ERPの世界シェアNo.1！SAPの特徴・SAPエンジニアについて解説

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「 ERP・SAPの導入を検討している企業の担当者」「ERP、特にSAPについて学習している学生・エンジニア」の皆様へ。
本記事では、ERPとは何か？SAPとの違いについて解説します。

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ERPとは

ERP（Enterprise Resources Planning：企業資源計画）とは、企業のさまざまな情報を一元管理するシステムのことを言います。
一元管理を行う代表的な情報は、以下のとおりです。

• 人事・労務管理：社員情報・給与計算など
• 会計管理：見積・納品・出荷・請求など
• 営業管理：営業活動計画・実績管理など
• 顧客管理：顧客リスト・顧客対応履歴など
• プロジェクト管理：スケジューリング・原価管理など
• 在庫管理：在庫の発注・仕入など
• 生産管理：生産計画・工程管理など

部署ごとでバラバラに管理していた情報を、ERPで一括して記録・分析することで、「業務の効率化」「経営判断の迅速化」を実現できます。

続いては、ERPシステムを提供する会社の中で、もっとも有名なSAPについて解説します。

SAPとは

SAP（Systems Applications and Products in Data Processing）は、世界シェアNo.1のERPシステムを提供するドイツのソフトウェア企業です。
SAP社が扱うERPシステム全般のことを「SAP」と呼ぶこともあり、「SAPエンジニア」とはSAP社の製品に関わる業務（導入、保守・運用など）を担当するエンジニアとなります。

また、SAP社の歴史は以下のとおりです。

• 1972年：ドイツのマンハイムで設立
• 1973年：世界最初のERPシステム「R/1」をリリース
• 1979年：大企業や官公庁向けに「R/2」をリリース
• 1992年：UNIX系やWindows向けにSAP R/3がリリース
  　　　　日本法人であるSAP ジャパン株式会社が設立
• 2005年：「SAP ERP 6.0」をリリース
• 2015年：「SAP ERP」の次世代機種として「SAP S/4HANA」がリリース

続いては、SAP ERPとは何か？SAP製品の特徴について解説します。

SAP ERPとは

SAP社が販売するERPシステムである「SAP ERP」は、世界シェアNo.1を誇り、WalmartやApple・BMWなど世界中の有名企業で導入されています。
そして、日本でも、パナソニック・味の素食品・三井物産など2,000社以上の企業が導入しています。

SAP ERPの特徴は、以下のとおりです。

• パッケージ製品のため、簡単・短期間で導入できる
• 企業ごとの業務内容に合わせて、システムをカスタマイズできる
• 分析レポートをExcelでダウンロード可能で、オフラインでの情報共有にも活用できる
• 国際会計基準・30種類以上の言語に対応し、海外拠点の情報も一元管理できる

また、他社製のシステムが「会計」「販売」など特定の業務に特化しているケースが多いのに対し、SAP ERPは、企業全体の幅広い業務をカバーし、部門間の連携のしやすさを重視している傾向にあります。

次に、企業全体の幅広い業務をカバーするためのカギとなるモジュールについて解説します。

SAP ERPのおもな機能（モジュール）

業務ごとの機能をまとめたものを「モジュール」として区分し、業務ごとのモジュールを連携させることで、企業内のさまざまな情報を一元管理することができます。
そこで、以下の代表的なモジュールについて、解説します。

• FI（Financial Accounting）-財務会計
• CO（Controlling）-管理会計
• SD（Sales and Distribution）-販売管理
• MM（Material Management）-調達・在庫管理
• PP（Production Planning）-製造計画・管理
• HR（Human Resources）-人事管理

それでは、一つ一つ見ていきましょう。

FI（Financial Accounting）-財務会計

キャッシュフローや資産の管理、財務諸表の作成など、経理に関する業務全般をカバーするモジュールです。
最も使用されているモジュールで、SAPを導入しているほとんどの企業で使用されています。

購買・販売などの業務で発生したお金の流れを本モジュールと連携させることで、会計業務をスムーズに行うことができます。

CO（Controlling）-管理会計

内部管理と呼ばれる「原価の計算」「利益の予測」「収益の管理」など、経営判断をサポートするためのモジュールです。
「FI」が財務諸表など社外向けの会計管理であるのに対し、本モジュールは社内向けの会計管理と言えるでしょう。

