SAP PPとは?SAP PPの基礎知識から機能詳細まで詳しく解説

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製造業では、生産プロセスの効率化が企業の競争力や業績の向上に欠かせません。生産プロセスの効率化には、ERPソフトウェアの導入が効果的です。 この記事では、世界中の企業で活用されているSAP PPの基礎知識・利点・機能概要・データ構成などを詳しく解説します。

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  • 【この記事を読んでわかること】
  • SAP PPの効果的な活用により、生産コストの削減・生産性の向上・資産効率の向上が可能
  • SAP PPには、生産プロセスを統合的に管理するための豊富な機能が搭載されている
  • SAP PPは、マスタやテーブルで情報を管理しており、導入効果を最大化するには適切な登録・運用が重要

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SAP PPモジュールとは

SAP PPモジュールの定義

SAP PPは、世界中の企業で利用されるERPソフトウェア「SAP」が提供するモジュールの一つです。生産プロセスの効率化を図るためのさまざまな機能を備えており、製造業を中心に広く導入されています。SAP PPの詳細な機能やデータ構造を見ていく前に、まずはSAPとSAP PPの基礎知識を確認しておきましょう。

そもそもSAPとは

SAPは、ドイツ企業SAP SEが開発したERP(Enterprise Resource Planning) ソフトウェアです。ERPとは、企業のさまざまな業務プロセスを統合して自動化・効率化するためのシステムを指します。SAPでは、財務・人事・物流・生産管理など企業全体のリソースやプロセスを一元的に管理可能です。

SAPはさまざまな業務をカバーする幅広い製品群と、拡張性・カスタマイズ性の高さを持ち、世界中の企業で広く利用されています。また、SAPはモジュール化されているため、企業のニーズに応じて必要なモジュールを選択・組み合わせて利用できるのも特徴です。

本記事では、SAPの豊富なモジュール群の中から、生産管理を担うSAP PPを詳しく解説します。

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SAP PPモジュールの定義

SAP PP (Production Planning)モジュールは、おもに製造業で広く利用されている、生産計画や管理を支援するモジュールです。生産計画から製造実行、生産性分析までの一連のプロセスをサポートし、企業の生産効率と在庫管理の最適化を目的としています。具体的な機能に、需要予測・生産計画・資材所要量計画 (MRP)・工程管理・品質管理・コスト計算などがあります。また、SAP PPは、ほかのSAPモジュールとシームレスな連携も可能です。たとえば、SAP MM(Materials Management)やSAP QM(Quality Management)と連携すれば、資材の調達や品質管理のプロセスとの一元的管理が実現できます。

SAP PPの適切な活用により、生産プロセスを可視化・効率化でき、競争力の強化や顧客満足度の向上につながるでしょう。

まずは、SAPとSAP PPの基礎知識を解説しました。続いて、SAP PPの基本的なプロセスを見ていきましょう。

SAP PPの基本的なプロセス

SAP PPの3つのプロセス

SAP PPでは、企業の生産効率を最大化しコストを最小化するため、おもに下記の3つのプロセスを支援する機能を提供しています。

  • 生産計画
  • 製造指図
  • 製造実績

各プロセスの特徴を見ていきましょう。

生産計画

生産計画は、市場の需要予測・資材の調達状況・機械や人員の稼働状況などを考慮して、適切な生産量と生産スケジュールを決定するプロセスです。

SAP PPを使った生産計画では、需要予測・生産計画・資材所要量計画 (MRP) などを立案し、生産効率や在庫コストの最適化を実現します。

生産計画には、継続的な市場動向の分析やリアルタイムな生産状況の把握が求められるため、SAP PPによる適切な情報管理が重要です。それにより、生産過程での資材不足や在庫過剰を回避し、生産効率の向上を実現できます。

