ポイント制の退職金制度とは?メリット・デメリットと計算方法も解説
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日本の企業における退職一時金の主流は、年功を重視する基本給連動型です。しかし、最近では従業員の在職中の貢献を退職金額に反映するニーズが高まり、ポイント制退職金が注目されるようになりました。この記事ではポイント制退職金の特色やメリット・デメリット、基本的な計算方法などについて解説します。
- 【この記事を読んでわかること】
- 退職金制度は基本給連動型が多く導入されているが、ポイント制のニーズが高まっている
- ポイント制退職金は従業員の在職中の貢献を退職金額に反映できる
- ポイント制退職金を導入するには人事制度の整備が必要
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退職金の計算方法のひとつであるポイント制
退職金を一時金で支給する場合、計算方法にはいくつかの種類があります。ここでは、ポイント制のほか、おもな計算方法を紹介します。
ポイント制
ポイント制とは事業主が従業員にさまざまな要素をポイント化して付与し、退職金額を算出する方式です。在職中に累積されたポイント数にポイント単価をかけた額を退職金額とします。ポイント制は在職中の貢献度を退職金額に反映できる方式として、注目されています。
定額制
定額制の退職金制度とは、勤続年数と退職事由(自己都合か会社都合か)で退職金額が決まるシンプルな計算方法です。勤続年数と退職事由ごとの退職金額を表にしておけば、支払う側も受け取る側も退職金額を把握できます。定額制では在職中の貢献度の評価はできず、勤続年数の同じ人の退職金は同額になります。そのため、貢献度の高い人に報いる方法を別途考えなければならないのが弱点です。しかし、規模の小さい事業所でまずは退職金制度を整えたい場合には、導入しやすい方法です。
基本給連動型
基本給連動型とは、退職時の基本給に勤続年数、退職事由を反映して計算する方式です。一般的には、勤続年数に基づく支給係数と、退職事由(自己都合や会社都合)に基づく退職事由係数を用います。
基本的な計算式は以下のようになります。
基本給連動型は運用が容易で導入しやすいため、多くの事業所で導入されてきました。しかし、退職時の基本給をもとにするため、場合によっては退職金額が高額になりすぎるおそれがあります。また、定額制と同様に勤続年数が長い人が有利で、貢献度は評価されにくい点もデメリットです。
退職金額を抑えるために、退職時の基本給でなく在職中の平均額を用いる方法も取り入れられるようになりました。
別テーブル制
別テーブル制とは基本給と無関係に勤続年数ごとに基準額を定めて、退職時の役職に応じた係数と退職事由のテーブル(表)をもとに退職金を計算する方式です。基準額を給与と別に設定するため、退職金額が想定外に高額になるのを避けられます。退職時の役職が評価の対象となるため、在職期間全体の貢献が反映されない点はデメリットです。
ポイント制退職金が注目される背景
多くの企業では基本給連動型の退職金制度が主流でしたが、最近ではポイント制を導入する企業も増加しています。ポイント制退職金はなぜ注目されるのでしょうか。
貢献度を反映した制度の必要性
実際に導入されている退職金制度で最も多いのは、基本給連動型です。基本給連動型の退職金制度には、以下のような問題点があります。
- 退職時の基本給がベースのため退職金額が高くなりがち
- 支給係数が勤続年数によって決まるため、中途入社の人が不利になる
- 在任期間全体の貢献は反映されない
- 年功序列から成果主義への流れに逆行している
このような問題点の解決策として、ポイント制退職金が適していると考えられています。ポイントの付与の方法に各事業所の意向を反映させやすく、経営理念に沿った制度設計が可能になるからです。また、貢献が認められる制度のため、従業員のモチベーションアップにもつながります。
ポイント制退職金の導入実態
各事業所で実際に導入されている退職金制度の実態はどうなっているでしょうか。厚生労働省の平成25年就労条件総合調査のデータを紹介します。なお、この調査では退職金の算定方法について「複数回答あり」としています。
基本給連動制 | 別テーブル制 | 定額制 | ポイント制 | |
---|---|---|---|---|
調査企業全体 | 55.6% | 14.6% | 7.8% | 19.0% |
従業員1,000人以上 | 25.2% | 14.7% | 3.7% | 51.3% |
従業員300人以上1,000人未満 | 36.7% | 14.9% | 5.2% | 39.6% |
従業員100人以上300人未満 | 61.1% | 14.4% | 9.1% | 12.8% |
調査企業全体(平成20年) | 56.6% | 15.7% | 11.1% | 18.0% |
前回調査の平成25年からわずかの差ですが、基本給連動性の割合は減少し、ポイント制は増加しています。また、ほとんどの企業規模でポイント制は別テーブル制や定額制よりも多く導入されていることがわかります。
ポイント制退職金のメリット・デメリット
ポイント制退職金には多くのメリットがありますが、デメリットもあります。それぞれを把握しておきましょう。
ポイント制退職金のメリット
ポイント制退職金には労使それぞれにメリットがあります。
事業所にとってのメリット