特に、購買・生産・販売の実績を本モジュールと連携させることで、内部管理全般をスムーズに進めることができます。

SD（Sales and Distribution）-販売管理

見積もりから受注・発送・請求処理まで、販売プロセス全般に対応するモジュールです。
「通常と異なる販売プロセスの設定」や「顧客・数量ごとの価格設定」などの特殊なケースにおいても柔軟に対応可能です。

財務会計のFIモジュールと連携することで、売り上げの計上・返品・請求のマイナスなどの複雑な処理をスムーズに進めることができます。

MM（Material Management）-調達・在庫管理

在庫・調達に関わる業務全般に対応するモジュールで、社内の在庫管理のみでなく、外注への作業依頼などにも対応しています。

在庫状況の可視化・在庫が少ない時の自動発注・財務会計のFIモジュールとの連携による入力作業の省略などで、在庫の適正化や在庫管理をスムーズに進めることができます。

PP（Production Planning）-製造計画・管理

生産計画や製造プロセスの管理など、生産管理に特化したモジュールです。
発注情報をベースに、適切な生産量、生産に必要な人材・設備・期間などの計画の概要を作成することが可能です。

管理会計のCOモジュールや在庫管理のMMモジュールと連携することで、更なる情報共有の効率化が期待できます。

HR（Human Resources）-人事管理

日々の勤怠・毎月の給与・採用または退職など、人事業務全般に対応するモジュールです。
そして、人的資本管理（HCM：Human Capital Management）と呼ばれる、人材のトレーニングやパフォーマンスの管理にも対応しています。

給与や従業員経費などのお金に関する項目を、財務会計のFIモジュールと連携することで更なる効率化が期待できます。

続いては、SAP ERPを導入するメリット・デメリットについて解説します。

SAP ERPを導入するメリット・デメリット

SAP・ERPを導入するメリットは以下のとおりです。

• 【メリット】業務の効率化
• 【メリット】意思決定の迅速化
• 【メリット】内部統制の強化

SAP・ERPを導入するデメリットは以下の3つが挙げられます。

• 【デメリット】導入コストの高さ
• 【デメリット】使いこなすのが難しい
• 【デメリット】教育・トレーニングに時間がかかる

それでは、一つ一つ見ていきましょう。

【メリット】業務の効率化

部門ごとに管理されたデータを連携することで、「二重入力の手間が省ける」「データが自動更新される」ため、作業時間の短縮・ヒューマンエラーの軽減が期待できます。
また、分析・集計業務をはじめとする、一部の業務を自動化することで、利益を生み出しやすい業務に注力させることが可能になります。

「人件費・作業コストを削減したい」「社員ひとりひとりのパフォーマンスを上げたい」企業におすすめです。

【メリット】意思決定の迅速化

部門ごとに管理していたデータを一元管理することで、「必要な情報へスピーディにアクセスする」「多角的な観点での情報分析を容易にする」ことが可能になります。
また、経験や直感のみでなく、データを用いて客観的・論理的に意思決定ができるため、品質の向上も期待できます。

変化のスピードが早い現代で、経営のスピードアップを図ることで企業の競争力を高めましょう。

【メリット】内部統制の強化

企業内のあらゆる情報を1つのシステムに集約することで、組織全体の情報共有・情報監視を強化できます。
たとえば、作業履歴を追跡することで、作業ミスや停滞などの状況を確認しやすくなります。

また、データの改ざんなどの不正に対しては、早期発見のみでなく、「アクセス権限を設ける」「承認フローを設定する」などの未然防止策を実施することが可能です。

情報共有の効率化のみでなく、情報セキュリティを強化したい企業におすすめです。

【デメリット】導入コストの高さ

SAPを導入する際は、ソフトウェアの費用のみでなく、サーバー構築・データ移行費用など、企業規模によって数百万〜数千万円の費用がかかると言われています。
導入後においても、「保守・運用のコストがかかる」「ユーザー数が増えるたびにライセンス費用がかかる」点にも注意が必要です。

導入前に、「自社に必要な機能を洗い出す」「導入における費用対効果を計算する」などの慎重な予算計画を進めましょう。

【デメリット】使いこなすのが難しい

「ABAPと呼ばれる独自のプログラミング言語で構築されている」「ドキュメントは英語で書かれている」ことから、設定や操作を自由に行える人材を育成・確保するのが難しい傾向にあります。