製造指図

製造指図は、生産計画に基づいて工場の具体的な生産活動を指示するプロセスです。

製造指図には製造手順や必要な資材、作業者の割り当てなどが記載されており、生産活動の実施と管理を支援します。

また、製造指図を追跡し実績データを入力すると、進捗状況のリアルタイムでの把握が可能です。

さらに、製造指図は生産工程の変更や追加・キャンセルが容易にできるよう設計されており、柔軟な生産管理が実現できます。

こうしたSAP PPによる製造指図の正確な作成と管理は、生産の効率化と品質の確保に欠かせないプロセスです。

製造実績

製造実績は、生産活動の実績データを管理・分析するプロセスです。

製造実績には、製品の完成数量・生産時間・使用された資材の消費量・不良品の数などの情報が含まれます。

SAP PPでは、製造実績データがリアルタイムで収集・集計されるため、迅速な生産状況の把握や問題発見が可能です。

また、製造実績データの分析により、生産効率や品質に関する改善点を見つけ出し適切な対策を実施できます。

生産実績の正確な記録は、生産プロセスの評価や将来の計画立案のための貴重な情報源にもなります。

以上、SAP PPの基本的な3つのプロセスを解説しました。次は、SAP PPの導入によるビジネス上の利点を見ていきます。

SAP PPのビジネス上の利点は何か?

SAP PPのビジネス上の利点

企業がSAP PPを導入し活用すると、どのようなビジネス上のメリットがあるのでしょうか?代表的な4つのポイントを解説します。

  • 生産プロセスの最適化
  • 生産コストの削減
  • 生産性の向上
  • 資産効率の向上

生産プロセスの最適化

SAP PPの導入によって得られる大きな利点の一つは、生産プロセスの最適化です。需要予測や資源の可用性に基づく精度の高い生産計画・正確な製造指図・生産実績のリアルタイムな追跡などにより、生産プロセスの透明性と効率性が向上できます。これにより、生産リードタイムの短縮・在庫の最適化・生産能力の最大化が可能です。また、生産プロセスのトレーサビリティが高まることで、生産の進捗把握や問題の早期発見・解決が可能となります。

生産コストの削減

SAP PPを活用した生産プロセス全体の管理・効率化により、生産コストの削減が可能です。たとえば、生産計画の精度向上や資材所要量計画 (MRP) による資材管理の最適化により、在庫コストや廃棄コストを削減できます。また、生産プロセスの効率化により、労働コストや機械稼働コストの削減も期待できるでしょう。SAP PPでは、生産オーダーに関連するコスト情報を一元管理できます。これにより、生産コストの見える化や分析がスムーズに行え、コスト削減のポイントを見つけ出しやすくなるのもメリットです。

生産性の向上

SAP PPは生産プロセスの自動化と効率化をサポートし、製造現場の生産性向上にも寄与します。生産計画や資材所要量計画(MRP)の精度向上により、無駄な在庫や製造リードタイムの削減が可能です。また、製造指図や製造実績の管理が一元化されるため、生産スケジュールやリソースの調整が容易になり生産ラインが効率化されます。さらに、リアルタイムのデータ分析やレポート機能の活用により、生産プロセス全体が見える化され、問題点や改善点が容易に把握可能です。これらにより、生産プロセスをスムーズに改善・最適化でき、生産性の向上が期待できます。

資産効率の向上

SAP PPの活用は、生産資源の効率的な管理による資産効率の向上にも役立ちます。精度の高い資材所要量計画(MRP)により、適切な資材発注や在庫管理が行え、在庫資産の効率的な活用が可能です。また、生産プロセス全体の最適化によって、設備や人員の使用効率が向上し資産全体の利益率が高まります。このように、SAP PPの活用で資産の効率的な活用が促進され、コストの削減や収益の最大化が実現されます。

ここまで、SAP PPのビジネス上の利点を解説してきました。
次は、SAP PPと関連性が高いSAP MMとの違いを見ていきましょう。

SAP PPとSAP MMの違い

SAP MMのプロセス

SAP PPと同じく、企業のサプライチェーンと生産プロセスを管理するモジュールにSAP MMがあります。SAP PPとSAP MMは材料の調達から製品の生産まで、連携して導入されるケースも多いため、SAP MMに関して知っておくことも重要です。

