老後資金5,000万円必要って本当?その理由や老後資金の実態
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現代では、老後資金として5,000万円必要との声が聞かれます。
老後までに5,000万円もの資金を準備するのは容易なことではなく、本当にそんなに必要なのかと不安になる人もいるでしょう。
今回は老後資金が5,000万円必要と言われる理由をふまえて、老後資金の実態や5,000万円を貯める方法などを解説します。
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- 【この記事を読んでわかること】
- 年金受給額の減少やインフレが影響し老後資金5,000万円が必要になる可能性がある
- 現代の老後の貯蓄額は平均値で2,324万円、中央値で1,555万円
- 老後資金は年金だけでは不十分なので現役時代から準備する必要がある
老後資金5,000万円が必要と言われる理由
老後資金は2,000万円、3,000万円必要など諸説ある一方で、年々必要とされる老後資金が上昇し、近年は5,000万円必要との声も聞かれます。なぜ、老後資金はこれまでの2倍以上も必要といわれるのか、その理由をみていきます。
年金受給額の減少
日本の年金システムは積立制度ではなく、現役世代が受給世代に仕送りする賦課方式です。そのため、仕送りする現役世代が少なくなるほど年金にあてられる財源が縮小し、受給額も減少します。つまり、少子高齢化が進展する現代では、今後年金受給額の減少が著しい傾向にあるのです。年金支給開始年齢の引き上げや繰下げ制度の推奨、給付と負担のバランスを調整する財政検証などさまざまな対策を講じているものの、少子高齢化による年金問題は年々深刻化しています。
2015年時点では現役世代3人につき受給者1人を支えていますが、2020年には2.2人につき1人、2055年には1.4人が1人に仕送りする計算になると予測されているのです。
令和4年度4月分からの年金受給額をみても、令和3年度と比較して減少していることがわかります。
※平均的な収入で40年間就業した場合の給付水準
令和4年度(月額) | 令和3年度(月額) | |
---|---|---|
国民年金(満額の場合) | 64,816円 | 65,075円 |
厚生年金※(夫婦2人分の国民年金を含む標準金額) | 219,593円 | 220,496円 |
参考:日本年金機構「令和4年4月分からの年金額等について」
本来、老後の生活を支えるための年金ですが、このまま年金受給額の減少が続けばさらに年金だけで生活するのは難しい状況になることは確実です。
インフレによる物価上昇リスク
仮に今の時点では老後資金2,000万円で十分であっても、インフレの影響で5,000万円に膨れ上がる可能性があります。現在も増税や生活用品など、生活におけるさまざまな税率、価格が上昇し続けています。つまり、2022年時点で老後資金2,000万円で十分だったとしても、インフレが続けば2022年時点の2,000万円の価値が将来は5,000万円に相当するかもしれないのです。
たとえば20年間で5%のインフレが継続すると10年後には2,000万円が3,258万円に、20年後には5,307万円の価値へと膨れ上がります。
今から将来の老後資金を考える場合、今時点での資産価値ではなく、インフレも加味した資産価値を考える必要があります。そのため、近年は老後資金として5,000万円が必要との声が聞かれるのです。
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老後資金5,000万円が貯められている世帯数
老後資金2,000万円を貯めるのも容易ではないなか、老後資金5,000万円を貯められている世帯はあるのでしょうか。内閣府「令和4年版高齢社会白書」によると、65歳以上世帯の貯蓄平均値は2,324万円、中央値は1,555万円です。平均では2,000万円を超えているものの、5,000万円の世帯は少ないことがわかります。下記は、貯蓄額ごとの世帯分布です。
※単身世帯は対象外
世帯主の年齢が65歳以上の世帯の貯蓄額割合 | |
---|---|
100万円未満 | 7.9% |
100〜200万円 | 4.0% |
200〜300万円 | 3.5% |
300〜400万円 | 3.7% |
400〜500万円 | 3.3% |
500〜600万円 | 3.8% |
600〜700万円 | 3.4% |
700〜800万円 | 3.2% |
800〜900万円 | 2.9% |
900〜1,000万円 | 2.5% |
1,000〜1,200万円 | 5.7% |
1,200〜1,400万円 | 4.5% |
1,400〜1,600万円 | 4.5% |
1,600〜1,800万円 | 3.1% |
1,800〜2,000万円 | 3.3% |
2,000〜2,500万円 | 8.3% |
2,500〜3,000万円 | 6.4% |
3,000〜4,000万円 | 8.7% |
4,000万円以上 | 17.3% |
出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書」
また、下記は総務省統計局「2019年全国家計構造調査」による65歳以降の金融資産です。
