退職金をもらっても扶養に入れる?税と社会保険の両面から解説
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長く勤めた会社からもらえる退職金。通常の給与と違い、まとまった金額となることも。
退職後、家族の扶養に入る際に収入として含めなければならないのか、そもそも扶養に入ることはできるのか不安に思っている人も多いのではないでしょうか。
本記事では、退職金と退職後の扶養の関係について解説します。
退職金や年金など定年前後のお金の仕組みは複雑です。
一人ひとりの価値観や状況によって最適な方法は変わるため、個人の判断で進めると大損しかねません。
そのため、お金を損しないポイントはおさえておきつつ、実際に退職するタイミングが近づいたら専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談することをおすすめします。
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- 【この記事を読んでわかること】
- 退職した配偶者を税扶養に追加する場合、所得税と住民税では「退職金によって生じた所得(退職所得)」の取り扱いが異なる
- 所得税では退職所得を控除を受ける要件となる「合計所得金額」に「含める」
- 住民税では退職所得を控除を受ける要件となる「合計所得金額」に「含めない」
- 退職した配偶者を社会保険上の扶養に入れる際は、被扶養者となって以降の見込み年収が要件となるため、被扶養者となる以前に受給した退職金の有無は問題とならない
退職金を受け取った家族を扶養に入れる手続き
同居の親や配偶者が定年退職し、定年後は無職になる場合、自分(まだ働いている納税者)の扶養に入れるのが一つの方法です。
ただし、退職金によって増えた年収では扶養に入れないのでは…という不安もあります。
いわゆる「扶養」手続きには下記、二つの種類があります。
2)税制上の扶養(年末調整でお馴染みの所得税の配偶者控除、住民税の控除など)
本記事では、退職金が手続きにどう影響するか一つづつ確認していきましょう。
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退職金と税制上の扶養手続き
税制上の扶養手続きにも、代表的なものが2つあります。所得税と住民税です。 所得税と住民税では扶養手続き(扶養控除)を考える際の退職金に関する取り扱いが異なるため、分けて理解しましょう。
配偶者を所得税の扶養に入れる:配偶者控除(配偶者特別控除)
配偶者を自分(納税者)の所得税法上の扶養に入れると、自分の給与所得に対し税法上の優遇が受けられます。「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の制度です。
配偶者控除と配偶者特別控除の違い
配偶者の所得によって適用される制度と控除される金額が異なります。
「配偶者控除」とは
配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であれば配偶者控除が受けられる制度。70歳未満の配偶者であれば、納税者は最大38万円が控除されます。
「配偶者特別控除」とは
配偶者に48万円(令和元年分以前は38万円)を超える所得があるため配偶者控除の適用が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられる制度(ほかの適用要件も満たす必要あり)。納税者は最大38万円が控除されます。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円越950万円以下 | 950万円越1,000万円以下 | ||
配偶者の合計所得金額 | 48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
図の出典:左記Webサイトを元に作成 No.1195 配偶者特別控除|国税庁
配偶者の「合計所得金額」の考え方と退職金
配偶者控除・配偶者特別控除を受けられるかどうかは、扶養に入れる配偶者の「合計所得金額」がポイントです。
企業に勤めていた配偶者が退職して、退職金を受け取り、退職後無職になった場合で、年間を通じてほかに収入源がない場合は「合計所得金額」は「①給与所得」+「②退職所得」となります。
①給与所得とは 源泉徴収する前の給与・賞与などの収入金額から「給与所得控除※」を差し引いた金額です。 退職時に勤め先から発行される「給与所得の源泉徴収票」に「給与所得控除後の金額」という箇所があります。そこに記載されている額が「給与所得」額です。
※給与所得控除額とは
会社員などの給与所得者に認められた控除で、給与などの収入金額に応じて控除額が決められています。たとえば年間の給与などの収入金額が162万5千円までの場合、控除額は55万円です。
②退職所得とは
下記の計算で求めることになっています。