ここでは、SAP MMの概要と基本的なプロセスを簡単に解説します。

SAP MMとは

SAP MM(Material Management)は、SAPのERPシステムの中で、資材管理や調達プロセスを担うモジュールです。SAP MMは、資材の調達・在庫管理・調達プロセスの最適化など、物流管理に関連する機能を提供しています。具体的には、購買依頼の作成や発注・納品書の処理・請求書の確認など、資材の調達から支払いまでの一連のプロセスが対象です。SAP MMは、適切な資材やサービスが適切な時期に適切な価格で入手できるようにし、企業のコスト削減や業務効率の向上に寄与する役割を果たします。

SAP PPとSAP MMのあいだには、多くのインターフェースがあります。たとえば、SAP MMで資材の調達と在庫管理を行い、その情報をSAP PPに提供して生産計画とスケジューリングに使用可能です。また、SAP PPで作成された生産計画に基づいて、SAP MMで必要な材料の購入や在庫補充ができます。このようにSAP PPとSAP MMは、企業の生産プロセスとサプライチェーン管理を効率的に運営するために、互いに密接に関連し合う関係です。

SAP MMのプロセス

SAP MMは、企業が購買や在庫管理を効率的に行うためのモジュールです。以下に、一般的なSAP MMを活用した業務プロセスを紹介します。

プロセス説明
購買リクエストの作成部門からの購買リクエストを収集し、購買オーダーに変換
供給者との契約管理供給者との契約を管理し、価格交渉・数量・配送日程などの詳細を追跡
購買オーダーの管理購買オーダーの作成・承認・追跡を自動化し、購買プロセスを効率化
在庫管理在庫のレベルを追跡し、必要に応じて購買オーダーを自動的に生成して過剰在庫や在庫切れを防ぐ
請求と支払い供給者からの請求書受け取り・承認・支払いを管理し、支払いプロセスを効率化

SAP PPとSAP MMの違いは、SAP PPが生産管理に焦点を当てたモジュールであるのに対して、SAP MMは資材管理や調達プロセスに特化している点です。両モジュールは、それぞれ異なる業務領域をカバーしながら、相互に連携して企業の生産管理や資材管理を効率化する役割を果たします。

以上、SAP PPとSAP MMの違いを解説しました。ここからは、SAP PPのおもな機能概要を見ていきます。

SAP PPの機能概要

SAP PPの主要な5つの概要

SAP PPは、生産プロセスを効率化するためのさまざまな機能が統合されたモジュールです。その中から、主要な5つの機能の概要を解説します。

  • 生産計画
  • 生産オーダー管理
  • 製造実行
  • 生産監視
  • 生産性分析

生産計画

生産計画は、適切な数量の製品を、指定された期間内に生産するための計画を策定する機能です。具体的には、下記のような機能があります。

機能説明
需要予測過去の販売データや予測モデルを使用して、将来の製品需要を推定
生産計画作成需要予測に基づいて、製品・部品・資材の生産・調達計画を作成
資材所要量計画(MRP)製品の組立構造と生産計画を基に、必要な部品や材料の種類と量、調達タイミングを計算
計画調整外部要因(市場動向・原材料の供給など)に対応して、生産計画を調整

生産計画の活用により、需要と供給のバランスを取り、生産プロセスを効率化できます。

生産オーダー管理

生産オーダー管理は、生産計画から製造実行に至るまでのプロセスを一元的に管理し、スムーズな生産活動を支援する機能です。具体的には、下記のような機能があります。

機能解説
オーダー作成製品の生産に必要なオーダーを作成し、必要な資材や作業ステップを指定
オーダー変更・キャンセル生産オーダーの変更やキャンセルを容易に行い、柔軟に生産計画を調整
オーダー状況追跡オーダーの進捗状況をリアルタイムで追跡し、生産工程の遅延や問題を素早く検出
オーダー完了確認・クロージング製品が正常に生産されたことを確認し、オーダーを完了またはクローズして記録

