【フリーランスのお金完全ガイド】税金や老後資金まで徹底解説

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フリーランスは会社員と違い、お金に関することをすべて自分で行わなければなりません。事務や経理をしたことがない人は、不安に感じるかもしれません。
また、病気やけがで働けない場合や老後の生活などについても考える必要があります。
この記事では、お金について、フリーランスが知っておくべきことを網羅的に解説します。

  • 【この記事を読んでわかること】
  • フリーランスはお金に関する事務や経理を全て自力でやらなければならない
  • セーフティネットが薄いフリーランスがすべきこと
  • フリーランスが節税するには青色申告で確定申告を
  • 消費税のインボイス制度への対応方法

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フリーランスのお金の不安

フリーランスのお金の不安

フリーランスになる予定の人は、お金の不安が多いのではないでしょうか。最初にフリーランスによくあるお金の不安について解説します。

収入編

フリーランスは決まった給料が約束されている会社員や公務員と違い、収入面の不安がつきまといます。

収入が不安定

収入が不安定な点は、フリーランス最大の不安といえます。収入の目処を立てて独立したつもりでも、継続して受注していた取引先の契約が打ち切られたり、発注量を大きく減らされたりする可能性があります。常に収入源となる仕事を確保し続けなければならない点は、フリーランスの特有の悩みです。

病気やけがで働けなくなったら収入が途絶える

会社員が病気やけがで働けなくなると労災や傷病手当金が受けられますが、フリーランスにはそのようなセーフティネットがありません。
働けなくなれば収入がなくなり、貯金を取り崩したり、最悪の場合は借入を起こしたりしなければなりません。さらに、仕事を休んだために取引先が発注先を変更するおそれもあります。

社会保障・信用編

フリーランスには、最低限の公的年金や健康保険などの社会保障しかありません。

公的年金が少ない

フリーランスは厚生年金に加入できず、公的年金は国民年金だけです。国民年金は480カ月保険料を支払った場合、65歳以降に満額の6万4,816円(令和4年度)が受け取れます。
保険料を480カ月支払っていない人は、払い込んだ月数に応じた年金額になります。 月額約6万5,000円で生活するのは難しいため、何歳まで働くか、年金の不足分をどのように準備するかの生活設計がとても重要です。

社会的信用が低い

会社員は勤務先の信用がありますが、開業したばかりのフリーランスには社会的な信用がありません。そのため、大手企業との取引ができなかったり、銀行からお金を借りたりするのが難しくなることがあります。
資金調達は事業資金だけでなく住宅ローンなどにも影響し、融資を受けられるとしても金利が高く、期間が短いなど条件が悪くなります。

お金の管理編

フリーランスは、個人のお金と事業のお金の管理をすべて自分で行わなければなりません。

日々のお金の管理が難しそう

フリーランスになるとお金の管理も仕事の一部となり、慣れないうちは大きな負担になります。フリーランスが取引先から得る報酬の多くは税金が引かれていません。

会社員が会社から受け取る給与の手取りは税引き後のため全額を自由に使えますが、フリーランスが自分のお金として使えるのは報酬から経費などを差し引いた残りであり、収入を全部使うと仕入や税金の支払いができなくなります。
売上に対して支払いがいくらあるかなどを常に考え、やりくりをしなければなりません。

帳簿付けの仕方がよくわからない

フリーランスになる前に会社員だった人は帳簿付けなどをしたことがなく、やり方がわからないかもしれません。青色申告のための複式簿記はクラウドのソフトが使えますが、仕訳がわからないと苦労することもあるでしょう。
フリーランスでよく使う仕訳はネット上で調べられますが、最終的にそれが正しいかどうか、自信を持てないことも考えられます。

確定申告が大変そう

会社員は勤務先で年末調整を受けると確定申告は不要ですが、フリーランスは確定申告をほぼ避けて通れません。
収入から経費を差し引いた所得が、年間20万円を超える場合、確定申告をする必要があります。20万円を超えない場合も、住民税の申告をしなければなりません。つまり、いずれにしても税の申告は必要なわけです。