SAPコンサルタントなど、外部の人材・サービスを活用することも視野に入れましょう。

【デメリット】教育・トレーニングに時間がかかる

豊富な機能を持つために、「覚えることが多い」「操作が複雑である」など、使いこなすのが難しいと感じる人も少なくないでしょう。

作業マニュアルの作成を通じて、専門的な知識がなくても誰でも簡単に操作ができる仕組みづくりが必要です。
システム本体の操作方法のみでなく、部門間での運用方法についても明確にしておかなければなりません。

SAP導入を組織全体の大きなプロジェクトとして挑む姿勢が重要です。

続いては、SAPの2027年問題について解説します。

SAPの2027年問題とは

SAPの2027年問題とは、「SAP ERP 6.0」のサポートが2027年末に終了することを言います。
2027年問題の背景と対策について解説します。

2027年にSAP ERPの標準サポートが終了

2005年に発売された「SAP ERP6.0」ですが、長年のアップデートによるシステムの肥大化・処理速度の低下が懸念されています。
そこで新機種である「SAP S/4HANA」へのシフトを推進するため、既存機種である「SAP ERP」のサポートが2027年末に終了される運びとなりました。

日本国内でもSAPを使用している企業は約2,000社といわれていることから、大きな影響が考えられます。

2027年問題に直面する企業の3つの選択肢

2027年問題に直面する企業は、どのような対策をとるべきかを3つの選択肢を紹介します。

後継のSAP S4/HANAへ移行する

多くの企業が「SAP S4/HANA」への移行の検討・実施を進めていることから、主流になりつつあります。
「導入コストが新たに発生する」点以外にも「Non Unicodeの場合は、Unicode化への対応が必要である」点にも注意が必要です。

導入ベンダーやコンサルタントとコミュニケーションを取りながら投資計画を立案しましょう。

標準サポートなしで使い続ける

2027年以降は、修正プログラムの更新・システムの改善などのサポートが受けられなくなるものの、継続して利用し続けることは可能です。
また、保守基準料金に2%追加することで、2030年末まで期限を伸ばすサービスも用意されています。

「予算の見込みが立たない」「業務への影響を避けたい」方は、延長サポートを受けながら2030年まで使用を続けて、他の選択をすることをおすすめします。

ほかのERP製品に乗り換える

Oracle・オービックなどの他社製のERPシステムへ乗り換えるケースも少なくありません。

メリットとしては、現状の利用状況や課題などを整理したうえで、品質・コストともに優れたシステムを新たに導入できる点が挙げられます。
しかし、業務フローや運用方法の再構築にかかる期間が長くなるといったデメリットにも注意が必要です。

続いては、ほかのERP製品に乗り換える際におすすめのERPシステムについて紹介します。

SAP以外の主要なERP製品4選

SAP以外の主要なERPシステムとして、以下の4つを紹介します。

• Oracle ERP Cloud
• OBIC7
• GRANDIT
• Microsoft Dynamics 365 Business Central

それでは、一つ一つ見ていきましょう。

Oracle ERP Cloud

アメリカに本社を持つ世界第2位のソフトウェア会社であるOracle社が提供する、クラウド型のERPシステムです。

クラウド型とは、インターネット上でクラウド環境を利用して使用するシステムを指し、「初期費用を抑えられる」「保守・運用を任せられる」「マルチデバイスに対応している」という特徴があります。
ただ「カスタマイズ性が低い」「ネットワークの環境に依存する」点に注意が必要です。

「Oracle ERP Cloud」の特徴は以下のとおりです。

• 経営層から業務担当まで様々な立場に応じた分析が可能で、今後はAI機能が組み込まれる
• 業務プロセス単位のモジュール構造で、財務会計・調達・生産・物流など、カバーする範囲が広い
• 申込から数日で環境利用が可能なうえ、バージョンアップなどの運用も任せられる

OBIC7

東京都中央区に本社を構え55年の歴史を持つ株式会社オービックが提供する、クラウド型のERPシステムです。

「OBIC7」の特徴は以下のとおりです。

• 「コンポーネント型ERP」で、会計・人事などの各システムを活用し、それぞれの企業に最適なシステムを構築できる
• 250業種、2万5千社以上のシステム構築・業務改善を手がけてきた実績を持つ
• 自社開発・直接販売・自社一貫体制で、高い信頼性を提供する

GRANDIT

東京都港区に本社を構えるGRANDIT株式会社が提供する、ERPシステムです。

「GRANDIT」の特徴は以下のとおりです。

• 「コンソーシアム方式」で、各業種のシステム企業の業務ノウハウ経験を結集して構築されている
• ユーザー目線の優れたUIで高い入力効率と正確性を実現し、モバイルアプリにも対応している
• 多言語、多通貨対応により海外拠点での利用が可能である