退職所得=(退職金-退職所得控除※)×1/2
※退職所得控除は、下記の表に基づきます。
勤務年数(=A) | 退職所得金額 |
---|---|
20年以下 | 40万×A (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年越 | 800万円+70万円×(A-20年) |
図の出典:左記Webサイトを元に作成 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
<退職所得の計算例>
勤続年数10年の場合、40万円× 10(年)= 400万円が控除額
退職金が350万の場合は(350万円-400万円)×1/2で退職所得は0円。
勤続年数30年の場合、800万円+70万円×10(勤続30年-20年)年=1,500万円が控除額 退職金が1200万の場合は(1200万円-1500万円)×1/2で退職所得は0円。
もっと簡単に確認する方法としては、退職金を受け取ったときに勤め先から発行される「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を参照する方法です。
そこに記載の「支払金額」-「退職所得控除額」×1/2が「退職所得」です。
退職所得控除額はかなり大きいと言えるので、退職金があっても給与所得が103万円より少なければ税金上の扶養に入れることも十分あり得ます。
次に実際に金額を想定して計算してみましょう。
退職金を受けた配偶者を所得税法上の扶養に入れられるケース
ケース1 定年退職する配偶者が下記に該当するケース
・給与収入は年合計で95万円
・勤務年数15年で退職金は600万円
・納税者本人の合計所得金額は900万円以下
<配偶者の合計所得金額の計算>
①給与所得 40万円 =給与収入95万円−給与所得控除55万円
②退職所得 0円 =(退職金600万円−退職所得控除600万円)×1/2
(勤務年数15年の場合の退職所得控除:40万円×15(年)=600万円)
配偶者の合計所得(①+②)が48万円以下であるため、所得税法上の扶養に入れることができる(納税者本人は配偶者控除を受けることができる)と考えます。
本ケースでは配偶者控除の控除額は38万円になります。
ケース2 定年退職する配偶者が下記に該当するケース
・給与収入は年合計で140万円
・勤務年数30年で退職金は1200万円
・納税者本人の合計所得金額は900万円以下
<配偶者の合計所得金額の計算>
①給与所得 85万円 =給与収入140万円−給与所得控除55万円
②退職所得 0円 =(退職金1200万円−退職所得控除1500万円)×1/2
(勤務年数30年の場合の退職所得控除:800万円+70万円×10年=1,500万円)
配偶者の合計所得(①+②)は48万円超133万円以下です。合計所得以外のそのほかの要件を満たせば、所得税法上の一部扶養に入れることができ、配偶者特別控除を受けることができる(納税者本人は配偶者特別控除を受けることができる)場合があります。
本ケースでは配偶者特別控除の控除額は38万円になります。
配偶者の定義や配偶者特別控除のそのほかの要件については、下記国税庁の公式サイトなどでご確認ください。
参考:No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか|国税庁
No.1191 配偶者控除|国税庁
No.1195 配偶者特別控除|国税庁
退職所得がある場合の配偶者特別控除|国税庁
No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
配偶者を所得税法上の扶養に追加するには:会社に報告し手続き依頼
配偶者控除を受ける納税者は勤め先の給与関連部署に報告し手続きを依頼しましょう。 手続きが完了すると、毎月の給与から天引きされる源泉所得税が減額されます。
配偶者を所得税法上の扶養に入れられない場合
配偶者の合計所得が133万円超の場合は、その年は税法上の扶養に入れることができず、配偶者控除・配偶者特別控除を受けることはできません。
納税者本人は会社の年末調整で翌年の扶養状況などの「見込み」を申請する際、変化点として配偶者の収入がなくなるため被扶養配偶者に追加する旨を記載し、会社に伝えましょう。
退職金をもらった配偶者:住民税に関する手続き
所得税と住民税は、基本的に同じ計算方法と控除項目を持っています。
住民税は、所得税の手続きである年末調整や確定申告の情報が勤務先から市町村へ情報提供され、翌年の納付額が決定されます。
ただし、住民税では「退職所得」があっても、扶養控除や配偶者控除を受けるための計算基礎となる「合計所得金額」に含まれないというルールです。扶養する人、扶養される人どちらの「合計所得金額」の計算でも同じとなります。
<所得税と住民税の退職所得の取り扱いの違い>
・住民税では退職所得を控除を受ける要件となる「合計所得金額」に「含めない」
退職金をもらった場合、退職所得が0円以上の場合は確認を!