※預貯金、生命保険など、有価証券などを含む金融資産
65〜69歳 | 70歳代 | 80歳代 |
1,850万円 | 1,734万円 | 1,6194万円 |
出典:総務省統計局「2019年全国家計構造調査」
現代の高齢者世帯の多くは、老後資金5,000万円を貯蓄しているわけではありません。しかし、内閣府「令和4年版高齢社会白書」によると、経済的な暮らしについて心配がない65歳以上の割合は68.5%との調査結果があります。
しかし、年金受給額の減少やインフレなどの影響が加わってくると20年後、30年後に経済的な心配なく生活できるかはわかりません。必ずしも老後資金が5,000万円ないと生きていけないわけではありませんが、できる限り貯蓄しておくことは必要です。
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老後にかかる生活費や老後資金が必要な年数
老後資金が5,000万円必要といわれる一方で、実際に老後どれくらいのお金がかかるのか把握できていない人は多いでしょう。ここでは、老後にかかる生活費や老後資金が必要とされる年数をみていきます。
老後にかかる生活資金
総務省統計局「家計調査年報2021年 Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支」によると、65歳以上世帯の月の生活費は次のとおりです。
65歳以上の夫婦のみ無職世帯 | 65歳以上の単身無職世帯 | |||
---|---|---|---|---|
月平均額(円) | 構成比(%) | 月平均額(円) | 構成比(%) | |
消費支出(その他消費支出含む) | 224,436 | 100.0 | 132,476 | 100.0 |
食費 住居 光熱・水道 家具・家事用品 被服及び履物 保険医療 交通・通信 教育 教養娯楽 |
65,789 16,498 19,496 10,434 5,041 16,163 25,232 2 19,239 |
29.3 7.4 8.7 4.6 2.2 7.2 11.2 0.0 8.6 |
36,322 13,090 12,610 5,077 2,940 8,429 12,213 0 12,609 |
27.4 9.9 9.5 3.8 2.2 6.4 9.2 0.0 9.5 |
その他消費支出 | 46,542 | 20.7 | 29,185 | 22.0 |
諸雑費 交際費 仕送り金 |
18,807 20,729 1,349 |
8.4 9.2 0.6 |
13,369 15,394 387 |
10.1 11.6 0.3 |
非消費支出 | 30,664 | ー | 12,271 | ー |
直接税 社会保険料 |
12,109 18,529 |
ー ー |
6,056 6,158 |
ー ー |
総合計 | 255,100円 | 144,747円 |
出典:総務省統計局「家計調査年報2021年 Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支」
夫婦世帯で月約25万円、単身世帯で月約14万円の生活資金が必要です。また、生命保険文化センターの調査によると、夫婦でゆとりのある生活を送るには平均月38万円が必要とのデータもあります。
参考:公益社団法人 生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」
老後資金は20〜30年を見据えて考えるべき
厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」によると、平均寿命は男性81歳、女性87歳です。さらに、90歳まで生存する割合は男性27.5%、女性52.0%です。この統計から考えると、老後は20〜30年を見据えるべきであり、老後資金もそれに応じて考える必要があります。
下記は老後10〜30年でかかる、世帯別の平均生活費を基準にした算出した老後のトータル生活費です。
【単身世帯】老後の生活費:144,747円/月 | |||
---|---|---|---|
1年 | 10年(75歳) | 20年(85歳) | 30年(95歳) |
173万6,964円 | 1,736万9,640円 | 3,473万9,280円 | 5,210万8,920円 |
【夫婦世帯】老後の生活費:255,100円/月 | |||
1年 | 10年(75歳) | 20年(85歳) | 30年(95歳) |
306万1,200円 | 3,061万2,000円 | 6,122万4,000円 | 9,183万6,000円 |
参考:総務省統計局「家計調査年報2021年 Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支」
夫婦世帯は20年生きれば生活費だけで5,000万円を超え、単身世帯は30年で5,000万円を超えます。さらに、ゆとりある生活をする場合は、10年で4,320万円、20年で8,640万円、30年1億超の生活費がかかる計算となります。
参考:厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」
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老後資金5,000万円は年金だけではまかなえない