フリーランスになる前にすべきお金の準備

フリーランスになる前にすべきお金の準備

フリーランスは会社員に比べてお金の面でさまざまな不安や、やるべきことがあります。開業してからの不安を少しでも減らすには、フリーランスになる前に準備しておくといいでしょう。
この項目では、フリーランスになる前にしておくべきお金の準備について解説します。

毎月の生活費を把握する

まず、毎月の生活費がいくらかかっているのかを確認しましょう。さらに独立後にかかる事業の経費を見積もり、個人と事業でかかる支出を合計します。
これにより、最低限必要な収入と確保すべき仕事量が明確になります。必要な収入に対し現状の仕事量が不足していれば、新しい仕事の獲得に向け、独立前に活動しましょう。

生活費の半年から1年分を準備しておく

開業前に、生活費の半年から1年分を準備しておきましょう。十分な計画を立てて開業しても、必ず仕事が上手くいくとはかぎりません。最近でも新型コロナの影響で、仕事が減ったフリーランスも少なくありませんでした。

また、開業時に無理をして体調を崩す可能性もあります。仕事がなくなったり、できなくなったりしても生活に困らないよう、不測の事態に備え、当面の生活費を用意しましょう。すぐに使える預貯金にしておくのがおすすめです。

お金まわりの最低限の知識を身に付ける

フリーランスはお金のことをすべて自己完結しなければならないため、最低限の知識を一通り身に付けておく必要があります。例え知らなかったとしても、支払うべき税金を支払わなければ、税務調査が入ってペナルティを受けるおそれがあります。

また、申請すればもらえるお金をもらえないこともあるでしょう。いざというときに困らないため、また、知らないことで損をしないためにも、開業前に、税金や年金などお金に関する最低限の知識を身に付けておきましょう。

フリーランスのお金まわりの基本

フリーランスのお金周りの基本

健康保険

会社員の健康保険と異なり、フリーランスの健康保険は国民健康保険が基本となります。ただし、会社員だった人が退職してフリーランスになる場合、以下の3つの選択肢があります。

  1. 国民健康保険
  2. 健康保険任意継続
  3. 家族の健康保険の被扶養者

国民健康保険

国民健康保険は、市区町村が運営する公的な健康保険です。本人だけでなく、家族も加入できます。保険料は市区町村ごとに計算式や金額が異なります。Webサイトで保険料を試算できる市区町村もあるので、利用するとよいでしょう。
会社を退職する場合、国民健康保険加入の手続きは退職後14日以内に行わなければなりません。

健康保険任意継続

会社員からフリーランスになる場合、勤務先の健康保険の任意継続を選択できます。任意継続被保険者として加入できる期間は2年間です。任意継続の資格喪失後は国民健康保険に加入するか、家族の健康保険の被扶養者になるかのいずれかとなります。

任意継続の保険料は全額自己負担となるため、国民年金の保険料と比べてどちらが安いかはケースバイケースです。扶養家族がいる人が任意継続を選ぶ場合、扶養家族の保険料を払わずに済むため、世帯の保険料が安くなる可能性があります。

家族の健康保険の被扶養者

配偶者や兄弟姉妹が健康保険に加入している場合、一定の基準を満たすと扶養に入れます。被扶養者は保険料の負担なく健康保険に加入できる点がメリットです。
一般的に月収10万8,000円、年収130万円を超えていなければ被扶養者と認められます。詳しい条件は健康保険組合などの保険者ごとに異なるため、家族の勤務先に確認するとよいでしょう。

公的年金

日本の公的年金は基礎年金(国民年金)と厚生年金の2階建てといわれますが、フリーランスは1階部分の基礎年金しか受けられません。公的年金は老齢年金以外に障害年金と遺族年金があります。

老齢基礎年金

老齢基礎年金は、国民年金の老齢年金です。受給資格期間が10年以上ある人が65歳から受け取れます。希望した場合、60歳から65歳までの繰上げ受給、66歳から75歳までの繰下げ受給が選択可能です。
繰上げ受給は1カ月あたり0.4%または0.5%の減額、繰下げ受給は1カ月あたり0.7%増額となります。減額および増額された年金額は一生涯変わりません。

年金額は保険料を480カ月支払った人は満額が支払われ、未納がある人は納付済期間分の年金が支払われます。令和4年度の老齢基礎年金の満額(月額)は6万4,816円です。