職務内容・役職など事業所独自の基準でポイント設計をすることで、退職金額に経営理念の反映が可能です。また、退職金と給与が切り離されるため、給与改定に退職金への影響を考慮する必要がありません。
従業員にとってのメリット
勤続年数が長ければ退職金額が多くなる制度でなく業績が反映されるため、意欲の向上が期待できます。また、中途採用でも成果をあげれば退職金を多く受け取れます。
ポイント制退職金のデメリット
ポイント制退職金を導入してから後悔しないため、デメリットも確認しておきましょう。
事業所にとってのデメリット
ポイント制退職金の事業所にとってのデメリットは、公正で自社のニーズに合ったポイント設計は簡単ではない点です。給与との関連性がないため、給付水準の定期的な見直しも必要です。
従業員にとってのデメリット
事業主側の採用理由には退職金額の抑制もあるため、ポイント制退職金は退職金額があまり高額になりません。事業主側のポイント設計にもよりますが、業績のプラス面がないまま長く在籍しても退職金はあまり増えない点に注意が必要です。
ポイント制退職金の計算方法
ここではポイント制の退職金の計算方法と、具体的な計算事例を確認しましょう。
ポイント制の基本的な計算式
ポイント制の退職金は、以下のような計算式で求めます。
ポイント制の計算例
たとえば、以下のように退職金ポイントが設定されていたとします。
- ポイント単価:1万円
- 勤続1年ごとに加算されるポイント:20ポイント
役職 | 役職ポイント(1年ごとに加算される) |
---|---|
主任 | 20ポイント |
課長 | 30ポイント |
部長 | 40ポイント |
退職事由 | 退職事由係数 |
---|---|
自己都合 | 0.7 |
会社都合 | 1.0 |
定年退職 | 1.0 |
この退職金制度で以下のようなキャリアを辿った人の退職金額を試算してみます。
- 入社後5年間一般社員
- 6年目から5年間主任
- 1年目から10年間課長
- 21年目から10年間部長で定年退職(勤続年数30年)
役職ポイント:((5年 × 20ポイント ) + (10年 × 30ポイント)+ (10年 × 40ポイント))× 1万円 = 800万円
退職金額:(600万円 + 800万円)× 1.0 = 1,400万円
ポイント制退職金制度設計の流れ
実際にポイント制退職金を導入する場合、どのような作業が必要でしょうか。制度設計の流れを解説します。
現行制度の分析
最初に、現行の退職金制度の内容を就業規則や退職金規程などで確認します。企業型確定拠出年金などの企業年金を導入している事業所は、規約の確認も必要です。現行の制度で現時点での、従業員ごとの退職金支給額を試算します。
制度の基本設計
ポイント制退職金のモデルを複数パターン作成します。入社後特に評価がなく退職するケースや、順調に昇格するケースなどの退職金の設定が必要です。
モデル退職金から逆算して勤続年数・役職・評価などのポイントを設計していきます。ポイントが設計できたら、ポイント単価や退職事由別係数を決定しましょう。
ポイント制退職金制度の検証
設計したポイント制退職金で、いくつかのキャリアパスのモデルを作成してみましょう。作成したモデルの退職金額を現行制度と新制度で比較します。そのうえで、問題点があればポイント設計を修正します。
新制度に移行
新制度移行時点での従業員ごとの保有ポイント(初期値)を計算し、設定します。新制度に則った就業規則、退職金規程の改訂を行います。ポイント制退職金制度への移行を従業員に知らせ、内容の説明が必要です。
ポイント制導入の注意点
ポイント制退職金の導入を成功させるため、いくつかの注意点を確認しておきましょう。
制度が会社の実態に合っているか
ポイント制退職金の導入では退職金制度だけでなく、人事制度全体を整備する必要があります。透明性の高い人事等級を設定したり、導入後のポイントデータの管理を適切に行ったりなどの体制整備が重要です。そのため、「とりあえず退職金制度を導入したい」のような考え方の事業所にはそぐわない制度といえます。会社の経営方針や実態に合わない場合は、ほかの制度を検討したほうがよいでしょう。
職務等級やランクなどの資格制度の整備が必要
ポイント制退職金を導入すると在職期間中の貢献を退職金額に反映できるメリットはありますが、そのためには社内の人事制度を整備する必要があります。人事制度の整備は簡単ではありませんが、会社の経営方針を反映させた制度設計はさまざまな面でプラスの影響が期待できます。自社が従業員の評価で重きを置きたい要素を人事制度に組み込み、退職金のポイント設計と連動させましょう。
年功重視の運営にならないか
在職中の貢献度を退職金額に反映する目的でポイント制退職金を導入したものの、結果的に年功重視のポイント設計になるケースもあります。職能資格のような人事制度の運営から、年功序列を脱却するように心がける必要があります。
ポイント単価や資格制度の定期的な検証が必要
退職金水準を適正に保つためには、ポイント単価や資格制度の定期的な見直しをしていく必要があります。ポイント制退職金では給与との連動性がないため長期間同じ内容で運営していると、退職金の給付水準が相場とかけ離れる可能性があるからです。
まとめ
ポイント制退職金は企業の経営方針を反映させられる反面、人事制度の整備や給付水準の定期的な見直しが必要です。そのため、どの事業所にも適しているとはいえません。導入したい場合、適切な運営が続けられるかどうかを慎重に検討しましょう。
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