退職金の額から退職所得を算出し、退職所得が0円以上の場合は住民税に関する控除が受けられる場合があるので、確認してみましょう。
もう一度おさらい:退職所得の計算式 (退職金-退職所得控除※)×1/2=退職所得の金額
※ 退職所得控除は、下記の表に基づきます。
勤務年数(=A) | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×A (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(A-20年) |
図の出典:左記Webサイトを元に作成 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
退職所得がある場合の住民税の扶養に関するケーススタディ
ケース1 扶養すべき妻が退職金を受けた場合(退職した妻が夫の扶養に入る)
・所得税では夫の配偶者控除や配偶者特別控除の対象にならない
・住民税では別途申告をすることにより控除対象となる
ケース2 給与所得者であった夫(納税者本人)が退職金を受けた場合
・所得税では夫は配偶者控除や配偶者特別控除が適用できる場合がある
・住民税では別途申告をすることにより控除対象となる場合がある
退職所得の算入次第で、上記住民税の控除を受けられるようになる場合は、ご自身で住民税の申告を別途行う必要があります。
申告は各自治体によって手続きの詳細が異なるため、各自治体窓口にご確認ください。
また、住民税の申告期限は毎年3月15日までです。 申告の際は退職金を受けた年の翌年の期限日前に手続きをしてください。
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退職金と社会保険上の扶養手続き
退職金受領後に社会保険上の扶養に入ることは可能
社会保険上(健康保険・厚生年金)の被扶養者になれるかどうかは、被扶養者に認定される日以降の年間収入で判定されます。
そのため、被扶養者になる人が退職した勤め先からもらった退職金は被扶養者になるかどうかの要件に関係がありません。
被扶養者になるための要件の詳細は、健康保険組合ごとに異なるので、まずは健康保険被保険者が勤め先を通して要件を確認してみてください。
<協会けんぽの例では下記のとおり>
被扶養者の範囲:被保険者の3親等以内の親族で主として被保険者に生計を維持されている人
年収要件:扶養される人の年収が60歳未満では130万円未満、60歳以上では180万未満
その他要件:
・同居の場合では、被扶養者となる者の年収が健康保険の被保険者の原則1/2未満であること
・別居の場合では、被扶養者となる者は健康保険の被保険者から仕送りなどの援助を受けており、その援助額よりも収入が低いこと
上記のうち「年収要件」は、その年の収入合算や、被扶養者になるよりも過去の収入ではありません。被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間見込み収入額のことをいい、雇用保険の失業給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金などが含まれます。
退職後に社会保険上の扶養に入るケーススタディ
退職金の受給有無も含め、退職後家族の社会保険上の扶養に入れるかどうかケーススタディをみてみましょう。
ケース1 退職し、退職金を受けたケース
1月から退職までの給与と退職金の合計収入が200万円、退職後は仕事をせず無収入となる場合
退職後無職であれば、被扶養者になった先の収入がないため健康保険の被扶養者になれると考えます。
注意点:出産給付金、公的年金も収入とみなされるのでそれらを受給する場合は金額に注意
ケース2 退職後雇用保険を受給するケース
退職後、収入はないが求職活動を行い雇用保険の失業給付(基本手当)を受給する場合
雇用保険の失業給付は収入とみなされるため、受給金額と状況によって被扶養者の認定可否を保険者が判断することになります
ケース3 退職後パートタイマーとして働くケース
60歳退職後にパートタイマーとして勤務する予定で、交通費を含む収入が180万程度見込まれる場合
交通費・通勤手当も収入とみなされるため、健康保険の被扶養者になれないと考えます。
注意点:短時間労働者であっても、雇用契約の内容によっては勤め先で本人が社会保険加入する必要があります
参考:令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構
本記事に記載のケーススタディについては、基本的な考え方と条件例に基づき、シュミレーションをしたものになります。個別具体的なケースは、勤め先、税務署、市町村の関連窓口や専門家への相談をおすすめします。
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まとめ
本記事では、退職金と税制上の扶養手続きを所得税と住民税に分けて解説しました。また、社会保険上の家族の扶養に入る場合の要件に退職金はあまり影響しないことについても確認しました。
定年退職後のライフプラン、ファイナンシャルプランはよくわからないことが多いので、退職前から時間に余裕を持って検討を進めると安心です。
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老後資金2,000万円問題に代表されるように、老後の生活費はひとりあたり数千万円が必要と言われています。
漠然とした不安を抱えるのは辛いものです。まずは現状を把握し、どのような対策が必要なのかを相談してみましょう。
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