退職年金(企業年金)制度と退職金(退職給付)制度の基礎知識
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本記事では、日本国内の企業が導入・実施する「退職年金制度」に関する基礎的な知識を説明しています。退職年金制度は企業年金制度とも呼ばれ、「退職金(退職給付)制度」の一種として位置づけられています。退職金(退職給付)制度の全体像、退職年金(企業年金)制度の制度ごとの特徴をわかりやすく解説します。
- 【この記事を読んでわかること】
- 退職金(退職給付)制度は「退職一時金制度」と「退職年金(企業年金)制度」に分類でき、それぞれ複数の種類がある。
- 主な退職年金(企業年金)制度は「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」の3種類だが、新たな制度の導入事例も少しずつ増えてきている。
- 退職年金(企業年金)制度は、前述した経緯により厚生年金基金を継続する企業の割合が激減し、確定給付企業年金および企業型確定拠出年金を導入した企業の割合が急増している。
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本記事は、「『退職一時金制度』と『退職金(退職給付)制度』の基礎知識からの一部転載を含みます。
退職年金制度の位置づけと種類
はじめに、退職年金制度を含む「退職金(退職給付)制度」の全体像を図解します。
退職金とは、企業と従業員の雇用関係の消滅(定年退職など)を理由として企業が従業員に支払う、退職手当、退職慰労金、退職功労報償金などの名目の給付のことであり、退職金制度は「退職給付制度」ともいいます。退職金(退職給付)制度は「退職一時金制度」と「退職年金制度」に分類でき、退職年金制度は「企業年金制度」とも呼ばれます。
本記事では退職年金制度について解説するので、退職一時金制度については「『退職一時金制度』と『退職金(退職給付)制度』の基礎知識」
退職年金制度の主要3制度ともう一つの新制度
退職年金(企業年金)は、従業員の退職後の一定期間、または亡くなるまでの終身にわたり、原則として年金で給付します。従業員は、年金に代えて一時金(一括)での受け取りも選択できます。また、退職後ではなく、給与や賞与に上乗せする形での「前払い」給付を選択可能とする企業も増えています。
上の図のうち、主な制度は「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」の三つです。これら3制度に、新たな制度である「リスク分担型企業年金」を加えた4制度について、特徴を解説します。これらはいずれも、厚生労働省が「公的年金」制度とともに所管する「私的年金」制度であり、各制度の導入・実施、廃止・解散にあたっては厚生労働大臣の認可が必要です。
- 厚生年金基金
- 確定給付企業年金(略称:DB)
- 企業型確定拠出年金(略称:企業型DC)
- リスク分担型企業年金
厚生年金基金
名称が似ていることから国の「厚生年金」と混同されがちですが、厚生年金基金は民間企業の退職年金(企業年金)制度です。
企業が単独または共同で(グループ企業で、または同業などの企業が集まって)厚生年金基金を設立して役職員を配置し、厚生年金基金が受給者に対して厚生年金の一部を国に代わって給付するとともに、企業独自の上乗せ給付を行います。国の厚生年金の一部を代行することから、厚生年金基金に従事する役職員(多くは母体企業からの出向社員)は「みなし公務員」とされ、刑法、その他の罰則の適用においては公務員として扱われます。
今後の新規設立は不可
厚生年金基金は、かつては「適格退職年金」と並ぶ退職年金(企業年金)制度の主流でしたが、運用環境の悪化によって、厚生年金の一部代行による企業会計上のメリットが小さくなり、また、運営の継続が困難となる事例も生じたことなどから、2014年(平成26年)4月以後、新規設立は認められなくなりました。既存の厚生年金基金についても、確定給付企業年金などへの移行による解散を促されています。したがって、これから退職年金(企業年金)制度の導入や移行を検討する企業において、厚生年金基金は選択肢にはなりません。