生産オーダーは、生産の基本的な「指図書」の役割を果たし、生産活動を計画的に進めるための基盤となります。

製造実行

製造実行は、生産ラインでの物理的な製造プロセスを管理し、追跡するための機能です。具体的には、下記のような機能があります。

機能解説
製造工程の開始・終了生産オーダーにしたがって、製造工程の開始・終了を管理し、各工程の進捗状況をリアルタイムで把握
資材消費の登録・報告製造工程で消費される資材を登録し、在庫管理と連携して正確な在庫レベルを維持
作業員のタイムシート管理作業員が各製造工程でどれだけの時間を費やしたかを記録し、労働コストの把握と生産効率の分析に役立てる
品質管理・検査製品の品質を管理し、検査結果を記録して品質の向上を図る

これらの情報は、生産効率と品質管理に不可欠な要素であり、製造実行の活用により一元的かつ効率的に管理できます。

生産監視

生産監視は、生産工程全体をリアルタイムで監視し、問題を早期に発見・解決するための機能です。具体的には、下記のような機能があります。

機能名解説
スケジュール監視生産スケジュールの達成度をリアルタイムで把握し、遅れや問題がある場合は迅速に対処できるようにする
在庫監視製品・部品・資材の在庫状況を監視し、適切な在庫水準を維持できるように支援
品質監視生産プロセスの品質管理情報を収集・分析し、品質問題の発生を未然に防ぐ
生産コスト監視各製品や工程の生産コストを監視し、コスト削減の機会を見つける

生産監視の活用により生産プロセスが可視化され、適切な意思決定が可能となります。

生産性分析

生産性分析は、生産のパフォーマンスを定量的に評価し、改善に必要な情報を提供する機能です。具体的には、下記のような機能があります。

機能名解説
効率性指標の計算各生産工程や全体の生産性能を評価するための指標(生産効率・リードタイム・品質など)を計算
レポート生成生産性の評価結果をレポートとして生成し、視覚的に理解しやすい形で情報を提供
傾向分析・予測過去のデータを基に生産性の傾向を分析し、将来の生産性を予測
ボトルネック分析生産プロセス中の効率性の低い箇所(ボトルネック)を特定し、改善のための情報を提供

生産性分析は、企業が市場競争力を保ち、成長を続けるための重要なツールです。

ここでは、SAP PPの主要な機能の概要を解説しました。次に、SAP PPの重要な概念である「組織」を見ていきましょう。

SAP PPに関連する組織

SAP PPに関連する組織

SAP PPには、システムを利用する企業や組織の構造を表現するための「組織」という概念があります。組織にはさまざまな範囲の設定がありますが、ここでは、生産プロセスの階層を表す代表的な3つの組織を解説します。

  • プラント
  • 保管場所
  • MRPエリア

プラント

プラントは、製造活動の拠点となる組織単位です。具体的には工場や製造施設を指し、各プラント単位に独自の生産計画・在庫・作業スケジュールなどを管理します。プラントは、企業コード(会社を表す組織単位)に所属するのが一般的です。たとえば自動車メーカーでは、一つのプラントはエンジンの組立工場を表し、別のプラントは車体の組立工場を表します。各プラントは特定の製品群に特化しており、個別の在庫と作業スケジュールを管理可能です。プラントの設定と管理は、効率的な生産と在庫管理、正確な財務報告のために重要です。

保管場所

保管場所は、プラント内の材料や製品が保管される場所を示す組織単位です。具体的には、倉庫・棚・コンパートメントなど、おもに在庫管理や資材の受け入れ・出荷する場所を表します。各保管場所には一意の識別コードが割り当てられ、その場所で保管される材料や製品の種類に応じて設定されます。たとえば、エンジン製造プラントではピストンやシリンダーなどを保管する「エンジン部品保管場所」や、工具・保守用品などを保管する「ツール保管場所」が設定される場合があるでしょう。保管場所の適切な設定と管理は、生産計画の精度や在庫コストの最適化に直結します。