障害基礎年金

国民年金の加入期間中に病気やけがで所定の障がい状態になった場合、障害基礎年金が支給されます。障害年金は等級に応じて支給額が決まり、障害基礎年金の等級は1級と2級の2等級です。
18歳到達年度の末日までの子どもまたは20歳未満で1・2級の障害状態にある子どもがいる場合、子の加算があります。それぞれの2022年の年金額は以下の通りです。

  • 障害1級:97万2,250円+子の加算額
  • 障害2級:77万7,800円+子の加算額
  • 子の加算額(子ども2人まで):1人あたり22万3,800円
  • 子の加算額(3人目以降):1人あたり7万4,600円

遺族基礎年金

遺族基礎年金は国民年金加入者が亡くなったとき、その人に生計を維持されていた子のある配偶者、または子に支給されます。
つまり、子どものいない配偶者には遺族基礎年金は支給されないことに注意が必要です。子どもがいる場合も、末子が18歳の年度末を過ぎると受け取れなくなります。2022年の年金額は以下の通りです。

  • 子のある配偶者:77万7,800円+子の加算額
  • 子が受け取るとき(次の金額を子の数で割った額が、1人あたりの額):77万7,800円+2人目以降の子の加算額
  • 1人目および2人目の子の加算額:1人あたり22万3,800円
  • 3人目以降の子の加算額:1人あたり7万4,600円

確定申告と税金

会社員は勤務先が源泉徴収をして納税をしますが、フリーランスは申告も納税も自分で行わなければなりません。対象となる年の1月1日から12月31日までの所得が20万円を超えた場合、確定申告が必要です。

20万円を超えない場合でも、源泉徴収税や医療費控除などの還付は確定申告をしないと受けられません。翌年の3月15日までに申告書を提出し、所得税を納税します。

確定申告をしなかった場合、収入がない人でも住民税の申告は必要です。住民税は前年の所得から金額が決まり、6月上旬に納付書が送付されます。

フリーランスにおすすめのお金の管理方法

フリーランスのお金の管理方法

フリーランスは個人のお金だけでなく、事業のお金も自分で管理しなければなりません。お金の管理のポイントを解説します。

銀行口座やクレジットカードを事業用と個人用で分ける

フリーランスとして事業を行う人は銀行口座やクレジットカードを事業用と個人用で分けましょう。1つの口座やカードにプライベートと事業の入出金が混在すると帳簿付けで振り分けが必要になり、手間がかかります。

最初から口座やクレジットカードを分けておけば、ミスの削減にもつながるでしょう。さらに、会計ソフトを利用する場合も事業用の口座やクレジットカードと連携すれば、経理作業も簡単になります。

収支を常に把握する

日々のお金の出入りはこまめに記帳し、収支を常に把握しましょう。リアルタイムで正確な収支を知ることは、経営上、非常に重要です。また、記帳をため込むと、支出の内容がわからなくなり、記帳に余計な時間がかかる可能性があります。

記帳には会計ソフトを利用すれば、入力だけで財務諸表が作成でき、確定申告書も簡単に作れます。クラウドの会計ソフトなら、自動的に税制改正に対応できるため、間違いの心配がありません。

領収書等を適切に保管する

領収書や請求書は取引や金銭の受渡しの証明になる書類のため法律で保存期間が決められており、保存期間内に処分できません。 青色申告、白色申告それぞれの帳簿書類の保存期間は以下の通りです。

【青色申告】

  • 仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿類:7年
  • 損益計算書・貸借対照表などの決算関係書類:7年
  • 領収証・預金通帳などの現預金取引関係書類:7年
  • 上記以外の請求書・納品書など:5年

【白色申告】

  • 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿):7年
  • 上記以外の帳簿(任意帳簿):5年
  • 決算に関して作表した書類、請求書・納品書など:5年

電子帳簿等保存制度により、保存が必要な帳簿や種類は電子データとして保存することで保管スペースが不要になります。電子帳簿等保存の詳しい内容は国税庁のWebサイトで確認できます。