確定給付企業年金(略称:DB)
確定給付企業年金(以下「DB」といいます)は、このあと解説する企業型確定拠出年金と並び、厚生年金基金解散後の受け皿となった現在の2大企業年金制度の一つです。
事業主(企業)が加入者(従業員)に対し、将来の年金給付の内容をあらかじめ約束する年金制度のことを「確定給付」型といいますが、DBは、厚生年金基金と同じく確定給付型であり、厚生年金の一部代行機能がない点を除き、おおむね厚生年金基金をベースとした制度です。
運用リスクは企業が負う
企業が単独または共同で設立した企業年金基金あるいは企業自身が、従業員の年金資産を一括して運用し、運用リスク(大きな運用損失が生じた場合の穴埋め責任)は企業が負います。
企業会計への影響
年金資産の運用成績は企業の決算(貸借対照表、損益計算書)に影響します。企業が採用している会計基準(日本基準、国際会計基準など)によって影響の程度は異なりますが、プラス方向の影響、マイナス方向の影響のいずれかが表れます。
従業員の税・社会保険料への影響
事業主が負担する掛金はその人の収入ではないため(給与明細書や賞与明細書に記載されず、所得税法上の給与所得ではないため)、その人の所得税・住民税、社会保険料の負担が増えることはありません。
運営の形態
「規約型DB」と「基金型DB」の2種類あります。
【規約型DB】
労使合意のうえで規約を作成し、厚生労働大臣の認可を受け、企業自身が実施する形態のDBです。
事業主は、信託銀行または生命保険会社と契約し、母体企業の外部で年金資産を管理・運用し、受給者に年金を給付します。
実施にあたっての加入者数要件はないため、中小規模の企業でも実施できます。
【基金型DB】
労使合意のうえで規約を作成し、厚生労働大臣の認可を受け、母体企業とは別の法人格を持つ企業年金基金を設立し、企業年金基金が実施する形態のDBです。
事業主は企業年金基金に掛金を納め、企業年金基金は信託銀行または生命保険会社と契約して年金資産を管理・運用し、受給者に年金を給付します。
設立にあたっての加入者数要件は「300人以上」です(共同で設立する場合、合計で300人以上)。加入者数要件に加え、常勤かつ専門的な知識を持つ役職員を企業年金基金に配置する必要があることから、ある程度の企業規模が必要です。
企業型確定拠出年金(略称:企業型DC)
企業型確定拠出年金(以下「企業型DC」といいます)も、現在の2大企業年金制度の一つです。
事業主(企業)が加入者(従業員)に対し、将来の掛金拠出の内容をあらかじめ約束する制度であることから「確定拠出」と名付けられました。
事業主は企業型DCの運営管理機関と契約し、労使合意に基づき、法令上の拠出限度額の範囲内で加入者ごとに設定した掛金を拠出します。厚生年金基金・DBなどの確定給付型と異なり、企業型DCでは、拠出された掛金は個人の年金資産として明確に分別管理されます。
運用リスクは従業員が負う
加入者は、運営管理機関に対して運用を指図します(毎月の掛金でどの運用商品をどういう割合で買っていくか、保有している運用商品の全部または一部を売却して別の運用商品を買うか、などを指図します)。将来、運営管理機関から受け取る給付の額は、受け取り開始までの自分自身の運用成績によって変動します。企業型DCは、DBとは正反対に、運用リスクを企業ではなく加入者個人が負うことが最大の特徴といえます。
企業会計への影響
事業主が拠出する掛金(事業主掛金)は費用として処理(損金に算入)し、それ以外の影響はありません。企業にとって企業型DCは、DBに比べて会計上の負担、決算への影響が小さいというメリットがあります。
従業員の税・社会保険料への影響
事業主掛金はその人の収入ではないため(給与明細書や賞与明細書に記載されず、所得税法上の給与所得ではないため)、その人の所得税・住民税、社会保険料の負担が増えることはありません。