MRPエリア

MRP(Material Requirements Planning)エリアは、資材所要量計画を実施するための組織単位です。MRPエリアごとに、製品の需要予測・在庫管理・発注スケジュールの計画などを設定できます。MRPエリアはプラント全体、またはプラント内の特定の部分(たとえば保管場所)に設定でき、その範囲内での材料の需給バランスを管理可能です。たとえば、エンジン部品保管場所では、ピストン・シリンダーなどの各部品に対応する需要予測と発注計画を管理する「ピストンMRPエリア」「シリンダーMRPエリア」などが設定されます。MRPエリアの適切な設定と管理は、生産効率の最適化・在庫コストの削減・サプライチェーンのスムーズな運営などに有効です。

以上、SAP PPに関連する組織を解説しました。次は、SAP PPに関連するマスタを見ていきましょう。

SAP PPに関連するマスタ

SAP PPに関連するマスタ

SAP PPを理解するうえで、その根幹を成す「マスタ」の理解は欠かせません。マスタは生産計画や生産プロセスの中核を成す要素で、その機能と特性を知ることで、SAP PPの活用範囲が広がります。マスタの概要と代表的な5つのマスタの特徴を見ていきましょう。

  • PPマスタの概要
  • 品目マスタ
  • BOMマスタ
  • 作業区マスタ
  • 作業手順マスタ
  • 製造バージョンマスタ

PPマスタの概要

生産計画や生産管理を適切に行うためには、さまざまな情報の整理・管理が重要です。SAP PPでは、情報を一元管理するために「マスタ」と呼ばれるデータ群を管理しています。マスタは基本的に静的なデータで、定義したあとは頻繁に変更しません。SAP PPの主要なマスタに、品目マスタ・BOMマスタ・作業区マスタ・作業手順マスタ・製造バージョンマスタがあります。それぞれ特定の目的に応じた重要な情報を保持するマスタです。これらのマスタが相互に連携し、複雑な生産プロセスを効率的に管理するための情報を提供しています。SAP PPのメリットを最大限に享受するには、各マスタの目的・役割の理解と、正確な設定・管理が大切です。

品目マスタ

品目マスタは、製品や部品に関する詳細情報を管理するデータ群です。生産計画・材料管理・生産管理などの各プロセスで一貫した情報を提供する役割を持ちます。品目マスタに含まれるおもな情報は、品目コード・品目タイプ・購入先・MRPデータ・生産計画データなどです。たとえば、自動車製造では、エンジン・トランスミッション・ホイールなどの各部品が品目マスタの情報に該当します。品目マスタは生産計画や材料管理の際、正確な在庫状況や需給状況を把握するために用いる情報です。品目マスタの設定が不適切だと、在庫の誤った管理や購入のミスなど、製造プロセス全体に影響を及ぼす可能性があります。

BOMマスタ

BOMマスタは「Bill of Material」の略で、製品を構成する部品や材料のリストを管理するデータ群です。製品の構成要素を一元管理し、製品の生産計画や材料調達を効率化する役割を持ちます。BOMマスタに含まれる情報は、製品に関連する部品の階層構造・部品の数量・代替品情報・生産手順などです。自動車製造の場合、車全体(親品目)を構成するエンジン・タイヤ・ボディなど(子品目)と、それぞれの部品の必要数量などが登録されます。BOMマスタが適切に設定されていないと、部品の調達不足や生産コストの過大評価など、生産プロセス全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

作業区マスタ

作業区マスタは、製造工程を実行するための物理的または論理的な場所を定義するデータ群です。生産活動の場所を特定し、関連する資源(機械・労働者など)を管理する役割を持ちます。作業区マスタに含まれる情報は、作業区のID・名称・所属プラント・設備情報・使用可能な作業時間などです。自動車工場の場合、エンジン組立ライン・ボディ塗装ブース・最終検査エリアなどが作業区に該当します。作業区マスタが適切に設定されていないと、不正な作業場所情報による生産計画の誤り・スケジューリングの問題・コストの誤計算などが生じ、生産の効率と精度が損なわれる可能性があります。

