会の確保

70歳までの就業機会の確保とは、2021年に4高齢者就業確保措置として、以下のいずれかの措置を講じる努力義務を新設しました。

努力義務は、強制ではないため、違反した場合の罰則は定められていません。

  1. 70歳までの定年引上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
  4. 70歳までに業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
  6. a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
    b.事業主が委託、出資(出資提供)等する団体が行う社会貢献事業

参考:厚生労働省「高年齢者の雇用」

2013年に定年制が65歳まで引き上がった理由は少子高齢化社会

戦後の定年は55歳ですが、定年制の年齢は寿命に大きく関係しています。

1950年(昭和25年)当時の平均寿命は男性約59歳・女性約62歳です。

厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」によると、2021年の平均寿命は男性約81歳・女性約88歳となり、1950年と比較して男性は約22年・女性は約26年平均寿命を上回っています。

人生100年時代といわれる近年、少子高齢化社会となり以下のような時代の変化が見られました。

・労働者の減少
・健康な高齢者が増え、労働意欲のある高齢者が増加

このように時代の変化に合わせて改正も繰り返されています。

2013年に65歳まで雇用義務が引き上げられた理由の大きな要因は経済活動の縮小が懸念されるためといえます。

経済活動の縮小が懸念される背景には少子高齢化による労働力不足です。

今後は少子高齢化によって人口減少が加速し、社会保障制度が成り立たなくなる課題が挙げられます。

参考:厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」

今後は70歳定年制の義務化が予想される

定年制度とは|65歳定年制の年齢の引上げと今後の働き方

2021年に施行された高齢者雇用安定法では、65歳の雇用確保を義務とした上で70歳までの就業機会確保の努力義務が定められています。

現在は70歳では努力義務とされていますが、これまでの改正の歴史を考えると、将来的には70歳定年制の義務化が予想されるでしょう。

また、少子高齢化社会も加速するため若年層の減少と高齢者の増加も要因のひとつといえます。

海外でも定年制度は禁止や延長傾向

今後70歳の定年制の義務化が予想されますが、海外の定年制はどのように定めているのでしょうか。

定年制を廃止している国は以下の国です。

・アメリカ(法律によって定年制禁止)
・イギリス
・オーストラリア
・ニュージーランド

また、定年制を設けている他国では、日本と同様に定年制の年齢が引き上がっています。

シンガポールやドイツもそのひとつとなり、世界的に定年制の廃止や引上げがおこなわれていることがわかります。

海外でも定年年齢と年金受給年齢の関係や、日本ほどではないにしろ、高齢化社会による労働不足などの問題から定年年齢が見直されているのが実情です。

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定年制度が引き上がる理由は時代の背景

定年制度とは|65歳定年制の年齢の引上げと今後の働き方

定年制度はなぜ今後も引き上げられていく可能性が高いのでしょうか。

定年の年齢が引き上げられる理由は少子高齢化を中心に時代の背景が要因となっています。

加速する少子高齢化社会

少子高齢化とは、「少子化」と「高齢化」でわけられます。

少子化とは内閣府「第1章少子化の現状はどのようになっているのか」によると、人口を維持するのに必要な合計特殊出生率が2.08を下回った状態をいいます。

高齢化とは人口に占める65歳以上の高齢者の割合が多くなっている状態です。

高齢化の問題は、先進国では共通の問題となっていますが、日本の場合は高齢化と少子化が同時に進んでいます。

少子高齢化が進むと、働き盛りの若年層を中心に人口減少が始まり、働き手がいなくなってしまうため、定年制の引上げによって高齢者も働き手のひとりとして、経済を支えていかなくてはなりません。

年金開始年齢の引き上げ

年金開始年齢の引き上げも、定年の年齢が上がっていく要因のひとつです。
現在、老齢基礎年金は65歳に支給が開始されます。
厚生年金は2000年の法律改正で、開始年齢が60歳から65歳に引き上げられました。

厚生年金の場合は2030年までに、段階的に引き上げ予定とされています。

2018年4月には、財務省の財政制度分科会において「年金の支給開始年齢を65歳から68歳へと引き上げる」という提案がなされたという報道があり、今後はさらに年金開始年齢が引き上がっていくと予想されます。