他方、加入者が自ら希望して給与から引き落とす形で、自己負担の掛金(加入者掛金)を事業主掛金に上乗せできる「マッチング拠出」という仕組みを導入している企業もあります。加入者掛金は全額所得控除が認められていますので、年末調整または確定申告により、加入者掛金の額に応じた所得税、住民税の軽減メリットを得ることができます。
リスク分担型企業年金
リスク分担型企業年金は、2017年(平成29年)から実施可能となった、もっとも新しい企業年金制度です。DBと企業型DCが企業年金の2大主流となった現状を踏まえ、「第三の企業年金」と呼ばれることもあります。
運用リスクを企業と従業員で分担する
DBと企業型DCの最大の相違点は、年金資産の運用リスクを企業が負うのか(DB)、従業員が負うのか(企業型DC)でしたが、リスク分担型企業年金は運用リスクを企業と従業員の双方が分担します。基本的にはDBをベースとした制度であり、企業型DCと異なり、従業員は運用に直接関与しません。その一方、企業会計上の扱いは企業型DCと同じであり、いわば「DBと企業型DCの中間」的な性格を持つ制度です。
リスク分担型企業年金は、将来大きな運用損失を被ったときの負担を労使でどのように分担するかについて、労使合意により厳密に定めます。
企業が負う運用リスク
事業主は、DBと同じ水準の掛金に加え、将来生じうる一定程度の運用損失をカバーできる分(穴埋めできる分)をリスク対応掛金として一定期間負担します。事業主は労使合意で想定した運用リスクを事前に、一定期間平準化して負担することで、その後の突発的な追加負担(穴埋め責任)を免れることになります。
従業員が負う運用リスク
将来、想定以上の運用損失が生じ、リスク対応掛金でカバーしきれない状態に至った場合、制度導入時の労使が合意していた取り決めに従い、加入者・年金受給者などに対する給付の減額が行われます。従業員または従業員だった人は、年金の額が自動的に減ることを受け入れることで、運用リスクを事後的に負担することになります。
他方、想定以上に運用収益が積みあがった場合、加入者・年金受給者などに対する給付の増額が行われますので、従業員または従業員だった人は想定以上の年金を得る可能性もあるということになります。
導入にあたっては慎重な検討が必要
リスク分担型企業年金は、DBと異なり、制度導入時の労使が合意した取り決めの内容を、その後の世代の労使が変更したくなったとしても、法令上、変更のハードルがきわめて高い制度です。企業が負う運用リスクの上限、すなわちリスク対応掛金をどのように設定するのか、若年層から中高年層まで、従業員の多くが納得できる単一の運用基本方針をどのように定めるのか等々を、労使ともに未来をできるだけ見通し、従業員の意見を十分に反映したうえで制度設計する必要があります。
企業型DCと同じです。
事業主が拠出する掛金(事業主掛金)は費用として処理(損金に算入)し、それ以外の影響はありません。企業にとって企業型DCは、DBに比べて会計上の負担、決算への影響が小さいというメリットがあります。
従業員の税・社会保険料への影響
DBと同じです。
事業主が負担する掛金はその人の収入ではないため(給与明細書や賞与明細書に記載されず、所得税法上の給与所得ではないため)、その人の所得税・住民税、社会保険料の負担が増えることはありません。
退職金(退職給付)制度の実施状況
近年、退職年金(企業年金)制度は、前述した経緯により厚生年金基金を継続する企業の割合が激減し、確定給付企業年金および企業型確定拠出年金を導入した企業の割合が急増しています。詳しくは、「『退職一時金制度』と『退職金(退職給付)制度』の基礎知識
をご参照ください。まとめ
退職金(退職給付)制度の全体像、退職年金(企業年金)制度の制度ごとの特徴を解説しました。「どのような退職金(退職給付)制度が自社に最適なのか」は、当然ながら会社ごとの事情によって異なります。人事をご担当の方はぜひ本記事を参考にしてみてください。
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