作業手順マスタ

作業手順マスタは、製品を製造するための具体的な工程や手順を管理するデータ群です。生産工程の詳細と順序を明確に定義し、それに基づいて生産活動を計画・スケジュール・追跡する役割を持ちます。作業手順マスタに含まれる情報は、各工程のID・名称・作業区・所要時間・必要な資源や素材・前後関係などです。自動車製造の場合、エンジンの組立・ボディの塗装・組立ラインでの組立など、製品製造の具体的な工程が作業手順に該当します。作業手順マスタが適切に設定されていないと、生産計画の誤り・生産ラインの遅延・品質問題・コストの誤計算などが発生し、製品の品質と生産効率が低下する可能性があります。

製造バージョンマスタ

製造バージョンマスタは、特定の製品に対して利用可能な異なる製造方法やプロセスを管理するデータ群です。異なる製造バージョンの管理により、市場状況や製品の需要変動に応じて、最適な製造プロセスを選択して生産活動に適用できます。製造バージョンマスタに含まれる情報は、製品ID、適用開始/終了日・BOM(部品表)・作業手順・ロットサイズ範囲などです。自動車製造の場合、同一モデルの異なる製造バージョン(エンジンタイプ・トランスミッション・内装など)の車種の生産情報の管理が該当します。製造バージョンマスタが正しく設定されていないと、誤った生産計画や生産指図につながる可能性があります。

SAP PPに関連する7つの主要テーブル

SAP PPに関連する7つの主要テーブル

SAP PPのテーブルは、システム内のデータを整理し格納するデータベースです。テーブルは、異なる種類のデータを関連付け、情報を効率的に操作できるようにする役割を果たします。SAP PPの主要な7つのテーブル群を紹介します。

  1. 製造指図
  2. 独立所要量
  3. MRP
  4. BOMマスタ
  5. 作業区マスタ
  6. 作業手順マスタ
  7. 製造バージョンマスタ

製造指図

製造指図は、具体的な生産作業を計画し実行するための指示書の役割を果たすテーブル群です。テーブルには、生産すべき製品(品目マスタから参照)・生産数量・生産開始と終了の予定日・使用すべき資源(作業区マスタから参照)などの情報が含まれます。製造指図の代表的なテーブルは下記のとおりです。

  • AFKO:製造指図ヘッダデータを格納
  • AFPO:製造指図の明細データを格納
  • AFVC:製造指図の操作手順や作業場所などの情報を格納

製造指図テーブルの適切な設定・管理は、効率的な生産計画と実行・リードタイムの短縮・生産コストの削減につながります。

独立所要量

独立所要量は、顧客からの受注や予測に基づいて計画される需要を管理するテーブル群です。独立所要量は、製品の予想される需要量や時期を設定し、それに応じた生産計画や購買計画を立てるために使用されます。独立所要量の代表的なテーブルは下記のとおりです。

  • PBED:独立所要量の品目データを格納
  • PBIM:独立所要量品目のマスタデータを格納
  • PBHI:独立所要量の履歴を格納

独立所要量テーブルは、生産計画の初期段階から必要とされ、その精度は生産効率や納期に影響します。市場予測や需要動向を正確に把握し、適切な設定・更新が重要です。

MRP

MRP(資材所要量計画)は、資材管理と生産スケジューリングを効果的に行うためのテーブル群です。テーブルは、MRPの実行・資材計画・MRPエリアの設定・資材要求など、MRPの運用に必要な情報を提供します。MRPの代表的なテーブルは下記のとおりです。

  • MDKP:MRPヘッダデータを格納
  • MDVL:資材のMRPエリア情報を格納
  • PLAF:生産予定のデータを格納

MRPデータの誤った設定は、在庫過剰/不足・生産停滞などの問題を引き起こす可能性があります。そのため、適切な生産計画・材料要求計画を実現するには、MRPテーブルの正確な設定と管理が重要です。