そのため、定年退職後にすぐに受給できていた年金がもらえなくなり、収入がまったくない空白の期間が生まれてしまいます。

具体的には、年金開始年齢が70歳となった場合に、65歳で退職したとすると、すぐに受給できていた年金がもらえず5年間年金収入がない状況です。

このような状況に陥らないための対策のひとつとして、年金開始年齢まで働けるように定年制が今後も引き上げられていくと予想されます。

活力に溢れた高齢者の増加

将来の金銭面からくる不安やゆとりある生活がしたいことから、意欲的に働きたい高齢者は増加しています。

内閣府「平成29年版高齢社会白書高齢者の就業」の意識調査によると、「何歳ころまで収入がともなう仕事をしたいか」の調査に、約4割の高齢者が「働けるうちはいつまでも」と回答しました。

この結果からも高齢者は高い就業意欲を持っているといえます。

また令和元年の健康寿命は男性約73歳・女性約75歳となっていることから、65歳の雇用義務が終了したあとも、できれば収入がともなう仕事がしたいと思う高齢者が多数いるといえます。

こういった高齢者の就業意欲も、定年の引上げの理由のひとつです。

参考:厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」
内閣府「平成29年版高齢社会白書高齢者の就業」

▼定年70歳時代について詳しく知りたい方はこちら

今後、定年が延長していく中での働き方

定年制度とは|65歳定年制の年齢の引上げと今後の働き方

今後定年が延長していく中で、どういった働き方があるのでしょうか。

3つ紹介していきます。

働きなれた職場で再雇用制度と勤務延長制度を利用する

「働きなれた職場で仕事を続けていきたい」このように思う人は多いのではないでしょうか。

再雇用制度と勤務延長制度は、なじみのある職場環境で定年後も働き続けられるメリットがあり、業務内容や人間関係も引き続き変化がないため安心して働けます。

一方で収入ダウンが予想されたり、再雇用では定年前と同じ立場ではなく異動となる可能性もあります。

再就職をする

近年は、高齢化社会なこともあり、高齢者の雇用に前向きな企業が多くあります。

再就職のメリットは今までの経験や人脈を活かして、仕事内容を選んだり、新たなチャレンジができる点です。

反対に経験や人脈がなく、職種が限定される場合には最低賃金になってしまうデメリットもあります。

再就職先を探す方法は以下が挙げられます。

・シニア向け求人サイトで探す
・転職エージェントにや派遣会社に登録する
・ハローワークで探す
・知人に紹介してもらう

このように高齢者でも仕事を探す方法はあるため、高齢者の再就職も難しくない時代といえます。

起業する・フリーランスになる

定年後に起業したり、フリーランスになったりすることも選択肢のひとつです。

定年の区切りを迎え、今までの経験やスキルを活かして「いつかやりたい」と思っていた夢を叶えるのもよいでしょう。

またフリーランスでは働く時間や場所を自分で決められる働き方も可能です。
会社勤めの働き方とは違い、自由な働き方として注目されています。

セカンドライフとキャリアプランを検討してみよう

定年とは強制的に雇用が終了するわけではなく、事業主と労働者の両者にとって節目となる制度です。

現在、事業主が強制的に雇用を終了できるのは65歳となります。

努力義務となっている70歳までの雇用は、本人が希望すると70歳まで働ける企業が徐々に増加してきているのが実情です。

そのため、これからもますます働く高齢者が増加すると考えられます。

人生100年時代といわれる近年、定年制が延長するにあたって、どのような働き方をしていきたいのかを考えていく必要があります。

多様化するシニアの働き方がある中で、ご自身の理想のセカンドライフと今後のキャリアプランをじっくり検討してみるとよいのではないでしょうか。

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執筆者
エイジレスメディア編集部
エイジレス社会の専門誌として、すべての人が何歳でも豊かな暮らしを紡げるよう有益な情報を発信していきます。主に、エイジレスなビジョンを体現している人物や組織へのインタビュー記事を執筆しています。