年金は将来的に受給額が減る可能性が高いため、老後資金のメインの柱とはならないでしょう。
実際に令和4年度4月分からの年金額は厚生年金で夫婦2人分の国民年金を含め21万9,593円、国民年金で満額6万4,816円です。また、厚生労働省年金局「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」による実際の支給額は、国民年金で5万5,759円、厚生年金で14万4,587円となります。
単身世帯であれば厚生年金で生活費をまかなえるかもしれませんが、夫婦世帯では夫婦ともに厚生年金受給者でないと生活費はまかなえません。さらに、ゆとりある生活を送るには、夫婦ともに厚生年金受給者であっても不十分です。
年金だけで生活費をカバーするのは現在でも難しいため、将来的にはもっと難しくなるといえるでしょう。そのため年金を老後資金のあてにはせず、生活費の足しにする程度の収入と捉えて、メインの資金は老後前に準備しておくべきです。
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老後資金5,000万円を貯める方法
老後資金を貯金だけで貯めるのは、難易度が高いでしょう。下記で貯金以外で老後資金5,000万円を貯める方法をご紹介します。
確定拠出年金
確定拠出年金は資産運用の1種であり、個人で運用する「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と企業が運用する「企業型確定拠出年金」の2種類があります。将来年金として支給される額は運用によって変動するため、年金額は増えることもあれば減ることもある点が特徴です。元本が保証されないケースがある点がデメリットですが、運用益が非課税かつ少額から投資できる点がメリットです。
つみたてNISA
つみたてNISAは少額投資非課税制度の1種であり、少額から積み立てられる資産運用です。毎年40万円まで非課税で最長20年まで運用でき、いつでも換金できる点がメリットです。ただし、投資できる金融商品が限られており、損失を他投資の利益と相殺できないデメリットがあります。
個人年金保険
個人年金保険は、生命保険会社が提供する保険商品です。保険料として積み立てたお金が将来私的年金として支給される、任意で加入する年金保険となります。途中解約すると元本割れのリスクが高く受給した年金は課税対象となりますが、所得控除の対象となるため住民税や所得税が優遇される点がメリットです。
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老後資金5,000万円を準備するためのポイント
下記ポイントをふまえて、老後資金5,000万円を準備しましょう。
ライフステージに合わせて貯金する
定年の65歳から老後スタートと考えた場合、65歳までに5,000万円を貯めるには1年あたりいくら貯めるべきかを計算してみましょう。目標金額と達成までの期間が明確であることで、貯金額に応じた支出も把握しやすくなります。
しかし、ライフステージによって収入や支出が異なるため、毎年同じペースで貯金できるとは限らず、状況によっては赤字になることも想定すべきです。1年ごとに支出や貯金目標額、貯金ペースを計算し直して無理なく計画的に老後資金を貯めましょう。
貯蓄も合わせる
貯金だけでなく、株式や投資信託などの資産運用を含む貯蓄も合わせて老後資金を貯めることがポイントです。貯金は手堅くお金を貯められますが、資産運用に比べると非効率といえます。
とはいえ、資産運用にも元本割れのリスクがあるため、その点もふまえて貯蓄方法を考えることが必要です。効率的に資産を増やすには、利回りの良い貯蓄を組み合わせることがポイントですが、資産運用のリスクを避けたい人は、個人年金保険のような積立式の貯蓄も1つの方法です。
生活水準を上げすぎない
現役時代に生活水準を上げすぎてしまうと、老後もその生活水準から抜け出せなくなってしまいます。子育てが落ち着いて生活に余裕ができたり、年収が上がると生活水準を上げたくなることもあるでしょう。
とくに、子どもの独立後は要注意です。状況が変わっても生活水準を変えない意識でいることで、老後に収入が減ってもゆとりある生活が送りやすくなります。
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老後資金5,000万円問題をふまえて計画的に老後資金を準備しよう
年金受給額の減少やインフレなどの影響により、将来必要とされる老後資金は5,000万円ともいわれている状況にあります。老後は定年退職後でもおよそ20〜30年続くと考えるべきであり、その間の生活費や娯楽費などを考えると老後資金は5,000万円あっても足りないかもしれません。
年金を老後資金の柱とするのは難しいため、早いうちから計画的に老後資金を準備することが重要です。本記事を参考に、老後資金問題や老後資金の貯め方などを押さえてみましょう。
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漠然とした不安を抱えるのは辛いものです。まずは現状を把握し、どのような対策が必要なのかを相談してみましょう。
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