BOMマスタ

前述で解説したBOMマスタも関連する多くのテーブルで構成されています。BOMマスタのテーブルは、製品を構成する各部品とその数量を管理するテーブル群です。生産計画・在庫管理・コスト計算など多岐にわたって活用されます。BOMマスタの代表的なテーブルは下記のとおりです。

  • STKO:製品の構成データを格納
  • STPO:製品と部品の関連データを格納
  • STAS:代替品や選択可能な部品に関する情報を格納

BOMの設定が不適切だと、部品調達・生産計画・コスト計算などの誤りを引き起こし、生産活動に混乱を招く可能性があります。BOMマスタテーブルは適切に設定・更新しましょう。

作業区マスタ

作業区マスタのテーブルは、生産プロセス内の特定の作業場所やエリアを定義し、生産活動を管理するテーブル群です。生産計画・在庫管理・コスト計算などの業務で、製造や作業の実行に必要な環境やリソースを定義する役割を持ちます。作業区マスタの代表的なテーブルは下記のとおりです。

  • CRHD: 作業区のヘッダデータを格納
  • CRCO: 作業区のコストデータを格納
  • KAKO:各製品の生産に必要な作業区の順序や時間が格納

作業区マスタの正確な設定で、作業場所ごとの能力評価やリソースの使用状況の追跡が容易になり、生産活動の効率化とスケジュールの遵守が実現されます。

作業手順マスタ

作業手順マスタのテーブルは、製品の製造手順や工程の順序を定義するための情報を管理するテーブル群です。具体的な製造手順・使用する材料・必要な時間・使用する設備などを詳細に記録します。作業区マスタの代表的なテーブルは下記のとおりです。

  • PLKO:作業手順のヘッダ情報が格納
  • PLPO:作業手順内の各工程やオペレーションに関する情報を格納
  • PLFL:作業手順内で使用される部品や資材に関する情報を格納

作業手順マスタの正確な設定により、製品の製造手順や工程の順序が明確化され、生産プロセスの効率化と品質確保につながります。

製造バージョン

製造バージョンマスタのテーブルは、特定の製品や製造プロセスのバリエーションやバージョンを管理するテーブル群です。同じ製品でも異なる製造方法や仕様が存在する場合、製造バージョンを使用してそれらを区別し、管理できます。製造バージョンマスタの代表的なテーブルは下記のとおりです。

  • MKAL:製造バージョンの情報を格納
  • MARC:製造バージョンに関連する品目マスタデータを格納
  • MAST:製品に関連するBOM(部品リスト)リンクデータが格納

製造バージョンの適切な使用により、製品のバリエーション管理や製造プロセスの改善が容易になり、生産プロセスの柔軟性と効率性が向上します。

まとめ

  • SAP PPの効果的な活用により、生産コストの削減・生産性の向上・資産効率の向上が可能
  • SAP PPには、生産プロセスを統合的に管理するための豊富な機能が搭載されている
  • SAP PPは、マスタやテーブルで情報を管理しており、導入効果を最大化するには適切な登録・運用が重要

本記事では、SAP PPモジュールの基本的な機能やデータ構成などを解説しました。SAP PPは生産プロセスを一元化して効率化する強力なツールです。実際に導入するためには、さらに深い専門知識が求められます。これからも学習を続け、SAP PPの活用による企業の競争力向上に寄与しましょう。

また、スキルと年収が見合っていないと感じる人は転職もひとつの方法です。弊社エイジレスではITの正社員転職とフリーランスマッチングという形で多くの企業への転職、年収UPの実績も豊富にございます。

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執筆者
しーそー
大手証券系システム会社での20年間のシステムエンジニア(SE)歴を経て、2022年4月よりライターの道へ。前職では主に設計・要件定義などの上流工程やプロジェクトマネジメントを経験。職歴を活かしたIT・金融関係の記事や、趣味と実益を兼ねた資産運用・仮想通貨などが得意ジャンル。2児の父として子育てにも奮闘中