参考:国税庁「電子取引データの保存方法をご確認ください

フリーランスにかかる税金

フリーランスにかかる税金

フリーランスにかかる主な税金には所得税の他、住民税・個人事業税・消費税などがあります。

所得税

所得税はフリーランスなど個人の所得に対してかかる国税です。所得とは売上から経費を差し引いた儲けに相当する部分です。所得税のベースとなる課税所得金額は、以下の計算式で求めます。

課税所得金額 = 収入金額 - 必要経費 - 所得控除

計算で求めた課税所得金額に応じた税率を掛けて、税額を算出します。税率は以下の表の通りです。

課税所得金額 税率 控除額
1,000円~194万9,000円 5% 0円
195万円~329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円~3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

参考:国税庁「所得税の税率

なお、フリーランスの報酬に対し、取引先が源泉徴収を行う場合があります。フリーランスが確定申告で納税する場合、源泉徴収された所得税と実際の所得税の差額の調整が必要です。

青色申告と白色申告の違い

確定申告には、青色申告と白色申告があります。フリーランスの所得は事業所得に該当し、申請をすれば青色申告が可能です。青色申告は不動産所得・事業所得・山林所得があり、税務署から青色申告の承認を受けた人が対象となります。一方の白色申告は、それ以外の人が対象者です。

青色申告 白色申告
確定申告の提出書類

確定申告書

青色申告決算書

貸借対照表・損益計算書

確定申告書

収支内訳書

保存帳簿

仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など

収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)

業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿)

記帳方法

原則として正規の簿記(複式簿記)

単式簿記

青色申告は最高65万円の青色申告特別控除の他、赤字を3年間繰越できるなど、税制上のメリットが多数あります。

確定申告によって受けられる所得控除

所得控除とは、一定の要件に該当する場合に所得の合計から所定の控除額を差し引ける仕組みです。 所得控除によって課税所得が少なくなり、節税につながります。

基礎控除

合計所得金額によって以下の金額が控除される

2,400万円以下:48万円

2,400万円超2,450万円以下:32万円

2,450万円超2,500万円以下:16万円

2,500万円超:0円

青色申告特別控除

青色申告者に対して所得金額から55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)または10万円を控除

医療費控除

世帯の年間の医療費が一定額を超えた場合に、その医療費をもとに計算した金額の所得控除を受けられる

雑損控除

天災や火災、盗難や横領の被害を受けた場合に適用される控除

社会保険料控除

国民健康保険や国民年金の保険料の全額を控除

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金の控除

生命保険料控除

生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合に受けられる一定金額の控除

寄附金控除

国や自治体、特定NPO法人などに寄附(特定寄附金)をした場合に受けられる控除。ふるさと納税も同様。

配偶者控除・配偶者特別控除

一定の所得金額以下の配偶者がいる場合に受けられる控除

扶養控除

同一生計の配偶者以外の親族を扶養する場合に適用される控除

確定申告で経費にできる支出

フリーランスの所得は売上から必要経費を差し引けます。以下は、代表的な経費となる支出です。

給料賃金

自分や家族以外の従業員に支払う給料

外注工賃

外部に仕事を発注してかかった費用

減価償却費

自動車などの固定資産を耐用年数に応じて各事業年度の費用に按分する費用

貸倒金

取引先から売掛金などが回収できなくなった場合の損失

地代家賃

事務所などを借りた場合の賃貸料

利子割引料

事業用に借入をした際に支払う利子や手形の割引料など

租税公課

国や地方に納める税金と公共団体へ納める会費や罰金など

荷造運賃

商品や製品などを発送するための費用と運賃

水道光熱費

事業にかかる水道代・電気代・ガス代など

旅費交通費

移動や出張などにかかった旅費や交通費

通信費

電話料金・インターネット使用料・送料・切手代など

広告宣伝費

商品やサービスを消費者に対して販売するための広告や宣伝にかかる経費

接待交際費

取引先への接待や贈答にかかる費用

損害保険料

事業用資産の火災保険料など

修繕費

事業用資産の修復や現状維持のために使われる費用

消耗品費

取得価額が10万円未満、または法定耐用年数が1年未満の消耗品を購入した費用

住民税

住民税は、フリーランスなど個人が都道府県と市区町村に支払う税金です。住民税は所得に応じてかかる「所得割」と、居住することに対してかかる「均等割」の2つで構成されています。