Microsoft Dynamics 365 Business Central

アメリカに本社を持つ世界第1位のソフトウェア会社であるMicrosoft社が提供する、Microsoft製品と連携できるERPシステムです。

「Microsoft Dynamics 365 Business Central」の特徴は以下のとおりです。

• Microsoft Office製品に似たユーザーインターフェイスで、直感的な操作が可能
• Word、Excelなど、他のマイクロソフト製品と柔軟に連携できる
• 世界196か国で22万社以上の企業で導入され、126言語・43か国以上の商習慣に対応できる

続いては、SAPエンジニアに必要なスキルについて紹介します。

SAPエンジニアとして活躍するために必要な4つのスキル

SAPエンジニアとして活躍するために必要なスキルは、以下の4つです。

• SAPモジュールの設定・操作スキル
• ABAPの知識
• 業務プロセスの理解
• 英語力

それでは、一つ一つ見ていきましょう。

SAPモジュールの設定・操作スキル

パラメータ設定やマスタの登録など、SAPシステムを構築・運用するために、各モジュールに関する知識と設定・操作するためのスキルが必要です。

在庫管理や会計などあらゆる部門のSAPモジュールが存在するため、必要な部門に関する知識から身につけることをおすすめします。

ABAPの知識

SAPのシステム構築には、「ABAP（Advanced Business Application Programming）」と呼ばれるSAP独自のプログラミング言語が使用されています。
拡張機能の開発でSAPをカスタマイズする場合に、ABAPの知識・スキルが求められるでしょう。

SAP独自のプログラミング言語のため、学習に関する情報が少ない上に、動作テストをするにはSAP社の製品が必要のため、独学での習得は難しいかもしれません。
一方で、COBOLと似ていることから、COBOLの知識があれば習得しやすいと言われています。

そこで、SAPエンジニアへの転職を考えている人は、COBOLの知識・経験をアピールすることをおすすめします。
また、近年では、JavaもABAPと同様に使用される傾向にあるため、Javaのスキル・使用経験がある人も積極的にアピールしましょう。

業務プロセスの理解

SAPの導入目的である「クライアントの業務効率化」を達成するために、クライアントの業務プロセスを理解した上で、システム構築や保守・運用を進めなければいけません。
押さえておきたいポイントは以下のとおりです。

• プロジェクトの全体を俯瞰する
• 業務フローの中でどのようにSAP製品が利用されているのかを調査する
• 業務内容を把握し、導入されたSAP製品の影響を的確に判断する
• SAP製品の利用状況を把握し、運用保守や要望に対するアドオン開発の判断に役立てる

業務プロセスの理解を深めて、クライアントの要望を受動的に取り入れるだけではなく、能動的な提案をすることで、更なる業務効率化を実現させましょう。

英語力

日本語での情報も存在するものの情報量や翻訳精度を考えると、可能な限り英語で情報収集を行うことをおすすめします。
また、SAPエンジニアの業務において、以下のシーンで英語力が求められます。

• システムのエラーメッセージを理解する
• インストール・アップグレードするための資料を読む
• SAP社にトラブル対応を依頼する

日常英会話ではなく、専門用語の多いビジネス英語が中心になりますが、翻訳アプリやAIツールを併用しながら、少しずつ慣れていきましょう。

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まとめ｜SAPを導入して業務の効率化・経営判断の迅速化を実現しよう！

この記事では、以下の4つのことがわかりました。

• SAPは、ERP（企業の情報を一元管理するシステム）で世界シェアNo.1のシステムである
• SAPでは、会計・販売・生産など、業務ごとのモジュールを連携させることで、あらゆる部門の情報を一元管理できる
• 「SAP ERP」の2027年にサポート終了にともない、最新機種への移行・保守期間の延長・他社システムへの切替などの対応が求められる
• SAPエンジニアになるためには、SAPモジュール・ABAPなど幅広いスキルが必要

SAP社のERP製品は、業界で世界シェアNo.1を誇り、世界中の有名企業で導入されています。
一方で、「SAP ERP 6.0」は2027年にサポートが終了することから、これから導入を考えている企業には最新機種である「SAP S/4HANA」の検討をおすすめします。

SAPエンジニアを目指す場合は、モジュール・ABAPのようなSAPに関する専門知識に加えて、クライアントの業務プロセスを理解するためのコミュニケーション力・SAPに関する情報を集めるための英語力も強化しましょう。

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