所得割の税率は所得に対して一律10%とされており、前年の1月1日から12月31日までの所得に対して計算されます。均等割は通常5,000円(市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)と定められています。

個人事業税

所得が290万円を超えると、超えた部分に対して個人事業税がかかります。個人事業税の納付は8月と11月の年2回で、納付先は都道府県です。税率は業種によって3~5%ですが、課税対象とならない業種もあります。

消費税

消費税は商品やサービスの取引に対して課される税金で、フリーランスも取引先から消費税を受け取ります。受け取った消費税を確定申告し納税する必要がありますが、以下のいずれかに該当する場合、消費税の納税が免除されます。

  • 前々年の売上が1,000万円以下
  • 開業してから2年以内

上記に当てはまると免税事業者となり、取引先から受け取った消費税を納税する必要はありません。

インボイス制度とは

2023年10月1日から、インボイス制度が導入されます。インボイス制度とは「インボイス」の交付と保存により、仕入税額控除が受けられる仕組みです。
インボイスとは正確な適用税率や消費税額等を記載した書類で、売り手(フリーランス)が買い手(取引先)にインボイスを交付し、買い手が保存することで仕入税額控除が適用できます。

売り手であるフリーランスは、「適格請求書発行事業者」でなければインボイスを発行できません。一方の取引先はインボイスを受け取らないと仕入税額控除ができないため、納める消費税が増えてしまいます。

インボイス制度によってフリーランスが免税事業者のままでいると、法人の取引先からの仕事が減るおそれがあります。取引先に対して、インボイスが発行できなくても取引を継続できるか、できたとして条件の変更はあるかなど、確認が必要です。
免税事業者から適格請求書発行事業者になる場合、納税額が売上税額の20%に軽減される措置を2年間受けられます。

フリーランスが加入すべき保険

フリーランスにおすすめな保険

社会保険などのセーフティネットが薄いフリーランスは、会社員に比べて民間の保険の必要性が高いです。ここでは、フリーランスが加入すべき民間の保険を紹介します。

定期保険・収入保障保険

フリーランスが死亡した場合、遺族は受け取れるとしても遺族基礎年金しかなく、不足する資金を定期保険や収入保障保険で補う必要があります。

定期保険とは一定の保険期間内に被保険者が死亡した場合に、受取人が死亡保険金を受け取る保険です。収入保障保険は定期保険の一種で、保険金が「毎月10万円」のように年金形式で支払われます。

定期保険は一定の保険期間だけを保障し、基本的に掛け捨てのため、保険料が手頃です。子どもが自立するまでのように、限られた期間に大きな保障が必要な場合に役立ちます。

がん保険

がん保険はがんの治療に特化した保険で、医療保険と違い、まとまった金額の一時金が支払われるタイプがほとんどです。一時金の使い道に制限はないため、生活費の補填などにも使えます。
フリーランスががんにかかると治療費が必要になるだけでなく、収入が減少するリスクもあります。治療費も高額になりやすいので、加入しておくとよいでしょう。

就業不能保険

就業不能保険は、病気やけがで一定期間以上働けなくなった場合に保険金が毎月受け取れるため、フリーランスには必要性の高い保険といえます。一般的に保険金額は年収に応じて上限が決められます。
通常は60日程度の免責期間(保険金が支払われない期間)があり、免責期間経過後から保険金を受け取れるようになります。

就業不能保険の給付条件は保険会社によってさまざまで、うつ病などの精神疾患を対象外としている商品もあります。加入を検討する場合、複数の商品を比較するようにしましょう。

賠償責任保険

フリーランス向けの賠償責任保険とは、業務上の不法行為や製造物責任などによって損害賠償責任を負った場合に補償されます。事業を営む以上、故意ではなくても、納品物の瑕疵や著作権侵害などのトラブルが起こる可能性はゼロではありません。
取引先からの損害賠償請求に応じなければならないケースも考えておくべきです。加入の際には自分の事業で発生する可能性のあるリスクに対応する賠償責任保険を選びましょう。

フリーランスの老後資金準備

フリーランスの老後資金準備

フリーランスは公的年金が国民年金しかないため、老後資金の準備を計画的にしておく必要があります。ここでは、老後資金準備として、フリーランスが利用できる制度を紹介します。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は公的年金上乗せのための制度です。フリーランスなど国民年金第1号被保険者は、掛金上限が月額6万8,000円です。掛金の運用を加入者が自分で行い、その運用成果によって将来の年金額が決まる仕組みです。

iDeCoの掛金は全額所得控除となり、仮に所得税の税率20%の人が毎月6万8,000円を掛けたとすると、毎年約16万円、所得税を節税できます。住民税も約8万円少なくなり、合計24万円もの節税となります。

iDeCoの運用商品には定期預金などの元本確保型と投資信託があり、投資信託は元本割れの可能性がある点に注意が必要です。

小規模企業共済

小規模企業共済は小規模な会社の経営者や個人事業主向けの退職金積立制度です。月の掛金上限は7万円で、全額が所得控除の対象になります。iDeCoと異なり、掛金を加入者が運用する必要はりません。
また、現在の予定利率は1.0%です。ただし、短期の解約では元本割れする点に注意が必要です。

小規模企業共済では、掛金の納付額に応じて貸付制度が利用できるます。金融機関からの借入が難しいフリーランスにはメリットがあるといえます。

国民年金基金

国民年金基金は国民年金の第1号被保険者が加入できる、国民年金の上乗せ制度です。国民年金の掛金は全額、所得控除の対象です。加入時に将来の受取額も決まる仕組みとなっている点がメリットとされていますが、インフレになるとお金の価値が下がる点に注意が必要です。
1カ月の掛金の上限は6万8,000円までです。国民年金基金とiDeCoを併用する場合、両者の掛け金の合算した額の上限が6万8,000円です。

フリーランスが利用できる支援金

フリーランスが利用できる支援金

返還の必要がない助成金や補助金には、フリーランスも利用できるものがあります。日頃から情報収集をし、積極的に利用したいところです。

給付金、補助金、助成金の違い

補助金、助成金は国や地方自治体から支給される返済不要の資金です。一般的に助成金は対象となる条件を満たすとほぼ受給できるため、ハードルが低い支援金といえます。
ただし、雇用関係の助成金は労働保険に加入しないと受給できません。補助金は、予算や定員が決められていて、申請しても受けられない場合があります。

給付金も国や地方自治体が支給するお金です。それぞれの給付金の条件に該当したときに給付されます。新型コロナウイルス感染症による営業自粛などで売上が減少した事業者向けの持続化給付金は、記憶に新しいところです。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

ものづくり・商業・サービス補助金(ものづくり補助金)とは、生産性向上に取り組む中小企業や小規模事業者を支援する制度です。ものづくり補助金は今後、令和6年度まで実施される予定です。

通常枠は革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援します。通常枠のほか、デジタル枠、グリーン枠などが設けられています。
補助率は1/2または2/3、補助上限額は750万円〜4,000万円で、従業員数などで決まります。

参考:経済産業省「ものづくり・商業・サービス補助金 令和4年度2次補正予算関連

創業助成金

現在、起業時に利用できる国の助成はありませんが、東京都など一部の地方自治体では創業関連の補助金事業が行われています。

東京都中小企業振興公社による創業助成金は、東京都内で創業予定または創業5年未満の中小企業者等に創業初期に必要な経費の一部を助成する制度です。助成率は2/3以内、助成上限額は300万円で、対象となる経費は賃借料・広告費・器具備品購入費などです。

まとめ:フリーランスはお金のことを知っておくべき

フリーランスは、事業の安定成長のための活動だけでなく、公私のお金の管理も行わなければなりません。そのため、税金や健康保険、年金などについて一通り理解していないと、事業やプライベートに支障をきたすおそれがあります。
できれば開業前からお金に関してすべきことを頭に入れて実践し、事業をスムーズに進められるようにしましょう。

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執筆者
松田聡子
ファイナンシャルプランナー
明治大学法学部卒業後、証券システムのITエンジニア、国内生保の法人コンサルティング営業を経て2007年よりファイナンシャル・プランナーとして独立。コンサルティングのほか、主な活動は企業型確定拠出年金導入企業へのセミナー講師、マネーサイトへの執筆など。年金・資産運用・保険などに精通、iDeCoやNISAなどの制度を活用した人生100年時代の資産形成をアドバイスしている。